2-8 魔術の習得
「じゃ、ショウスケちゃんのご希望は、生活魔術ってことでいいのね?」
「はい、お願いします」
基礎魔道講座を終えた俺は、再び受付に戻って、ハリエットさんの前に座っていた。
さっきのヘクターって人はもういなかったけど、ハリエットさん、なんかお疲れ気味だな。
ここで習得できる、魔術の料金一覧見てるんだけど、高ぇな、おい。
一番安いのでも200Gだぜ?
待望の《浄化》は一番グレードの低い《下級浄化》で5,000Gだってよ!! 手が出ねぇよ!!
「おすすめは『冒険者基本パック』ね。《灯火》《点火》《加熱》《冷却》《乾燥》《製水》《止血》《収納》の8点セットで、なんとお値段1,000Gなのよ」
おお、個別に全部習得すると、3,000G近くになるのに、すげーな!!
「あー、でも《下級浄化》は……?」
「《下級浄化》は……さすがに、ねぇ……? でも、単品で1,000Gの《収納》がタダ同然で習得できるのは、お得よ?」
「ふむう……確かに。でもここで習得できる《収納》って、どれくらいの収納力があるんです?」
「それは、ショウスケちゃんの甲斐性次第ねぇ」
「甲斐性?」
「そうよぉ。どれくらいの収納庫を借りるか次第だもの」
え? どゆこと?
「あら、よくわかってないみたいね。《収納》っていうのはね、契約した収納庫からものを出し入れする魔術なのよ。だから、安いものだとトランクひとつぶんくらいだし、高ければ物置まるごとっていうのもあるわね。ほかにも、温度管理や時間経過管理なんてオプションもあるわよ」
なんだってーーー!?
《収納》って、亜空間みたいなところに、物を置いておく魔術じゃなかったのか!!
……まぁ、でもこれはこれで便利か。
「はいこれ。ギルド提携の収納屋さん」
そういってハリエットさんは、一枚の紙をくれた。
簡単な地図が載っている、広告みたいなものだった。
多分ここから、キックバックとかがあるんだろうな。
だから《収納》が、タダ同然で習得できるんだろう。
「えーっと、それで相談なんですけど……」
「なぁに?」
「分割後払いでも、いいでしょうか?」
「もっちろん! ショウスケちゃんは信用あるからねぇ」
コツコツと薬草採取で、信用を積み上げておいてよかったぜ!
「じゃあ! ついでに《下級浄化》も分割で……」
「それはダメ! Fランク魔術師のローン上限は、1,000Gまでなのよぉ」
ぐぬぬ……、結局のところ俺個人への信用じゃなく、ギルドランクへの信用じゃんか。
「じゃあ、とりあえず『冒険者基本パック』お願いします」
カードを渡してローンの手続きを済ませると、俺はそのままハリエットさんに連れられて、今度は20畳くらいの部屋に行った。
部屋の中は薄暗く、壁に何本か蝋燭が立っている。
ハリエットさんがなにかつぶやくと、蝋燭に火が付き、少しだけ明るくなった。
部屋の床を見ると、魔法陣っぽいのが大きく描かれているのがわかった。
「じゃ、えーっと、これと、これと、これと……」
ハリエットさんはなにか分厚い本のようなものを手に取り、1枚ずつページを破り取っていった。
「……はい、これで全部ね。じゃあこれを持って、魔法陣の中央に立って」
8枚の紙を渡された俺は、ハリエットさんの指示に従い、魔法陣の中央に立つ。
「じゃ、リラックスしてね」
ハリエットさんは俺に向かって手をかざし、なにかを念じ始めた。
「うおっ!?」
しばらくすると、手に持っていた紙が1枚、灰のようにボロボロと崩れ、消え去ってしまった。
その後も1枚、また1枚と紙は消えていき、8枚全て消えた。
《スキル習得》
〈生活魔術〉
《魔術習得》
《灯火》《点火》《加熱》《冷却》《乾燥》《製水》《止血》《収納》
「はい、おしまい。お疲れ様でした」
えらいアッサリしたもんだな……。
「ありがとうございます」
「じゃあ今度は訓練場に行きましょうか。ちゃんと使いこなせるか確認しないとね」
魔術が使えるかどうかの確認までしてもらえるとは、なかなかサービスが行き届いているな、魔術士ギルド。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます