病魔

病院へ駆けつけると母はベッドに座っていた、検査入院をするという、普通に喋れているのでそこまで危機感は感じてなかった。

「今日ご飯誰が作るの?誰もご飯つくれないじゃん」と母が笑いながら言った、その顔を見て私は少しほっとしたのをいまでも覚えている、その日はその後すこしして帰宅し、スーパーのお惣菜を食べて就寝した、数日検査入院をし、薬の処方で症状を抑えることしか出来ないと言われ、母は免疫を抑える薬を飲み続けないといけなくなった、退院はすぐに出来たが、通院をしないといけない。

母に寄り添いながら日々を過ごす毎日、この頃から母が亡くなってしまったらと考えてしまっていた。「私はだれにも迷惑かけずに死にたい」とずっと言っていたが、死ぬときくらい迷惑をかけてほしいと心のなかで思っていた。

月日は流れてもう私も高校卒業、地元に残りたかったが、夢の為に県外に出る事に決めた、母に寂しくなるなと言ったら「かわいい子には旅をさせろって言うだろ」と言ってくれた、私はずっと母が大好きだった、姉がいるが母には全く似ずに私が母親似だったから、甘やかされて育ったのだ。

私は県外に出ると決めたがやはり母の病の心配をしていた、父と姉がいるが、もしなにかあったらすぐには帰れない。夢の為に専門学校に進学を決めた。

初めての一人暮らし、一人暮らしと言っても寮だが私はホームシックになった、いままで家族と過ごしていた時間が長く孤独感に苛まれていたが、専門学校の友達が出来るとすぐにホームシックもなくなった。

いつしか都会に染まっていき、夜遅くまで遊んでいた時もあった。専門学校時代はとても充実していたが、卒業となるとまた違う感覚になる、社会に揉まれる時がくるのだ、一気に不安な気持ちになったが就職も無事決まり、母も喜んでいた。

私は有名なホテルに就職したが、4年程で辞めてしまった、そこから就職するも長く続かず、いろんな職場を転々としていた。

母も職場を転々としている事に心配して、頑張れと言ってくれていたが、なかなかいい職場に巡り会わず、悩んでいた頃。

母の体に異変がおきはじめていたのだった、父に不正出血がするとちょっと前から言っていて、しだいに下腹部に痛みが出てきたのだ。

私は病院に行ってと何度も言っていたのだが、なかなか行こうとしなかった。

痺れを切らした父が母を病院に連れて行くと、検査入院になってしまった、結果大腸がんが見つかった。

それを聞いた私はすぐに「死」と考えなかった。

全く実感が湧かない、母の癌はリンパから転移してたという事を後から聞いた。

実家に帰ると母はベッドに座っていたが髪が抜け落ちていた、抗がん剤の影響だ。

久しぶりに会うと嬉しそうに私を見て「ちょっと太ったな、すごい腹」と笑いながら言ってくれた。

いつもの母だがすこし痩せていたのを見て、不安が押し寄せてきた。

病室で一緒にご飯を食べて私達は家に帰宅した、母は病室で暇だからと言ってケータイのアプリを必死にプレイしていた、私も一緒になってアプリをして競っていた。

数日病室に通い、私も休暇を終えて帰ったが一人バスに乗りながら、母が死んでしまったらと良くない事を考えてしまっていた。

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