めぐりめぐりて

産めよと生まれた遠い病院へ

されど敵に襲われて

みるみるうちに赤子は攫われた

底冷えの床に女は這いつくばり

ややこよ、ややこ、かわいい子

泣きながら這い、股座から血を流す

見舞いの僧侶は嘆き嘆き悲しんだ

赤子は遠く遠く祖母の腕の中

お七夜過ぎに女は死んだ

お宮参りにゃ祖母と祖父と男と女

すくすく赤子は大きくなって

家族を慕い生きてきた

そうして、ある日、祖父の今際の果て

「おまえの家族は偽物だ」

真実を話してこと切れた

祖母は絶句、母は狂乱、父は絶望し

誰一人、かのものに対して言い訳せなんだ

察した子は孤独になった

子は遠い病院近くの寺にて無縁仏と会い

僧侶から話を聞いて、ある病室で血を流そうとしたが

駆け付けた僧侶に止められて

苔むす石塔たちの墓守となりました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る