第二話 幻影
空気の綺麗な、あの日と同じ赤々とした夕日だった。
「ねぇ、私の事覚えてる?」
「忘れるわけがない」
夕日のさした私の部屋、その中央に彼女は座っていた。
「どうして今更、私の元に現れたんだ?」
彼女は言った。
「覚えていて欲しかった。忘れられたくなかった。あなたの生き方がどれだけ変わっても、年をとっても。私の事をその記憶の端にでも置いてもらいたかった」
私は思い返した。
「…そうだな。私は避けていた、いつのまにかきみの事を悲しい記憶だと記憶の底にしまい込んでしまっていた」
「そんなにも私を思って…そう…。それでね、突然だけど今日はお別れを言いに来たの。いままでありがとう」
「今何を?」
「今日で私たち別れましょう」
「…これで終わりなのか?」
「…終わりよ。いえ本当は終わっていなければいけなかった。あの日に、私はあなたを縛りすぎた」
あの日彼女は突然、私の前から消えた。綺麗な夕日が沈む日だった。
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