その2 整備ついでに収穫も

「竹藪も笹藪も少しだけ整備したからな。来年はもっとタケノコを採れるぞ」

 東北でメジャーなネマガリタケではなく孟宗竹のタケノコ。

 この辺は孟宗竹の北限に近いらしい。


「学園都市の周りは自然がいっぱいあるんですけれどね。どこも持ち主がるからいじっていい山はほとんど無いんだよね。だから楽しかったな」

「あとは山に作業用の道を作らないとな」

「美南ちゃん達がまだ山に入っているよ。色々調べてみるって」

 そう言えば以前真理枝さんにどの辺までうちの山か地図で聞かれた事があったな。

 美鈴さんが土地権利書のある場所を知っていて、それでわかったのだけれど。


「あと取れる分の山菜もしっかりキープしたから」

「あれは多分天ぷらで全部消えたと思うぞ」

「そうだっけ?」

「文明さんの分は一応取ってあります」

 亜理寿さんがお盆に載せてご飯とか色々を持ってきてくれた。

 色々な山菜が天ぷらになっている。

 タケノコ入りの味噌汁もついていた。


 そんな訳で僕も廊下の掃き出し窓に腰掛けてご飯をいただく。

 うん、美味しい。

 わかるのはタケノコとタラの芽くらいだけれどどれもいい感じだ。

「これはワラビかな」


「コゴミというそうです。ワラビやゼンマイは食べられるようにするのに時間がかかるので今日は出していないそうです」

 美鈴さんの解説を亜理寿さんが翻訳してくれる状態。

「他はこちらから順にアイコ、ウルイ、コサブラ、シドケ、タラの芽、フキノトウ、ポンナ、ワサビの葉だそうです。ただ此処で呼んでいる名前なので標準和名はわからないと言っています」

 良く知っているな。

 流石座敷童。


「似たようなもので毒草もあるので、料理する前には必ず美鈴さんに確認させて欲しいそうです。前にキノコで一家全員が当たった事もあるそうですから」

 なるほど、気を付けよう。


「それにしてもこういういかにもって田舎、いいよね。うーん獣人の魂が叫んでいるわ。ビバ自然って」

「ふっふっふっ、私と文明君と美鈴ちゃんに感謝するのだ」


「どうせなら前の荒れ地も田んぼや畑に復活させない?」

「それは機械類も無いし難しいだろ」

「確か農業機械は少し残っていますよ」

 僕の台詞で美鈴さんが立ち上がって部屋の奥へ消える。

 すぐに戻って来て僕に小さい鍵を渡した。


「確か倉庫にいくつかある筈です。田んぼはかなり前にやめたようなので畑作業用だけだと思いますけれど」

 僕達は立ち上がり左側、倉庫に向かう。

 倉庫は扉が二箇所有り、機械類が入っているのは左の鍵のかかる方。

 鍵を開けて扉を開く。

 ホコリの匂いがした。

 右側にある照明のスイッチを捻る。


 小型のトラクタ。

 円形のノコが回転する刈り払い機。

 チェンソー。

 トラクタにつけるらしい何かのアタッチメント。

 手押し式の一輪車が二台。

 小型のユンボまで置いてある。

 ただどれもカバーにはホコリが積もっている。


「使えるかどうかはわかりませんけれどね」

 何せ年代物だ。

 最低でも十年は経っている筈だし。


「これが動けば畑くらいは何とかなるかな」

 小坂井さんの言葉に摩耶さんは頷く。

「かもな。ただ相当年数が経っているから期待はしない方がいいかな」

「アンドレアなら多少壊れていても直せるかも」

「その辺は後で本人と交渉だな」

「そうだね」

 小坂井さんは頷く。


 僕達は倉庫を閉め、再び廊下の処へと戻って来た。

 小坂井さんは改めて周りを見回して口を開く。

「でもこの住環境いいよね。その辺の家もどうせ使っていないだろうし、売ってくれないかなあ」


 何か美鈴さんが口を開いた様子。

「良ければ是非お願いしたいって」

「でも農家の売買は面倒だぞ。農業委員会の許可とか必要だったりするしな」

 摩耶さんはそんな事を言う。

 そうなのか。


「前に良さそうな家があれば買おうと思って調べたからな」

 彼女はそう言ってため息をついた。

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