第87話オーク退治
さて、やって来たのはディザード王国領土にある廃村。
依頼内容は、ここを根城にしてるオーク集団の殲滅だ。なんでも、ここを根城にして旅人や商人が乗ってる荷車を襲うようになったとか。
依頼主はオゾゾの商人組合。流通に影響が出るので早めに討伐して欲しいとか。
俺たちは馬車で廃村近くまで移動し、その後は徒歩で廃村近くの藪に隠れていた。
「おー……いるわいるわ、わんさといるよ」
「オーク、はじめて見た」
オークは、二足歩行のブタ型モンスターだ。
体長は2メートルほどで、個体によって変化する。
武器は冒険者から奪った剣や斧、それか丸太。基本的には防具を身につけていないが、冒険者から奪った鎧などを装備してるパターンもある。
「ではでは、あたしクトネが、みなさんの実力を判断させていただきます。セージさん、久し振りの戦闘ですが、大丈夫ですか?」
「久し振りって……フォーヴ王国で戦ったぞ」
「あんなの戦闘に数えられませんよ。ちょっと相手の腕を切り落として、あとはシオンさんの戦いを見てただけじゃないですか」
「ぐっ……」
図星を突かれて黙る俺。
だったら見せてやる。俺だって少しは強くなってるんだ。
改めてオーク集団に目を向ける。目的もなくウロウロしてたり、グースカ寝てたり……というか、数が多い。パッと見30体以上はいそうだ。
「じゃ、いってきます」
「え」
三日月が飛び出した。
クトネもルーシアも予想外だったのか、呆然と見送った。
ネコ耳と尻尾を出した獣人モードでオーク集団に突っ込んでいく。
「ちょ、三日月!?」
「ば、バカなことを!!」
「あわわ、い、行くしかないですよ!!」
作戦もクソもない、俺たちは三日月を追って藪から飛び出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
三日月は両手から爪を出して目の前のオーク目掛けて飛びかかった。
「しゃぁっ!!」
『ブモッ!?』
ネコ爪がオークのノドを切り裂く。
そこらで売ってる剣よりも鋭利で切れる。さらに、『猫王』と『キャットウォーク』の同時使用で今までにないくらい身体が軽い。少し飛び上がっただけで廃村の一軒家も軽々と飛び越えられそうだ。
「わたし、戦える……!!」
今までは、ネコを使ったサポートがメインだった。
もしオストローデ王国に残っていたら、情報収集班として三日月はかなりの戦力となっていただろう。なにしろ、町や王国にネコなんて腐るほどいる。ネコの俊敏さと隠密性をフルに使った情報収集能力は高く買われていたはず。
でも、今は違う。
冒険者として、クラン『戦乙女』の前線メンバーとして戦える。
サポート係だったが、護身用として習った格闘技は、クラス女子No.3まで強くなった。アシュクロフトは『才能がある』なんて言ったけど、正直あまり興味なかった。
それに、本当はネコを使うなんてしたくなかった。
ネコは可愛い。ネコはお友達。お喋りするだけでも楽しかった。
『ブモォォォッ!!』
「にゃぁぁぁっ!!」
背後から迫るオークの丸太攻撃をジャンプで躱し、そのままオークの首目掛けて爪で切り裂いた。
オークの動脈を切り裂き、血抜きがされる。
オーク肉は美味で、肉屋に卸せばいいお金になる。そのことをクトネから聞いていたので、三日月はなるべく動脈を切り裂こうと考えていた。
「えへへ……お肉お肉♪」
三日月は、新しくできた仲間たちを見る。
頭のいい魔術師の少女クトネ、大人っぽいライバル?のルーシア、みんなを応援しながらオークの攻撃を躱すジークルーネ。そして、せんせとずっと一緒にいた少女・ブリュンヒルデ。
「………うん」
三日月は、ワクワクした。
新しい仲間と一緒に、これから冒険する。
オストローデ王国にいた頃とは違う、新しい自分となって。
「……せんせ、わたし頑張る」
三日月は、オークと戦うセージを見て微笑んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は、オークの一体と渡り合っていた。
というか、体格差がありすぎるので正面からぶつかれない。だが、オークは俺の真正面ピッタリに付いて来やがる。
「この、豚肉がぁぁぁっ!!」
『ブモモモモォォォォッ!!』
渾身の威嚇もブモブモと馬鹿にされた。この野郎。
俺はオークのサイドに回り込もうと走り、左手に魔力を込める。
右手のキルストレガの引き金を引き、魔力放出モードに切り替えておく。実は予めクトネに頼み、ファイアボール数発分の魔力を補充しておいた。
「喰らえ!! 大地の礫よ飛べ!! 『石礫(ストーンバレット)』!!」
『ブガッ!?』
オークのサイドに回り込み、俺を追ったオークの一瞬の隙を突いて、顔面に漬物石を叩き込んでやった。まぁ漬物石じゃなくて俺の魔力で生み出した石だけどな。
漬物石をピッチングマシンで飛ばしたような速度で、オークの顔面に激突する。
俺はこの一瞬の隙を逃さない!!
「必殺!! 『空波斬(くうはざん)』!!」
大地を抉りながら飛ぶ斬撃。
ブレード光波は空を飛んで相手を切り裂くが、空波斬は大地を抉りながら飛んで行く。魔神剣にしようか悩んだが、どちらかと言えばテ○○ズよりスタ○が好きだ。感情度でエンディング変化って斬新だったな。あと初期アー○ード○アも好き。
空波斬はオークの股下を通り抜ける……そして、股から腹部にかけてスッパリと切れ込みが入り、オークの内臓がドチャッと地面に落ちた。
オークは白目を剥いて崩れ落ちた。
「や、やった!! うぉぉぉぉっ!! 俺が、俺がオークを倒した!!」
『ブモォォォォッ!!』
「へ?」
喜ぶ俺の背後に、丸太を振り上げたオークがいた。
すでにモーションに入ってる。あ、これ死んだ。
『ブッ!?』
すると、オークの身体がビクッと跳ね、そのまま倒れた。
オークの背後にいたのはブリュンヒルデ。どうやらオークの後頭部に剣を突き刺して即死させたようだ。
『センセイ、油断大敵です』
「も、申し訳ない……」
『ですが、先程の動きは素晴らしかったです。この調子でモンスターを殲滅しましょう』
「え………お、おう。え? ブリュンヒルデ、褒めたのか?」
『敵残数13。センセイ、戦闘を続行して下さい』
「あ、ちょ!!」
ブリュンヒルデは、近くにいるオークの元へ向かった。
今のって、ブリュンヒルデが俺を褒めた? まさか、こんなの初めてだよな。
「……よし!!」
もう油断しないと誓い、俺はオークに向かって突っ込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オークを全滅させた!
結果。廃村跡にいたオークは50匹。俺が倒したのが3匹、ブリュンヒルデが13匹、クトネはみんなの動きを観察しつつ4匹、ジークルーネが8匹、ルーシアが10匹、三日月が12匹だ。
オーク・パンデミックとでもいうべきか、これだけの規模の集団は珍しいそうだ。
討伐の証である耳を切り取り、食べれる部位だけ解体しようとしたが、オークの死体の血と匂いで他のモンスターを呼び寄せてしまうため、泣く泣く2体分の肉だけで我慢した。
というか、俺が一番狩ってねぇ……クトネなんてみんなの観察しながら4体倒したのに。
帰りの馬車内で、クトネは言う。
「やはり、戦闘ではブリュンヒルデさんが突出してますね。次にルーシアさん、そしてシオンさん。セージさんは直接戦闘よりも、魔術によるアシストが適任かもしれません。ジークルーネさんは鱗粉みたいな? 攻撃でしたが……」
「あれはナノマシンです。オークの体内に入れて発狂死させました」
「………そ、そうですか」
は、発狂死って……サラリととんでもないこと言うな。
ジークルーネ、恐ろしい子。
「とりあえず、依頼は完了だな。オークの死骸もモンスターが全て食べてしまうだろう。セージ、今日のお前はなかなかいい動きをしていた。まだまだ甘い部分もあるが、これからも鍛えてやる」
「もちろん、あたしも魔術を教えますよ! G級魔術を詠唱破棄できるくらいにはなってもらわないと!」
「はは……お手柔らかに」
確かに、今日はよく戦えたと思う。
キルストレガと魔術の連携……いける。
体力ももっと付けないと。剣術や魔術ももっと上手くなりたい。
「さて、ギルドに報告したら反省会をしましょう! そして、今後の依頼方針も決めないと!」
「クトネ、やるきいっぱいだね」
「もちろん! シオンさんにも頑張ってもらいますからね!」
「うん」
こうして、オーク退治は終了した。
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