「好き」が生きている

朝焼けが美しい

この一生、何度も空の美しさを知っているけれども

この感動だけは、いつでも、何時でも

初めてでも、二度目でも

美しい

としか言えない時がある

言葉は無限であるはずだし

探せば当てはまる言葉があるだろう

しかし、いつも、何時も

美しい

それしか言えないことがある

今ならば

昼から登り、山小屋で体を休め

陽が登る前に起き、装備を整える

体中が凍りのよう、寒くて寒くて仕方がない

なんでこんな気持ちにならねばならない

それでも美しい

苦難の先にあるのは幸福である

まやかしの呪文は嘘でも真実でもかまわない

から、この太陽が昇り、雲が色づいていく

地平線が橙の線になる

美しい

ただ一言、きっと帰りもつらいのに

それも旅のスパイスだ 言われたとて

登るのは辛かったし

今はとても神聖な場所にいるようで

夢心地

帰るのも辛いけれど

これを見るだけに苦しんだ訳ではない

山が好き、登るのが好き、挨拶が好き

山小屋の臭いが好き、澄んだ空気が好き

景色が好き、歩いて痛くなる足が好き

全部、愛している

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