山の麓の精神病院 2
待合室が混んでいた
待合室は五部屋あり
ドアの前には長椅子三つ
親子か夫婦か、はたまた兄弟か
分からないけれど連れが多いせいで独り身は肩が狭い
そのせいで椅子は埋まるし、やめてほしい
パーソナルスペースが広いから
電車のように我慢できない
受付室に戻っても叫んで愚痴って「俺はすごい」と
宣う患者のハーモニーで気持ち悪い
イヤフォンがなければ死んでしまう
死んでしまうが呼ばれたことに気づけない
だから、我慢して我慢して我慢して
「夢見が悪くて飛び起きちゃうんです」
疲労状態で処置室に入るもんだから
開口一番に原因を言う
早く帰りたい
ここは同じ人ばかりで怖いから帰りたい
一人しかいない自分は独りみたいで
だから早く帰りたい、そんな日は早く帰れる
まだ日が落ちずに帰れるなんて
薬を受け取り空を見る
随分、澄んだ空色で、山の近くだから空気が美味しく感じる
何より病院を出れば雑音などなくなって
地元に帰ればうるさくなって悲しいけれど
静かで一人で安心できる
知っている場所は安心できる、知っている場所しか安心できない
こんなに悲しい事はない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます