第223話、残された者のこれから

 センセイが攫われた。

 しかも攫ったのは戦乙女型。しかもオルトリンデたちが捜索していたcode05、しかも破壊されたはずのcode01。

 状況が全く理解出来ない三日月たちは、とりあえず治療とこれからのことを話すことにした。

 ジークルーネは自分を修理し、オルトリンデの腕を修理しようとする。

 最初に気が付いたのは、オルトリンデだった。


「……? おい、お前は……どっちだ?」

『質問の意味が理解不能。code02のヴァルキリーハーツに異常アリと判断。早急なメンテナンスを推奨します』

「あ? おいコラてめー、アタシを舐めてんのか? その堅苦しい喋り方……ブリュンヒルデだな!!」

『…………状況は深刻。ジークルーネ、code02の修復を』

「お、お姉ちゃん? お姉ちゃんなの?」

『…………』

「……どうやら、ブリュンヒルデちゃんに戻ったようですわね」


 ワルキューレの意識は消え、ブリュンヒルデに戻っていた。

 スカイブルーの瞳も真紅に染まり、砕けたヴァルキリーハーツも修復されている。


「チッ……おいジークルーネ、修理を頼む」

「うん。あと、みんなの怪我も治療する。それと、オルトリンデ姉さんとヴァルトラウテお姉さまのデータを同期して情報共有しよう」

「よろしくお願いしますわ、ジークルーネちゃん」

「うん。その、レギン姉ぇと……シグルドお姉さんのことも」

「……さっさと直せ。いろいろ話がある」


 オルトリンデは、斬られた腕を拾いジークルーネに投げた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 三日月たちは、怪我の治療を終え、エンタープライズ号の中に集まった。

 まず、眼を覚ましたキキョウ。


「なんて無様な……私は、私は……ッ!!」


 キキョウは落ち込んでいた。

 ゴエモンに敗北したばかりか、その後の戦いではずっと気を失っていた。気が付いたら全てが終わっており、しかもセージは攫われていた。

 合わせる顔がないのか、黒い編笠を深く被り正座している。


 ジークルーネは、共有した情報を整理し、全員に説明した。

 セージを攫ったのがcode01とcode05であるということ、code01はすでに破壊されたのになぜか動いていること、お互いの旅のこれまでの説明。そして、ブリュンヒルデの変化のこと。


「お姉ちゃん、ううん……お姉ちゃんのヴァルキリーハーツは、code00……ワルキューレ、お母さんの物なんだよね?」

『はい。その通りです。ですが私の意志は『ブリュンヒルデ』です。code00の思考データは私自身でも解析不能な深層心理の奥にあると推測できます』

「つまり、てめーはブリュンヒルデでいいんだな?」

『はい。オルトリンデ姉様の言う通りです』


 ブリュンヒルデは、いつもと変わらない。セージと出会ったブリュンヒルデのままだ。

 ブリュンヒルデを知る仲間たちは、不思議な安堵に包まれていた。


『ですが、code00は特殊戦闘プログラム『CODE00ワルキューレINVOKEドライブ』をインストールして消えました。このプログラムには第三着装形態のデータとcode00の戦闘技能データが内包されています』

「すごい! お姉ちゃん、あとで調べさせてね!」


 ジークルーネは興奮していた。

 そして、今まで黙っていた三日月がポツリと言った。


「せんせ……どこに行ったの?」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 それは、誰にも答えられない質問だった。


「ちっ……レギンレイブの野郎。今度会ったらぶん殴ってやる!」

「お姉さま、落ち着いて。レギンちゃんがセンセイをどうにかすしようとは考えられませんわ」

「そうだね。レギン姉ぇってオルトリンデ姉さんと同じくらいバカっぽいし……」

「おいジークルーネ、喧嘩売ってんのか?」


 姉妹喧嘩が始まりそうだったので、ルーシアが言う。


「とにかく!! まず我々に出来るのは、これから始まる三種族の会議を見守ることだ。すぐにセージを捜索すべきだが、ここで投げ出したらセージの苦労が水の泡になる」

「そうじゃな……まずはワシらできることをやろう。それに、セージの手がかりがない以上、ヘタに動き回ってもしょーがないしのうぅ」

「ですです! オーガとラミアと龍人族に協力してもらうってこともできるかもですー」


 ゼドとクトネの言う通りだと思う三日月。


「この種族の会議が成功すれば、せんせの捜索を手伝ってもらえるかも……」

「なら、アタシらはここで踏ん張るしかないわね」

「え、ええと……わたしもお手伝いできれば」

「うっす!! 自分もいるっす!!」


 アルシェとエレオノールとライオットも同意する。

 こうして、逸る気持ちを抑え、セージが尽力した種族の会議を成功させることを、残されたメンバーは決めた。

 

 そして数日後、それぞれの種族が到着する。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 オーガ族代表のダイモン。

 ラミア族代表のエキドゥナ。

 龍人族代表のヴァルトアンデルス。


 三種族の代表が最初に気になったことは、奇しくも同じだった。


「同士セージはどこだ?」

「あれ~……あのセージって人間は?」

「ん? おい、セージの野郎はどこだ?」


 セージの存在は、どの陣営でも大きくなっていたようだ。

 ルーシアは、数日前に起きたオストローデ王国との戦いの報告をして……セージが行方不明になったことを正直に伝えた。

 すると。


「オストローデ王国……我々の同士に手を掛けるとは、許せん!!」

「ん~……あの人間、嫌いじゃないし、助けるなら手を貸すよ~」

「ま、いいだろう。オレが認めた人間だ、手を貸してやろう」


 オーガ族、ラミア族、龍人族は、セージを助けるということで協力する事になった。

 奇しくも、セージの不在が三種族の協力関係に繋がった。

 まぁ、攫ったのはオストローデ王国ではなく戦乙女型だが……ルーシアは、敢えて言わなかった。


 こうして、種族間の会談は成功で終わった。

 そして、セージの捜索が始まった。




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○勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

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