第一部 出会い、そして西へ《三》
「ハムちゃん、あ〜ん」
三人の男達の横で、小さな女の子が、これまた小さな小さな生き物に、
女の子の名は
「面妖な……」
「アレは、
「何だって!」
丁香が声を荒げたのも無理はない。普通、龍には出会わないものだ。その姿に、龍の
聞くところによると、やっと雨を降らせることができた、龍としては一人前と喜び勇んだのはいいが、勢い余って天上の宝の玉を割ってしまったらしい。何とかしようと自らの力を総動員した結果、力を使い果たし雨を降らせることができなくなったあげく、親に事の次第がばれ
「なんと間抜けな」
「いや、それだけじゃない。力を使いすぎ、下界では龍の姿を保つこともできず、この地で初めて見たものに変化できるはずだっただが、その姿があまりにも小さすぎて
「笑えるってお前、あの小さな身体に入りきらなかったのなら、もっと小さなあの鞄には入らないだろう」
それがあの鞄の中は、無限に広い空間が広がっているのです、と玄奘は言う。しかも、自分達の荷物もすべてあの中に入っていると言う。そして初めて見たハムスターが鳴かなかった為、鳴きかたがわからず適当に鳴いていると。
本当にアレが龍なのか、と丁香は少々呆れた。
「ハムちゃん、人参も甘くて美味しいよ」
「ぴゅ」
美味しい食べ物を沢山もらって、龍、いやハムスターはご
その近く、テーブルの横で伏せの状態で大人しくしているのは
「大神は言い伝えられる通り賢いが、それに匹敵するほどプライドも高い。人間の言うことなどは聞きはしない」
「そんな大神が、なぜ一緒なんだい」
普段現れない大神が現れるだけでも信じられないことなのに、その大神が一緒に旅をしているとはどういうことか。
「
「その
「
そんなものがこの世界に、と丁香は言った。話を聞いただけでは、とても信じられるものではない。
「皆、信じられるのかい。お前の命を、世界を預けても、大丈夫なのかい」
「恐らく」
玄奘は呟いた。それは、自信があるようにも、ないようにも、丁香には思われた。その時、ふと
「玄奘、二週間程前に襲われた道廟は、あたしの弟子だった
丁香のその言葉に、玄奘は
「あたしにとっちゃ弟子達もお前も、皆子供みたいなもんさ。どの子にも傷ついてほしくない。あの子はね、
「十歳……だと」
「訳は色々とあるんだろうが、お前も三蔵であることを隠さないとなると、あいつらの狙いは一気にお前の方に行くかもしれないよ。あちらにはナタ太子がいるが、お前には神の護りがない。それでも、偽らず行くの……」
「お前」
丁香の話の途中で、いきなり
「何故、玄奘や自分の弟子の身は案じるのに、お前は幾多の命を奪うまねをする」
と言った。
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ここからは、聞きなれない言葉の説明です。
神々しい→おごそかで気高い感じがすること、神秘的で尊い
魂魄→魂は精神を支える気、魄は肉体を支える気
禍々しい→悪いことが起こりそうな予感をさせること、不吉である
紫黒→紫がかった黒
黒檀→赤みがかった黒
襦裙→上は襦、下はスカート(裙)という装束
耳トウのトウの漢字が、スマホでは出なかった。
次回投稿は7日か8日の予定です。
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