第197話、いろいろ言いたいが、情報収集!
いろいろ言いたいが、情報収集だ……と、考えていた時期がありました。
戦いは終わり、なぜか俺たちは宴会の主役席で酒を注がれていた。
「さぁ吞め客人、このダイモンを倒した戦士とその仲間。我々オーガ族はお前たちを同士と認め歓迎しよう!!」
「……ええと、ありがとうございます」
キキョウに斬られた傷がすでに完治したダイモンが、大相撲の優勝杯みたいな杯を俺に押しつけて酒を注いでくる……つーかこんなに呑めないっつの。
ゼドさんはオーガ族の酒に興味津々で、優勝杯片手に満面の笑みを浮かべてるけどさ……。
ダイモンは、優勝杯を掲げ、町の中央広場に集まったたくさんのオーガたちに演説した。
「新たな同士に……乾杯!!」
そして、優勝杯を一気に飲み干し……オーガ族の野太い大歓声が上がった。
こうして、歓迎会という名の宴会が始まってしまった……。
ダメだコリャ。今日は話を聞けそうにないぞ。
「セージ、今日はもう吞むしかねぇな!!」
「ゼドさん、ご機嫌っすね……」
「そうか? ガッハッハ!! ちとオーガたちと飲み比べしてくらぁ!!」
ゼドさんは、上機嫌でオーガたちの輪に加わる。
ルーシアとキキョウは静かにチビチビ吞み、三日月とクトネは居住車からネコたちを呼び、料理にあった焼き魚を食べさせている。
アルシェは、いつの間にか酔っ払ってオーガに絡んでいる……あいつ、酒癖悪いの忘れてた。
ブリュンヒルデとジークルーネは馬の世話をし、ごま吉とジュリエッタにエサを食べさせている。
「まぁ、今日くらいいいか……」
つーかこの優勝杯、デカすぎて吞みにくいっつの!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…………」
『…………』
「…………あれ?」
『おはようございます。センセイ』
「…………ブリュンヒルデ? あれ、ここは……っつ」
頭痛い……飲み過ぎたのか?
「あいてて……つーか、なんだ? 昨日の記憶がない」
『センセイは、オーガ族のアルコールを摂取後に酩酊、意味不明な言動と行動を繰り返しました』
「…………まじで」
『はい。その後、ルーシアとキキョウに酒を無理矢理吞ませていました』
「…………」
身体を起こすと、どうやらベッドの上にいるようだった。
居住車ではない、オーガ族の町にあるベッドなのか。オーガ族専用だからかベッドがアホみたいにデカい。大人5人は余裕で寝転べそうだ。
「いてて……軽い二日酔いだな。ブリュンヒルデがここまで運んでくれたのか?」
『はい。着衣が汚れていたので脱がし、ベッドへ寝かせました』
「え……うぉっ!? は、裸じゃないか!!」
俺は素っ裸。パンツも履いていなかった。
おいおいまさかブリュンヒルデさん、俺のパンツも脱がせたのか!?
そして。
「ん、んん~……朝か」
「ふぁ……私としたことが、飲み過ぎたようです」
「え」
ベッドから、素っ裸のルーシアとキキョウが顔を出した。
「…………」
ぷるんっ、ぽよんっ……二人とも素っ裸。
『おはようございます。ルーシア、キキョウ』
「ああ、ブリュンヒルデ……おはよう」
「おはようございます……うぅ、あたまいたい」
「……………」
この状況、かなり不味い。
「ああセージ、おは…………」
「セージさん? ああ、おは…………」
「……………おはようございます」
硬直するルーシアとキキョウ。
裸の自分、そして裸の俺、ベッドで3人……ま、そう考えちゃうよね。
『朝食の支度ができています。着替え、リビングに集合を』
朝ご飯……なにかなぁ?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リビングでは、ダイモンがエプロンを着けて料理をしていた……朝からなんだよ、マジで。
クトネたちも困惑し、やたらデカい椅子に座って料理を待っている。
「起きたか。もうすぐ準備が終わる、座って待っててくれ」
「は、はぁ……その、ダイモン、さん、が……朝ご飯を?」
「ああ。そうだが?」
「…………」
とりあえず座り、ダイモンが卵を焼く姿を眺める。しかもめっちゃ様になってる……すげぇ。
美味しそうな料理が完成し、ダイモンを含めた全員で食べる。ちなみにここ、ダイモンの家らしい。
「う、美味い……」
ダイモンのご飯は、めっちゃ美味しかった。
食後のお茶を飲み終わると、ダイモンが言う。
「ところで同士たち。お前たちは人間のようだが、何をしにここへ来たのだ?」
エプロンを外せエプロンを。
つーか、こいつがオーガ族最強の戦士なんだよな? キキョウがあっさり倒したから強いとか弱いとかわからなかった。
とりあえず、ここに来た目的を説明する。
「………なるほど。オーガ、ラミア、龍人を倒して王になるとはな」
「ああ。一応キキョウがあんたを倒したけど、何か手続き的なことは必要なのか?」
「いや、そんな必要はない。キキョウ殿がオレを倒した時点で、オーガ族の敗北は決まった。オーガ族は、今回の王争奪戦はリタイヤだ」
「じゃあ……」
「うむ。オーガ族はキキョウ殿に従おう」
「では、最初の命令です。私ではなくセージさんに従いなさい」
「わかった」
「え、ちょ、キキョウ!?」
お茶を啜りながらあっけらかんと言いやがった。
ちなみに、朝の『裸ベッド事件』はなかったことになっている。
「では同士よ。オーガ族はお前に従おう」
「ど、どうも……とりあえず、ラミア族や龍人族の情報をください」
「わかった」
場所をリビングではなく客間に変え、ダイモンの話を聞くことに。
「まず、ラミア族だが、奴等は魔術どは違う妖術を使う」
「妖術?」
「ああ。魔術は属性に縛られるが、妖術にはそれがない。オレらも詳しいことは知らんが……毒を使ったり幻覚を見せたりするらしい。直接的な攻撃は、手に持った武器や強靱な尾による締め付けだな。特に、エキドゥナの尾に捕まったら最後、力自慢のオーガでさえ絞め殺せる」
「こわっ……」
「そして龍人族は、その名の通りドラゴンの血を引いた種族だ。オーガ族の身体能力に、ラミア族の妖術を兼ね備えた種族と思えばいい。ハッキリ言って強敵だ。さすがのオレも5人同時に相手はできない。それと、龍人族最強の戦士ヴァルトアンデルスは、ドラゴンに変身出来るそうだ。だが、用心深く勝利を確信した時しか表に出てこない」
「なーんじゃそりゃ、臆病モンか!!」
ゼドさんが言う。
いや、勝つための手段だろう。臆病とは違う。
「地図はあるか? ラミア族の拠点なら数カ所は知っている。そこに向かえばエキドゥナの情報が手に入るかもしれん。ヴァルトアンデルスについては不明だ。ここ数百年、見てすらいない」
ダイモンは、俺が渡した地図にマークを入れて俺に返す。
「とりあえず、こんなところか。聞きたいことはあるか?」
質問タイムだ。
みんながダイモンに質問し、わかる範囲でダイモンは答える。
エキドゥナやうヴァルトアンデルスの強さ、これまで受けたラミア族の攻撃、ラミア族の弱点、このラミュロス領土にネコはいないのか、などなどだ。
ネコはともかく、聞くべき事は聞いた。
「さて同士よ。オレたちはこれからどうすればいい? お前の指示に従おう」
「んー……じゃあ、いつも通り生活してくれ。助けが欲しい時に呼ぶからさ」
「……わかった。従おう」
「よろしく」
ダイモンと握手し、話は終わった。
次の標的はラミア族だな。ダイモンから教えてもらった拠点を回ってみよう。
というか、オーガ族かここまで楽勝なら、ラミア族も簡単かも。
なーんて……そう甘くはないんだよなぁ。
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