第144話、MIDBOSS ティターン・Type-LUKE②/合流

 カラミティジャケットは、ゆっくりと動き出した。

 狙いは·········。

 

「くそ!! 狙いはユグドラシルかよ!!」


 狙いはユグドラシル。

 すると、ユグドラシルの枝部分から、魔術による砲撃が始まった。まさか、エルフ族が戦ってくれてるのか?

 そして、俺のバンドがピーピー音を出す。


「ジークルーネか!!」  

『違う。わらわじゃ』

「は? な、なんで?」


 ディスプレイに表示されたのは、オリジンだった。

 いきなりすぎて流石に驚いたぞ。


『わらわの直通チャンネルを登録しておいたぞ。感謝するのじゃな』

「そりゃどうも。それより、あの魔術部隊はお前が?」

『そうじゃ。気休めだが、多少の足止めはできるはずじゃ。エルフ族の魔術を侮るなよ』

「助かる!! ブリュンヒルデたちと合流したら、助けに行くからな!!」


 俺は急いで森の出口へ向かった。

 なんだかんだで体力は付いてる。強くなってるのかはわからんが、今はとにかくダッシュダッシュ!


 そして、ついに森の出口へ到着。

 エンタープライズ号の周りには、みんなが揃っていた。


「おーいっ!!」

「あ、セージさんです!!」

「せんせ!!」

「無事だったか。安心したぞ、セージ」

「とりあえず一安心かぁ······」


 クトネ、三日月、ルーシア、アルシェは無事のようだ。

 エンタープライズ号も、スタリオンとスプマドールも無事。

 そして、かなり破損してるブリュンヒルデたち。


「ブリュンヒルデ、ジークルーネ······なんてこった。よし、すぐに直すからな!」

『ありがとうございます。センセイ』

「ありがとうセンセイ、あのね······」

「待て、ジークルーネ」


 不思議と、頭が冴えていた。

 なんだろうこの感じ······今なら、どんな数式も一瞬で答えられる気がする。  

 そして、迷わず指示を出していた。


「みんな、状況は把握してるか?」


 全員、首を振る。


「あれはオストローデ王国の『拠点制圧兵器CALAMITYカラミティJACKETジャケット』。UROBOROSウロボロスと同列の兵器だ」

「うそ!? あんな完璧な状態で······過去に作られたカラミティジャケットは、オルトリンデ姉さんが全て破壊したはず!」

「だったら答えは簡単だ。全て破壊されてなかったんだよ。そんなことより、あれを破壊しないとユグドラシル王国は終わる!! ブリュンヒルデ、頼めるか」


 俺は、ブリュンヒルデとジークルーネの肩に手を置き『|修理(リペア)』を発動させる。すると、二人のボディはキレイに修復された。


『はい、センセイ』

「よし。来いヴィングスコルニル、ブリュンヒルデの足になれ!!」


 手を突き出して命令すると、何もない場所にモザイク光が現れ、とても凛々しい機械銀馬ヴィングスコルニルが召喚された。今更だが、どんな仕組みになってるんだろう。


「頼んだぞ」


 そう言うと、ブリュンヒルデはヴィングスコルニルに跨り、第二着装形態の【神槍ロンドミニアゴ】を展開、大空へ羽ばたいた。


「センセイ、カラミティジャケットの硬度を計算すると、お姉ちゃんだけじゃ······」

「わかってる。だから力を借りる」

「······え?」

「いるだろ、そこに。妹想いのお姉ちゃんがさ」


 俺は、四肢を失い機能停止してるアンドロイドを見た。

 初めて見るのに、何もかもわかってる。

 まるで、自分の娘を見てるかのような温かみを感じる。


「せ、センセイ? あの、姉さんたちはウィルスに侵されて」

「大丈夫」


 全員の視線を浴びながら、俺は2体の戦乙女型の傍に跪き、両手をそれぞれの頭に乗せた。


「こんなにボロボロで······よく頑張ったな」


 『修復リペア・レベル3』と『除去イレイザー』の同時使用。

 ボディの損傷を全回復させ、ウィルスを完全に除去。

 細かい調整は必要だが、とりあえず問題ない。


「ぅ········んん」

「う······」


 銀髪ポニーテールのオルトリンデと、銀髪ゆるふわウェーブのヴァルトラウテが目を覚ます。

 そして、オルトリンデがガバッと身体を起こした。


「アンドロイドっ!!······ってアレ? アタシは何を?」

「ふわぁ······なんだか夢を見ていたようですわ」

「だな······って、オイオイ、ボディがめっちゃスッキリしてんぞ!? 壊れかけだったのに新品みてーじゃねーか!?」

「あらま、ホントねぇ······あら?」

「あー······ちょっといいか?」


 男っぽい口調のオルトリンデに、お嬢様っぽいノンビリ系のヴァルトラウテってところか。

 すると、ジークルーネがヴァルトラウテに飛びついた。


「ヴァルトラウテお姉さまっ!!」

「あら、ジークルーネちゃん?······ふふ、よしよし。あなたとアルちゃんはいつまでたっても甘えん坊ねぇ」

「オイオイ、ジークルーネがいるってことはアルヴィートもいんのかよ? つーかどうなってんだ? メモリーが虫食いだらけでよくわかんねぇよ」

「それについては俺が説明する。感動の再会は後にして、お前たち二人の力を借りたいんだ」


 頭をボリボリ掻くオルトリンデと、ジークルーネの頭を優しくナデナデしてるヴァルトラウテに言う。

 そして、ユグドラシルからの魔術砲撃を浴びているカラミティジャケットに気がついた。


「んだよアレ!?」

「あれはカラミティジャケット。オストローデの拠点制圧兵器だ。今はブリュンヒルデが戦ってる」

「ブリュンヒルデちゃんが? あらあら大変ねぇ」


 カラミティジャケットからミサイルが発射され、ブリュンヒルデが撃ち落とすのが見えた。


「つーか、お前ら誰だよ?」

「もう!! オルトリンデ姉さんを直してくれたセンセイだよ!!」

「センセイ? つーか、現代の技術とパーツでアタシらを直せるワケねーだろ。アタシらだって鉄くずで修理するしかなかったんだからな」

「センセイはパパと同じ力を持ってるの!! 少しデータを検証すればわかるでしょ!?」

「ンだとジークルーネ!! テメェ、姉に向かってなんて口の利き方を!!」

「はいはいそこまで〜、それで、わたくしとオルトリンデ姉さまにアレを破壊してくれと?」


 ケンカするオルトリンデとジークルーネも新鮮だったが、ヴァルトラウテが二人を引き離して俺へ。なんというか、立ち位置がわかってきた。


「そうだ。それに、そのための『力』はある」


 俺は漆黒のバッファロー、『皇牛モーガン・ムインファウル』を召喚する。

 すると、ブリュンヒルデが落とし漏らしたミサイルがこっちに飛んできた。

 ミサイルの数は3発。


「センセイっ!! 逃げないと!!」

「問題ない」


 俺は手をかざす。

 すると、エメラルドに輝く円盤が飛来し、ミサイルを全て撃ち落とす。そして、円盤はそのまま俺たちの元へ飛んできた。

 モーガンの隣に着陸した円盤は、姿を変える。


「な、なにこれ、センセイ?」

「このユグドラシルに安置されていた【戦乙女の遺産ヴァルキュリア・レガシー】の一つさ」


 ジークルーネやみんなの驚愕する。

 エメラルドの円盤の招待は、二足歩行の『亀』だった。 

 甲羅はエメラルド鉱石のように輝き、短い機械の手足は鋭い爪が生えている。ぶっちゃけて言うと『ガ○ラ』みたいだ。


「No.3【亀翁クルーマ・アクパーラ】だ。モーガンとクルーマを使って、カラミティジャケットを止めてくれ!」


 オルトリンデは、ボリボリ頭を掻く。

 ヴァルトラウテは、のほほんと首を傾げる。

 だけど、小さく頷いた。


「しゃーねーな、やってやるよ」

「ええ。かわいい妹のために戦いますわ」


 オルトリンデはモーガンへ、ヴァルトラウテはクルーマに触れた。



『マニュアルインストール完了。【戦乙女の遺産ヴァルキュリア・レガシー】No.02《モーガン・ムインファウル》完全同期』


『マニュアルインストール完了。【戦乙女の遺産ヴァルキュリア・レガシー】No.03《クルーマ・アクパーラ》完全同期』


『アップデート。データインストール完了。【乙女激砲カルヴァテイン・タスラム』】第二着装形態獲得』


『アップデート。データインストール完了。【乙女絶甲アイギス・アルマティア】第二着装形態獲得』


 遺産と武装が変形し、合体する。

 空気と化してした三日月たち、ジークルーネはあ然としている。だが、俺はワクワクしていた。


 モーガン・ムインファウルはロボットのような二足歩行へ変形して、腕部は武装、背後には無数のキャノン砲、そしてミサイルポッド。脚部は独立したキャタピラに変形する。そして、胸の部分はポッカリと空洞になり、オルトリンデが乗り込んだ。

 つまり、漆黒の『駆動鎧ライドアーマー』へ。


 クルーマ・アクパーラは、背中の甲羅が六角形のエメラルド結晶に分離した。その数は12枚。全て独立したファンネルのようにフワフワと浮き、甲羅以外のパーツは円盤へ変形し、ヴァルトラウテが搭乗、ゆっくりと浮き上がる。


『第二着装形態【殲滅無敵砲台クジャタ・チャリオッツ】展開っ!!』

『第二着装形態【翡翠障壁エメラルド・イージス】展開しますわ!!』


 さぁ、ユグドラシルでのラストバトルだ!!

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