第146話、MIDBOSS ティターン・Type-LUKE④/センセイ、マジで?
カラミティジャケットが爆発する瞬間を、俺とジークルーネは遠目で眺めていた。
ルーシアたちはエンタープライズ号のチェックと、ネコやごま吉たちの様子を見てもらってる。
ここからでもわかる。オルトリンデがミサイルやレーザーを撃ちまくり、カラミティジャケットのミサイル発射口から侵入したミサイル発射口が、内部のミサイルに誘爆して内側から爆発したのだ。
「オルトリンデ姉さん、やりすぎ……」
「なぁ、あいつってもしかして、かなり荒っぽい性格なのか?」
「う、うん。姉妹の中では一番かも……」
「…………」
まぁ、倒したならいいか。
すると、それぞれの遺産に乗った戦乙女型アンドロイドが3体、戻って来た。
「おーい、終わったぜーっ!!」
「ふぅ、久し振りにいい運動をしましたわ」
『…………』
ポニーテール、ゆるふわウェーブ、ロングストレートの銀髪少女が3人、ショートカットのジークルーネを入れると4人の戦乙女型アンドロイドか。かなり絵になるな。
すると、オルトリンデが俺に向かって何かをぶん投げ……ちょ!?
「お、おいこれ!!」
「戦利品だよ戦利品。情報は必要だろ?」
『……ガ、ガガ』
それは、アンドロイドのボディだった。
Type-LUKE……四肢を失い、下半身は消失、胸から上の部分しかない。
俺と戦ったタンクトップハゲ……なるほど、こいつの情報を……待てよ。
「はぁ~……ジークルーネ、久々にメンテ頼むぜ。ボディは修復されたけど、メモリーにバグが溜まってるし、ナノマシンの稼働率も2割以下だ。スッキリさせてくれよ」
「まっかせて!! オルトリンデ姉さんとヴァルトラウテお姉さま、何年稼働してたか知らないけど、何があったかメモリーを覗かせてもらうからね!!」
「ふふ、ジークルーネちゃん、張り切ってますわね。よろしくお願いしますわ」
『…………』
「もちろん、ブリュンヒルデお姉ちゃんもね!!」
『お願いします』
姉妹の会話はどこまでも楽しそうだ。
地面に転がるType-LUKEには目もくれない。
すると、ルーシアたちが戻って来た。アルシェもいる。
「セージさーん、ネコやごま吉たちは大丈夫でしたよーっ、みんな相変わらず可愛いです!!」
「みんなお昼寝してる」
「スタリオンとスプマドールも問題ない。居住車も傷一つないぞ」
「はぁ、やっと終わったのかぁ。アタシ疲れたよ……」
クトネ、三日月、ルーシア、アルシェだ。
着替えたのか、みんな服装が違う。まぁ激しい戦いだったらしいからな。
さて、終わったような雰囲気だが、まだ終わりじゃない。
『…………』
「…………」
俺は、地面に転がるType-LUKEを見た。
そして……ちょっとだけ、思いついてしまった。
「げげっ、な、なんですかそれ、セージさん」
「ん、アンドロイドだ」
「なるほど、あの鉄巨人の……」
「ああ」
ようやく、全員の注目がType-LUKEへ。
すると、オルトリンデが言った。
「ジークルーネ、まずはこいつのデータ引き出せよ。その後はアタシが粉々にぶっ壊すからよ」
「うん、ちょっと時間がかかるかも」
「………ちょっと待った」
「あ?」
「………試してみたいことがある。実験させてくれ」
俺は、Type-LUKEに手を伸ばす。
『我。敗北。破壊。推奨』
「そうだな。その前に、ちょっと実験だ」
はげ頭に手を乗せ、俺は呟いた。
「『
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
頭の中に、真っ白な空間が広がった。
『………ん、おお?』
真っ白な部屋の中に、俺はいた。
なんとなくわかった。これは、Type-LUKEの電子頭脳の中だ。
アクセスのレベル2、データ書き換え能力。つまり、この部屋の中をいじくり回せばいいってことだ。
『えーと、とりあえずいろいろ出てこい』
そう言うと、部屋には色々な物で溢れた。
赤く光る玉、鉄格子、よくわからない金属の塊……なるほど、わかる。
まず俺は、赤く光る玉の前に立つ。
『……なーるほどね。こいつはType-LUKEの行動原理……つまり、オストローデ王国への忠誠心か』
不思議だ。能力のせいか、触れただけで何かわかる。
さっそく弄るか。
『まず、プロテクトを破壊……よし』
触れただけで赤い玉が砕け、小さな白い玉が現れた。赤い部分は殻みたいなもので、この白い球がType-LUKEの感情部分……戦乙女型アンドロイドで言えば、ヴァルキリーハーツに当たる。
『よし、行動理念を再入力。オストローデ王国は敵、俺たちの味方、生き物を愛して守るように……』
プログラム再入力。人造人間○6号みたいなヤツにしてやろう。ついでに、話し方や性格も親しみやすくして……お、リミッターが付いてる。よし、このリミッターを外して、と。
『よーしできた。あとは、プログラムを弄られないように再プロテクト……せっかくだし、最初のプロテクトの500倍の強度にして、と』
よし、これで調整完了。Type-LUKEライオットは自然を愛するアンドロイドに生まれ変わった!!……はず。とりあえず、これで終わり。
ふぅ………アクセス終了、っと。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…………ふぁ、疲れた」
「せんせ!! 大丈夫!?」
「ん、ああ」
俺の周りに、全員が集まっていた。
三日月が擦り寄るように腕にしがみついている。
「俺、どのくらい動かなかった?」
「30分以上動かなくて……どうしようかと思った」
「ああ、悪かった……なるほど、5分くらいかと思ったけど、現実じゃそれくらい経つのか」
かなり無防備だ。
こりゃ、安全な場所じゃないと使えないな。
っと、それより……。
「おいセンセイ、何をしてたんだよ?」
「ああ、実験だ。みんな離れてろ」
「センセイ?……って、ちょっと何を!?」
ジークルーネが驚愕するのも無理はない。
そりゃ、今まで敵だったType-LUKEを、リペアで修復したんだからな。
「おま、正気か!? ブリュンヒルデ、ヴァルトラウテ!!」
「はい、オルトリンデ姉さま」
『センセイ、離れてください』
「待て待て、ストップだストップ!! ちゃんと理由があるんだよ!!」
武器を構えたブリュンヒルデたちを押さえ、完全に修復されたType-LUKEことライオットに向き直る。
全員が警戒する中、俺は話しかけた。
「おはよう………調子はどうだ?」
すると、ライオットは頭を下げた。
「うっす!! 生まれ変わった気分っす!! ありがとうございますセンセイ!!」
「……好きな物は?」
「はい!! 自分、この世界の大自然を愛しています!! 動物や自然を破壊しようとするオストローデ王国は許せません!! センセイ、自分は戦います!! うっす!!」
「よーし。これから頼むぞ、ライオット」
「うっす!!」
うんうん、実験終了。
ライオットは生まれ変わった!! 新生ライオット、俺たちの新しい仲間だ!!
ちなみにライオットは全裸。イチモツは付いてないけどガチムチ肉体をこのままにするのはマズい。俺の服はサイズが合わないし、適当に毛布でも……。
「せ、センセイ……あの、どういう?」
ジークルーネだけじゃない、オルトリンデやヴァルトラウテ、ブリュンヒルデですら驚いてるように見えた。
俺は、みんなに説明した。
アクセスでデータを書き換えられるようになったこと、試しにライオットの行動原理を書き換えて、俺たちの仲間になるようにプログラムしたことを説明する。
「うそ………ま、まさか、アンドロイドの行動原理を書き換えるなんて………」
「ジークルーネ、念のためライオットも調整してくれ。大丈夫だと思うけど」
「は、はい、センセイ」
すると、俺のバンドが鳴り始めた……オリジンだ。
『……終わったようじゃな』
「ああ、なんとかな」
『すまん……逃げてくれ』
「え?」
逃げる?
意味がわからず聞き返そうとした瞬間だった。
「おーいっ!! オメーらぁぁっ!!」
「む、ゼド殿、無事だったか」
「逃げるぞ!! 居住車を出せ!!」
「え?」
息を切らしたゼドさんは、真っ直ぐエンタープライズ号に向かう。
「さっさと乗れ!! 出発するぞ!!」
「ぜ、ゼドさん?」
「エルフ族が、今回の騒動の原因がワシらにあると結論づけた!! オリジンでも押さえきれねぇ、ユグドラシル領土から出るぞ!!」
「は、はぁぁぁぁっ!?」
驚くみんな。
すると、バンドからオリジンが。
『すまん、今は逃げてくれ。ゼド殿の言う通り、わらわじゃエルフたちを止められなかった。ゼド殿にはいくつか情報を与えた、ユグドラシル領土から出たら話を聞け。それと、アルシェを連れて行け、彼女のチート能力は役に立つはずじゃ!!』
「………わけわからん」
『いいから急げ!! アルシェ、エルフ族代表として、セージの旅を見届けるのじゃ!!』
「え、あの、誰? は? 旅? 行くって、え?」
アルシェは大混乱だった。俺もだけど。
よくわからないままエンタープライズ号に乗り込み、出発した。
すると、後ろから馬に乗ったエルフたちが追いかけてきた。
「いたぞーーーーーっ!!」「この悪魔どもめぇぇぇーーーーーっ!!」
「大樹ユグドラシルを傷付けた報いを!!」「殺せ、殺せーーーーーっ!!」
めっちゃ怒っていた。
10~20人の馬に乗ったエルフがエンタープライズ号目掛けて矢を放ってくる。
窓から見たが、とんでもない形相のエルフばかりだ。かなり怒ってる。
「任せて!!」
「お、おいアルシェ!?」
アルシェは窓から居住車の屋根に飛び移る。
「せっかくだし、今までの鬱憤晴らすわ」
ピナカの矢がフワリと浮き、アルシェの周りをクルクル回る。
───────────ピィュイ。
エメラルドのような緑の矢が、エルフたちに向けて飛ぶ。
狙いは鐙、足を掛けていた鐙が矢で貫かれ、立って弓を構えていたエルフはバランスを崩して転倒する。落馬に巻き込まれ、エルフの追撃部隊は全員転倒した。そこには、アシュマーも混ざっている。
「じゃーね、バーーーーカ!! あははははっ!!」
楽しそうに笑い、車内へ。
「今までバカにされたからね。少しはスッキリしたかな」
「そ、そうか……」
「ま、よろしくね。よくわかんないけど、一緒に付いてくわ」
よくわかんないのはこっちもだよ……。
とにかく、落ち着ける場所まで行こう。
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