その3 農地は購入不可らしい
「まず、買うにも不動産としての売物がほとんど無い。田舎の土地は安いし手間がかかるし土地境界がはっきりしない場合も多い。そんな訳で不動産業者もやりたがらない訳だ」
「それに農家の場合は農地も一緒についてくる事が多いけれど、農地は農地委員会の許可が無いと売買出来ない。そして農地を購入可能なのは農家及び農家を始める人間のみ。そして農家として認められるには農地の全てを効率的に利用すること等の条件があるんだ。学生で学校メインじゃ無理だな」
「借りる場合は」
「ほぼ同じだ」
なるほど。
「つまり僕の父は相続でここを所有しているけれど、新たに購入する場合は農家になるつもりでなければ無理だと」
「そういう事だ。他にも水はあるかとか下水はどうするとか色々あるぞ。電線くらいはどの家も引いてあるし学園都市のおかげで携帯の電波も届くけれどな」
そうか。
僕はその辺何も苦労していないのだが、そこまで面倒なのか。
「仕方無いから前の元畑を借りて耕して人参でも植えようかな」
「手入れは」
「雑草農法ででも」
つまりは放っておくという事か。
「でもまあいいんじゃないか。空き地にしておくだけだしさ」
美鈴さんが何か言っている様子。
「家の前の一区画は元田んぼだったのを畑にした場所だそうです。ただこの十年で雑草や灌木が生えてしまったので、色々手入れをしないと使えないだろう。ただ土地そのものはそう悪くないはずだと言っています」
「なら摩耶さんに頑張って貰えば」
「焼き払うのは簡単だけれど土を耕すのが大変だな。あのトラクタが使えれば大丈夫だとは思うが」
「いいなあ、畑にしたらメインは人参で他にも色々植えるんだ」
「何故人参がメイン?」
「好物なのよ。あれ新鮮なのは全然味が違うんだから」
流石兎系獣人と思わず思ってしまう。
「どうせ使っていないからそれくらいはいいだろ」
「美鈴さんもいいと言っています」
「よし、なら焼き払って貰ってからやってみよう。最悪鍬で出来る分だけでも」
真紀さんそう言ってスマホを取り出す。
「まず今の季節で何が始められるか調べてみるね」
なお女子大生の皆さんは焚き火の周りが二人。
DK続きの八畳間で宴会しながら倒れている感じが五人。
廊下の僕が今いるところが亜理寿さん真理枝さん摩耶さん小坂井さんに美鈴さん。
割とバラバラで自由な感じだ。
そう思ったら家の裏、山の方から足音がしてきた。
女子四人が家の裏の方からやってくる。
「結構色々面白そうだぞ。昔の道らしい痕跡もあったしさ。ナイロン紐で印をつけてきたから明日また摩耶さんに整備して貰おう。焼き払って」
「魔女使いが荒い獣人どもだ」
そう言いつつ摩耶さんは笑う。
「取り敢えず帰ってきた家主に挨拶しておけ」
「あ、そうだな」
大柄なワイルド系女子が口を開く。
「ここの四人は全員獣人だ。
私が
こっちのアンドレアが
隣の
一番向こうの
「真理ポンがお世話になっています。どうぞよろしく」
真理枝さんは真理ポンと呼ばれているらしい。
「取り敢えず風呂沸かしてくるぞ。山に入ったから土まみれだし汗だくだ」
「沢沿いにいい水場と作業小屋らしい跡があったよ。立て直して休日の部室に使いたいなあ」
「取り敢えず道を復活させないとさ。せめて登山道程度には」
「私は畑を作る予定なんだ。人参畑」
「ウサウサは育つ前に食べ尽くしそう」
一気に賑やかになる。
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