その2 エロ先輩の依頼内容

「それで何の御用ですか?」

「いや大した用事じゃ無いんだ。ただ真理枝と同棲していると聞いたからどんな感じかなと感想を聞きたくてさ」

 おいちょっと待った!

 聞き捨てならない台詞を聞いたぞ。


「同棲なんてしていませんよ。確かに部屋は貸していますけれど」

「あれと同じ部屋に住んでいて同棲じゃ無いのか」

「同じ部屋じゃ無いです。家の部屋の一つを貸しているだけです」

 ここは誤解して貰っては困る。


「でも同じ家に住んでいるんだろ。ならエロ可愛い真理枝に手をつけない選択肢は無いだろ!」

 何だその発想は。

 確かに真理枝さんは出るところは出ているけれどさ。


「誤解です。単にうちに下宿しているだけでそれ以上じゃないです」

「でもちょっと夜這いするくらいは」

「やっていません」

 ここは断固としてそう言っておく。

 この人が危険人物である理由がわかってきたぞ。


「でも風呂をのぞくとか下着を拝借するとか夜中ちょっと部屋に侵入するとか」

「しないですから」

 良くわかった。

 確かにこの人は危険人物だ。

 発想が色々エロすぎる。


「それにしてもどうして抜田先輩が僕の家に下宿していると知ったんですか」

 真理枝さんがこんな危険人物に引っ越した事を教えるとは思えない。

 たとえ遠縁で同族であってもだ。


「寮から真理枝の気配が消えたからさ、ちょっと尾行してみたんだ。そうしたら寮でも街でもなく山間部の何もない方へ自転車で行くからさ。最後まで後をつけていった訳だ」

 それはいわゆるストーカー行為という奴だろうか。

 危険な香りが更に強まった。


「ただ四月の終わり頃からあの家の周囲に結界が張られてしまってさ。トンネル付近から先に行けなくなったんだ。山越えでも登りはじめ部分でアウト。まあ結界の色からして理学部の怖い怖いお姉様の仕業なのはわかっているけれど」

 理学部の怖いお姉様って誰だと考えてああと気づく。

 美智流先輩の事だろう。

 何せ正体が鬼神だ。


「結界が張られているなんで気づきませんでした」

「亜人系男性の一部に作用するだけのようだからね。普通の人間や亜人でも女子なら全く感じない程度の結果さ。僕だとどうしても入れないけれどね」

 どんな結界なのだろう。


「無理に入ろうとするとどうなるんですか」

「入れない。物理的というか心理的な結界でね。歩きだとそこでどうしても先に進めなくなるし、車だとどうしてもブレーキを踏んでしまう。そういう結界なんだ」


 そう言えば小坂井ウサウサ先輩の畑も威圧で鳥や動物が近寄らないようになっているって言っていたな。

 流石鬼神、色々な事が出来る模様だ。


「そこで本来の本題に入るんだ。そっちの権限で結界内に入る許可をくれないか」

 同棲とかは本来の話題じゃ無かったのか。

 でもそう言われてもな。


「僕は普通の人間なんで結界を操作するような能力はないですよ」

「あの結界を解析したらさ、『家主か家の管理者に許可を貰えば中に入れる』とわかったんだ。この場合の管理者とはあの家に住んでいる可愛い座敷童さんでさ。それで早速求愛の言葉と共に入る許可を求めたんだけれど思い切り断られてしまった。それ以降いくらメールを出しても何の返事も来ない状態でさ。そんな訳で残った方法は一つ、家主たる君に許可を貰う事だけって訳だ」


 うん、これは絶対許可してはいけない案件だ。

 でも一応聞いてみよう。


「でも何故うちに来ようと思ったんですか」

「調べてみたらGWには可愛い亜人女子がわんさかで食い放題だったらしいじゃないか。そんなパラダイス、あるなら行きたいと思うのが男の本能だろ」

 おいおいおい。

 完全にアウトだその理由は。


「そんな食い放題なんて状態じゃ無いですよ。ただ普通に田舎で遊んでいるだけで」

「でもこの大学どころか日本全体でも貴重な若い亜人女子がわんさかなのは間違いないだろ」

「まあそうですけれど」

 それは否定できない事実だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る