第286話、地より目覚めし悪龍INFINITY・OVERLOAD①/始まり

「おらおらおらぁぁぁぁ───ッッ!! 電子頭脳ブチ撒けろやぁぁぁっ!!」


 オルトリンデは、両腕に装備したガトリングガンでType-JACKの群れを蹴散らしていた。

 人間の姿はすでにない。老若男女が短距離走者のような走りで戦場を離脱し、オストローデ王国周辺の広場にはアンドロイドの軍勢しかいない。

 もう、遠慮などない。 

 敵の攻撃はヴァルトラウテが防御し、オルトリンデは敵機の破壊に専念していた。

 

「クソ雑魚が。数だけウジャウジャ用意しやがって……!!」

『オル姉、怖いっス』

「レギンちゃん。気にしてはダメですわよ」


 上空から、飛空艇の援護射撃が続く。こちらも人間に配慮する必要がなくなったので、レーザーだけでなくミサイルや機銃も使用するようになった。

 だが、それでも数の差は埋まらない。

 オストローデ王国の住人25万人がいなくなったとはいえ、アンドロイドが百万体以上いるのだ。目の前にいるアンドロイドを屠り続けても、まだ五百体程度しか殲滅できていない。

 しかも、敵はType-JACKだけではない。


「あん?……なんだ」

「この反応……まさか」


 ヴァルトラウテには、覚えがあった。

 かつて、ユグドラシル王国で遭遇した巨大兵器・カラミティジャケットの反応。

 すると、地面から巨大な鎧兵士が何体も浮上した。それだけではない、金属製のミミズみたいな兵器・ウロボロスも現れたのである。


『て、敵反応、まだまだ増えてるっス……さすがにこれは』

「やっかましい!! とにかく撃て、撃て、撃ちまくれやぁぁぁぁっ!!」

「くっ……遠慮しなくていいとはいえ、かなりきついですわね」


 センセイの『修理』も使ってしまった。

 遠隔の『修理』はもう使えない。あとは、決死の覚悟で戦うしかない。

 ヴァルトラウテは、防御を最低限にして、戦線に加わろうと─────。




「波動粒子砲、発射」




 背後に現れた『赤い龍』が青いブレスを吐き、Type-JACKを薙ぎ払った。

 オルトリンデたちが注目すると、赤い龍の背中に、一人の少女が乗っている。


「やっほー、お姉ちゃんたち」

「アルちゃん!」「アルヴィート!」『アルちゃんっス!』

「んふふー……私の力が必要かな? この紅蓮覇龍サンスヴァローグと一緒に、私も戦うよーっ!」

「ケッ……遅えんだよ。行くぞアルヴィート!」

「うん!」


 と、アルヴィートを加えて再び前線へ─────。




「砕け」




 上空から、大剣が落ちてきた。

 落下の衝撃で地面が揺れて亀裂が入り、Type-JACKの群れがバランスを崩す。そして、大剣が一瞬で変形して巨大な白熊になり、装備していた剣で薙ぎ払った。


「ふん……数だけの雑魚か」

「シグルド姉……」

「お前ら、まだやれるな……蹴散らすぞ」


 シグルドリーヴァは白熊の隣に立ち、『乙女聖剣レーヴァスレイブ・アクセプト』を肩に担ぐ。不思議と懐かしく─────頼もしい光景だ。

 オルトリンデは、ニヤリと嗤う。


「へへっ……なんだか昔を思い出すぜ」

「そうですわね。こうして皆さんが揃うのも懐かしいですわ」

『う、ウチもそっちに行きたいっス……』

「よーし、私のドラゴン、行っくよーっ!」

「さて、破壊の時間だ」


 五人の戦乙女が並び立ち、百万を超える軍勢と対峙する。

 まともなら、決して戦おうとは思わない数字だ。でも、それは引く理由にならない。

 それぞれがメインウェポンを展開、父とセンセイからの贈り物である『戦乙女の遺産ヴァルキュリア・レガシー』を展開させる。

 するとここで、ジークルーネから通信が入った。


『待って! なにこれ……アンノウン反応確認』

「あ? おい、なんだよ」

『…………なにこれ』


 そして─────五人の乙女たちは視認した。

 オストローデ王国、その象徴たる王城が振動していた。

 地震などではない。城そのものが揺れている。

 

「な、なんですの……?」

「揺れてる……ねぇ、お姉ちゃんって、あそこに?」


 ブリュンヒルデが向かった王城が揺れる。そして揺れが収まり、何かが浮上した。

 

「「「「「…………」」」」」


 戦乙女五人は、フリーズしていた。

 地から目覚めし悪龍。漆黒の体躯を持つ巨大なドラゴンだ。

 アルヴィートの紅蓮覇龍サンスヴァローグとは比べ物にならない大きさで、オストローデ王城に匹敵する大きさだ。全長数百メートル以上ある。


「な、なんだあれは……」

「し、知るかよ……」

「あんな兵器が……」

『ウッソ……』

「おっきぃ……」


 漆黒の龍が飛んだ。自重で崩壊とか、あの質量で飛べるはずがないとか、そんな理論をまるで無視して飛んだ。

 背中には翼でなく、砲塔とジェットエンジンが積んである。そして、間違いない事実が……あれはオストローデ王国の兵器だということだ。


「……行くぞ」

「は?」

「私たちのやることは変わらん。アンドロイドの殲滅……戦うだけだ」

「シグルドお姉さま……」

「そうだね。さっさと終わらせてみんなで遊ぼう!」

『いやでも、マジでヤバいっスよ……』


 戦乙女型五人と、オストローデ王国最終兵器『INFINITYインフィニティOVERLOADオーバーロード』の戦いが始まった。

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