第14話
デアゴオミーラの城から退散する僕らは城の中で倒れている女性を発見していた。
「誰か倒れてます!」
イリアが叫んで僕が颯爽と彼女を抱き起こす。
「誰か……水を……」
しどろもどろとしたつややかな声で息も絶え絶えに言うとそのまま失神してしまった。僕は強引に水を飲ませる、そうすると意識がようやくはっきりしてきたらしく、きゃっと言って僕の膝から離れた。
「なんでこんな所で倒れてらしたんですか?」
イリアが顔を近づけて話しかけると彼女は少し赤面したようで床を指でいじりはじめた。
「デアゴオミーラを……探してたら……いなくて……それで迷ってるうちに……眠くなって……」
「一人で!?」
イリアが食いつくと彼女はうつむいた。
「私……仲間が……見つからなくて……それで一人で……」
この様子では仲間が見つからなかったのもしょうがなかったのかもしれない。
「あなた名前は?」
サーシャが話しかけるとゆっくりと答えた。
「メリッサ……」
「肩を貸すわ、このままじゃ凍死しちゃう」
「……ありがとう……」
「お礼も言えるじゃない、いい子だわこの子」
鎧をめいっぱい着込んだ戦士の彼女は随分重かったらしい、重いというとごめんなさいと謝った。
金髪の巻き毛に青い目の彼女は職業はクルセイダーだった、
上級職なのに多分このコミュ障のせいで仲間が見つからなかったのであろう。
僕はファイター、妹はメイジ、イリアがアーチャーという中で回復はイリアしかいなかったので、仲間になってくれるならかなり便利になる。
「メリッサ、仲間が見つからないのなら僕たちと行動を共にしないか」
寝起きの彼女はぼうっとしてしばらく考え込んでいたが、はっと我に返り、
本当に?と聞いてきて手ごたえを感じた。
「誰でも歓迎するよ、回復してくれるのがそのイリアしかいなくてね、
こまってたところだったんだ」
僕が嬉しくなって話しかけると、彼女の表情は暗くなった。
「どうしたの」
妹が話しかける。
「私……魔法が使えない……」
な、なんだって!普通クルセイダーは神の加護を受けて回復が使える。
「ポンコツだから……」
「んー、ポンコツでもなんでもいいけど剣の腕はたしかなんでしょ?それなら一緒においでよ、一緒に魔王を倒しましょ」
妹は相変わらず前向きだ。
「あの……」
メリッサは妹の顔をじっと見て何か言おうとした。妹の無垢な瞳を見つめているうちにその言葉を内面に封じ込んだらしい。
「どうしたの?」
妹は不思議そうに彼女の顔を眺める。
「なんでも……ないの……気にしないで……」
メリッサはうつむいてそれから黙りこくってしまった。彼女が再び口を開くのに三日は待たなければならなかった。
僕らのパーティーはようやく4人になった、準備万端だ。
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