第2話 「オーヴァーキャスト・トレイン」
1 赤紙来る
ナガレとソーキとガンジが視線を見交わし、頷きあった。
「……せーの」
部室のテーブルの上へ、三人共一斉にそれを置いた。アタロウとコージローが唾を飲む音が聞こえた。
実践訓練教育通知書。通称の「
「……ついに来たか」
ガンジがいつもより数倍は苦み走った表情で口にする。
「しょうがねーよ。
ソーキが諦念に満ちた口調で言う。
サムライ
「今更クソみてえな鬼軍曹に人格全否定されたくねえよ」
「そこらへんユルユルだったな、ウチのスクール」
懐かしむような口調になる。卒業にはまだ随分間があるというのに。
肉体的には
「訓練中の事故で死亡することも十分考えられるんだよね?」
「あー…俺も聞いたっスよ。何期か前の
「やだ何それ怖い」
「そりゃ稀な例だろ……そうだよな?」
ケンヒトがやってきた。彼はテーブルの上の文書に気づいた。
「赤紙かぁ」
「ケンヒト=サンも行ったンスよね?」
「ン……まあな。
サムライの家系にサムライが生まれるとは限らないが、統計的に見ればやはりサムライが発生し易い血統というものは存在するらしい。
「どうだったんです?」
「どうって……まあ、お前らが想像してるようなのだったよ」
「それだけじゃわかンねえっス」
ケンヒトは意地の悪い笑みを浮かべた。
「こうやって
「ヒドイ!」
「情報くらいくれたっていいじゃないっスか~」
「お前らも俺たちの苦しみを理解してくれ」
コージローがふと思い出したように言った。
「そう言えばケンヒト=サン、前から思ってたんですけど、何でいつも手袋着けてるんですか?」
後で訊くと、コージローの問いに別に理由はなかったらしい。ただ、勘が働いただけで。
「これな」
ケンヒトは右の手袋を外した。小指と薬指が根本から欠けていた。
「実践訓練でイクサ・フレームの内蔵火器が暴発、持ってかれた。ああ、気にしてないからお前らも気にするなよ。親父には悪いが、カタナを振るのを諦めさせて、俺はメカニックに集中することが出来た。そういう意味では運が良かったと思ってる」
……ヤマトでは再生医療は倫理的観点から長らく禁忌として扱われていた。解禁されたのは銀河戦国時代の末期になってからであり、今では手足の復活も可能だという。しかしそのコストは莫大かつ保険適用外、従って再生医療を受けられるのは富豪や大名・旗本クラスなどの富裕層に限られていた。一般層にまで広まるのはまだしばらくの時間を要するであろう。……
××××××
一ヶ月後、サスガ・ナガレ、ガンジ・ワタリ、ツブヤ・ソーキの三名は実践訓練教育のためアッキ・シティへ向かう。
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