その5 夢の田舎開発計画
人数が多いので風呂も大変だ。
リビングで倒れている連中を除いても二時間以上かかった。
最後に片付け込みで僕が入った後。
部屋に戻ると亜理寿さんの部屋との襖を開けて広くした状態で、リビングで倒れている皆さんを除いた全員が座卓を囲んで会議をしていた。
「どうしたんですか」
「開発計画だって」
座卓の中心にこの付近の地形図が出ている。
市役所のWebにある詳細地図を印刷して貼り合わせたもののようだ。
「取り敢えず本日確認した植生と、今日確認した道の跡を書き込んだよ」
「凄いなこれ」
うちの裏山や元田んぼが全部地図に落とされている。
しかも山菜だのの生えている場所までしっかり書かれている状態だ。
「さて、取り敢えず山の状況を家主である文明君に説明しよう」
水梨さんがそう言って僕の前に広げた地図を移動させた。
「点線で書いたのは道と思われる痕跡。植生は基本的にブナとミズナラの混交林だ。家に近い部分の一部は竹藪」
「今日はあわなかったけれどクマもイノシシもいるよ。それ以下の動物はもうごっちゃりと」
何やら随分本格的に調べている模様だ。
「道の痕跡は峠越えが二本、稜線上が一本。摩耶さんに除草してもらって若干整備すればそれなりに使える筈だ」
「そう言えばトラクタとかユンボがあったよ。使えるかどうかはわからないけれど」
「わかった。明日見てみる。上手く行けば色々使えるだろう」
「お願いアンドレア。私じゃわからないから」
「まあ明日以降だな。場合によっては姉貴の手を借りる必要があるかもしれないし」
「それでどうせなら色々開発しようと思っているんだけれど、家主としてはどう?」
真理枝さんにそう聞かれる。
「開発って何をするんですか」
「道を整備したり、整備した道や山を使って遊べるようにしたり。こういう広い何してもいい場所があったら何かやりたくなるじゃない」
そういう物なのだろうか。
「僕は構いません。というか整備してくれるとむしろありがたいくらいですけれど」
それくらいが僕の本音だ。
「ならOKだね。開発計画は道以外の案だとね。この辺がウサウサの人参畑でしょ」
真理枝さんが地図に鉛筆で家と道路を挟んだ反対側を丸で囲む。
そして次に丸で囲んだのは家の裏側、谷間を少し入った場所だ。
「次はこの場所、美久コンがここに水場と休憩所を整備したいって」
「多分ここに社があったんだと思うんだ。稲荷神社系列の家内社。だからここに一応お社代わりの休憩所建てて。水も湧いているから飲めるように整備もしてさ」
「ついでに椎茸栽培もしたいな、あの辺なら環境がちょうどいいと思うよ」
鉛筆で休憩所とか椎茸とか書き込まれる。
「あとは山道の整備以降の話ね。他にも色々意見はあるけれど」
「道の整備だろうと立木伐採には本当は許可が必要だからな。市町村に三十日前までに申請が必要。まあ数本ならこっそり切ってもバレるとは思わんが、虫食いとか倒木を仕方無く始末しましたという形にしないと」
「露天風呂を作りたいけれど熱源とか考えると大変なんだよな。水はここ井戸水だからポンプの電気代だけで大丈夫だろうけれど」
「出来れば魚の養殖池も欲しいのだ。これは元田んぼの一部を掘れば何とかなると思うのだ」
「結構大がかりな作業になりますよ」
「重機が使えれば何とかなると思うのだ」
何か話が広がり始めている。
楽しそうだけれど大丈夫だろうか?
「お金のこともあるから出来るところからだな。出来そうなのはウサウサの畑と休憩所、椎茸まで。取り敢えず明日はアンドレアが機械の確認、摩耶と獣人何人かで道路整備で、他はホームセンターでも行って色々見てこよう」
「車は美智流さんのに三人乗れるとして、他は自転車かな」
「自転車で行くのはちょっと勘弁して」
最寄りのホームセンターは十キロ以上離れている。
「まあ明日は店で見るだけで、次はGW位だろうけれどさ。でもやっと遊べる田舎が手に入りそうなんだ。せっかくだから楽しまないと」
「今まで出来たのはハイキングコースを歩くくらいだしね。それも楽しいけれど」
なるほど、遊べる田舎か。
僕自身には今までそんな風な考えはなかったな。
でもなかなか楽しそうだ。
「さて、そろそろ寝ましょうか。布団は確か押し入れに山ほどありましたよね」
「魔法で温度上げて乾燥させておいた。だから寝心地はいい筈だ」
ここは元々父の実家。
そういった物は山ほどある。
そんな訳で敷き布団を出しまくって二間続きの部屋に敷き詰めた。
人数が多いから八畳二間使っても敷き詰めるような感じになる。
「久々の修学旅行って感じだよね」
「うちの修学旅行は海外でシングル部屋だった」
「うわリッチマンめこいつ」
右も左も女子という環境。
これは気分的になかなか眠れない。
僕は女性がこんなに同じ部屋にいる環境なんて初めてだ。
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