第20話
いよいよレベルが上がり、エンドラのもとへと挑もうと僕らは準備をしていた。イリアは相変わらず捨てろといった袋の中身を捨てそうにない。サンタクロースかお前は。メリッサはまた寝ていた。いつも寝ている。妹はもう鼻毛としか呼ばなくなっていた、お前は鼻毛だ。準備を整えメリッサを起こし、その大きな塔へと足をのばしていた。
「ここですねエンドラの本拠地は!」
イリアが大きな袋を抱え、ごめんくださいと挨拶をした。挨拶が返ってくるわけがない。僕は呆れて玄関を壊した。カギはあっけなく壊れて扉は粉々になった。長年人が出入りしていなかったように埃が舞い散り、僕らはせき込んだ。
「さあ行くわよエンドラ!」
鼻毛さえ出ていなければ美人の妹サーシャが先陣をきる。レベルは上げた、多分大丈夫だろうと僕は唐突にお寿司のことなど考えるなどした。その余裕を知ってか知らずか、イリアが罠にかかったのであった。
その落とし穴の奥には槍がたくさん突き刺さっている、イリアは持っていたダガーで窪みに突っかかり難を逃れた。
「先に行ってください」
「でも……」
鼻毛が心配そうに奥を覗くと、イリアが疲れた笑顔を見せた。
「……いくか」
僕が無慈悲に立ち去ろうとするとお兄ちゃんと言って妹が牽制する。塔はまだまだ長い、あいつは足手まといだ。再び罠が襲い掛かる、今度は蜘蛛の巣だ。メリッサが蜘蛛の巣を払いのけ、僕らは先に先にと進み始める、エンドラめまっていろ、僕らが相手だ。
そしてようやくエンドラの待つ最上階へと到達していた。
しかしエンドラも仲間も誰一人いなかった。祠の鍵がご自由にどうぞと書かれ、その辺のチェストに置いてあった。
「わなよ!」
鼻毛が叫ぶ。しかしメリッサはそれを容易くつかんでしまっていた。しかし、警報も鳴らず、誰もいない。がらんとした最上階には本当に誰もいないようであった。
「エンドラ……どこへ行った?」
僕が不信に思って探索すると、エンドラの日記とやらを探し当てた。
そこには並々ならぬ狂人の文章が書いてあった。
八月二五日……今日も誰も来ない、寂しいから死にたい。唐突に罠などを仕掛けてみることを思いつく……そうするとよりいっそう誰も来ない。私は矛盾にはらんだ人生を送るのはもう嫌だ。
八月二六日……罠にひっかかった冒険者が引き返した。さっさと殺してほしい。
日記はここで途切れていた。
「死んだのかしら?」
「そうかもしれないな、鍵はもらっていこう」
「あの……イリアさんがこのままでは……」
メリッサがそう言ってやっとあいつのことを思い出した僕らであった。
「えっエンドラいなかったんですか?」
「雲散霧消してた」
綱を渡ってどうにか上がってきたイリアは鍵を見つめ、なんでだろうと言って不思議そうな顔をしていた。
「あの床に敷き詰めてある槍って玩具みたいですよ触ったらふにゃふにゃしてました、血もケチャップみたいです、トマト臭いにおいがしました」
「早く寝たい……」
メリッサがそういうとそうねと鼻毛が同意して僕らは宿屋へ引き返した、エンドラ
が任務を放棄していなくなった理由はわからずじまいだった。
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