山の麓の精神病院 2

待合室が混んでいた

待合室は五部屋あり

ドアの前には長椅子三つ

親子か夫婦か、はたまた兄弟か

分からないけれど連れが多いせいで独り身は肩が狭い

そのせいで椅子は埋まるし、やめてほしい

パーソナルスペースが広いから

電車のように我慢できない

受付室に戻っても叫んで愚痴って「俺はすごい」と

宣う患者のハーモニーで気持ち悪い

イヤフォンがなければ死んでしまう

死んでしまうが呼ばれたことに気づけない

だから、我慢して我慢して我慢して

「夢見が悪くて飛び起きちゃうんです」

疲労状態で処置室に入るもんだから

開口一番に原因を言う

早く帰りたい

ここは同じ人ばかりで怖いから帰りたい

一人しかいない自分は独りみたいで

だから早く帰りたい、そんな日は早く帰れる

まだ日が落ちずに帰れるなんて

薬を受け取り空を見る

随分、澄んだ空色で、山の近くだから空気が美味しく感じる

何より病院を出れば雑音などなくなって

地元に帰ればうるさくなって悲しいけれど

静かで一人で安心できる

知っている場所は安心できる、知っている場所しか安心できない

こんなに悲しい事はない

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