1-13 転送に至る経緯 後編
「世界を救えって、なに? 本気で言ってんの?」
「無論じゃ」
「いやいや、エリートニートのこの俺に、なにができんだよ」
エリートのニートっつーか、ニートのエリートっつーか、ようは、そんじょそこらのニートより劣っている自身が、俺にはあるのだぜ?
「世界と言ってもな、お主が住んでおる世界ではない。別の世界じゃ」
――え……、別の世界?
「もしかして異世界転移ってやつ?」
「ふむ、最近はその手の話がはやっとるのか、説明の手間が省けて助かるわい」
「うおおおぉぉぉ! マジかー!!」
お稲荷さんなんかが出てきたもんだから、てっきり世にも奇妙なアレ的なんじゃねぇかって思ってたけど、俺の好きなラノベ展開キター!!
おう、さっきまで生きる気力が欠片もなかったのに、なんか俄然やる気が出てきたぜ!!
「喜んどるところ悪いが、これは罰じゃからな」
「罰?」
「そうじゃ。ただ異世界に行って、異世界生活を満喫するだけではダメじゃ。さっきも言うたが、世界を救うのじゃ。」
「世界を救う?」
「それがお主に科せられた、罰なのじゃ」
「罰ねぇ……」
「とにくじゃ、お主が世界を救うまで、それは終わらんよ」
「なんかよくわからんけどさ、やっぱチート能力とかもらえんの?」
異世界ものと言えばさ、やっぱチート能力で俺Tueee!!だよな。
もしや、ハーレムなんかもありですかー?
いやー、参ったなぁ。
「チート? 最近よう耳にするが、そらなんじゃ?」
「チートってのは、まあズルとか反則とかいう意味でだな。例えばゲームとかだと最初から高レベルとか、所持金MAXとか、アイテム全部持ちとかそんな感じで、楽に攻略進められる裏ワザ的なアレだよ」
「お主のう……。何度もいうが、これは罰じゃぞ? 楽にことを運べれば罰にならんじゃろうが」
「え? じゃあなんの特典も無しで世界救えっての? そりゃ無茶だろうがよ!!」
言っちゃ悪いが、俺の能力は学力以外、軒並み平均以下なんだぞ?
学力だって、平均よりちょい上ってくらいだ。
そんな俺がチートもなしじゃあ、世界を救うどころか、生きていくことすらままならねぇよ。
実際いまだって、親に頼らなきゃ生活が成り立たねぇんだからさぁ。
この平和で豊かな日本に置いてさえ、生きあぐねているような、ニートofニートなのだぜ?
「文句言うな。まぁチートかどうかはしらんが、異世界生活基本パックというのは用意しておる」
「“異世界生活基本パック”ぅ? それがあれば、ちょっとは楽になるんだな?」
「全部あれば相当楽じゃろうな。異世界で生活するだけなら、すぐに不自由はなくなるじゃろ。ただし、お主に全部はやらん」
「えー、なんでだよー」
むしろ余分にクレよなー。
いまなら基本パックに加えて、オプションでチートもついてきます! 的な?
「祠を蹴ろうとしたバチ当たり行為で減点1。妹の呪いでさらに減点1。まあ言葉は通じるようにしといてやる。そうじゃな、両親の祈りに免じて、基本パックとは別にワシの加護もつけておいてやろう。それがあればなんとかなるじゃろ」
「そんなんで大丈夫かよ……」
「神の加護を侮るなよ? まあ両親への感謝と、妹への贖罪を忘れんことじゃ」
「ところで、その基本パックとか加護って具体的に――」
「おっと、もう時間じゃ。もう一度言うが、世界を救うまでそれは終わらんからな」
「いやいや、まだ聞きたいこといっぱいあるんだって!! そもそも世界を救うって、なにすりゃいいんだよ!!」
そこで意識が途切れた。
で、気がついたら森の中ってね。
異世界生活基本パックってのは、俺が持ってる〈言語理解〉さんと、たぶんだけどヘルプ機能的な〈鑑定〉、大量に物を持ってもかさばらない〈アイテムボックス〉だと思う。
どっちも習得に、1,000万ポイントもいるんだけどな……。
くそう、妹への贖罪どうこういわれたけど、恨みしか出てこないぜ。
んで、加護ってのが、死に戻りとステータス機能だな。
ステータス機能は、正直すげーありがたいわ。
死に戻りも、いつかは慣れると信じたい。
慣れれば役立つ能力だと思う。
まあお稲荷さんの目論見通りっつーかなんつーか、俺はなんとか生活はしていけそうだしな。
ただ、重大な問題がひとつ残っている。
結局のところ……。
――俺、なにすりゃいいわけ?
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