第2話…3つの願いは段々と効いてくる
二つ目の願いは私の主観とイケメン魔人の主観のズレを問う願い事にして困らせてしまおっと……。
「それじゃ、二つ目の願い事は【自分の偽善ぶりがなおりますように】にするわ」
「かしこまりました。ご主人様」
イケメン魔人がちょっと悲しそうな顔をしていたように感じたのは気のせい?
また不思議な言語で呪文を唱えている。顔がイケメンだからか信頼できそうな気がしてくるから不思議だ。
「二つ目の願いは叶えられました。最後、三つ目の願いは何にいたしましょう?」
ん?本当に叶えられたのかしら?さっきの揚げ足を取られたこともあるし、ここで自分の偽善ぶりを発揮しようとして変なことを話して3つ目の願い事だと捉えられたらもったいないので、何も問わないことにした。
もし、私の偽善ぶりがなおっているならこの願い事はお願いできないはず……。
「それじゃ、三つ目の願い事ね。『あなたの願いが叶うようにして欲しいの』あなたのために願い事を使わせてちょうだい。うふっ。何でも叶えていいのよ」
願いを聞いた時、ビックリしたような表情を一瞬見せたかと思ったイケメン魔人は、
「かしこまりました。ご主人様」
といって、呪文を唱えだした。
おや?この願いがブリっ子っぽくお願いできたということは、二つ目の願いが叶えられていなかったということなのだろうか?それとも私らしいお願いだと判断してくれたのかもしれない。そう考えるとこのイケメン魔人は私に気があるのかも?どうしようかしら♪……うふふ。
自意識過剰に考えれば考えるほど妄想を膨らませ、期待してはいつも裏切られる。今回も目の前のイケメン魔人さんの反応を期待していたのだけど、
「三つ目、最後の願いも無事叶えられそうです。それでは……」
と言ったかと思ったら、姿が消えてしまったのであった。
ん?「叶えられそうです」って今言ったかしら?「かなえられました」じゃないの?
それに、ねぎらいやお別れの挨拶もなし?
私は偽善者なのだから相手からの反応・感謝が重要なのに……。
よく考えてみれば、彼はホッとしていたのかもしれない。
もし、彼が最後の願いを「こんな自意識過剰の偽善者女性のもとから早く立ち去りたい」と願っていたなら、願いはすぐに叶ったわけだから……。
イケメン魔人がいなくなり、いつもの自分の部屋をあらためて見回してみる。
やはり、はじめから何も変わったところなどないように思う。変わったところがあったとしても願いが叶った途端に、変わったことに私は気づかなくなるのであろうか?
お湯を沸かしている間、化粧をとりながら洗面台に映る自分の顔をまじまじと見る。
すっぴんだとさえない顔なのだが、愛嬌のある顔とも思える。みんなにはどう映っているのだろう?
「いや、みんなにどう映るかではなく、自分がどうありたいか?どう映るようになりたいか?なんじゃない?」もう一人の自分が話しかけてくる。いつもの自分を批判してから自己憐憫をする私の思考パターンではなく、私の偽善ぶりをなおそうとしてくれるかのようなもう一人の自分が現れたのであろうか。
数日、数週間と新しいもう一人の自分と頭の中で対話を交わしていた。
おかげで、誰に偽善と思われようが、また、たとえ自分で偽善と思ったとしても、それらを含めて自分がしたいこと、していることを肯定でき、段々と自分に自信が持てるようになってきた。
もしかしたら、自分はありのまま、世界はそのままですでに願い事など必要のないくらいパーフェクトなのかもしれない。
そう考えられて、生きるのが楽になってきたのはイケメン魔人との出会いがあったからだ。
あのイケメン魔人は私の三つ目の願いで何を願ったのであろうか。
きっと、
「目の前にいるこの見知らぬ女性が、段々と自分を信じ、この世界を信じられるようになれますように」
と、何の見返りも期待もせずに自然に願ったことだろう。なぜなら、そんな無償な愛こそが偽善ではなく本当の善であると、イケメン魔人に二つ目の願いをしてからというもの段々実感できるようになったからであった。
おしまい
短編小説【偽善者の三つの願い】 ボルさん @borusun
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