遠出

朶骸なくす

雲と太陽と島

海岸沿いの電車に乗った

久しぶりのことである

図らずも今期のアニメーションの舞台の巡礼になった

そう思いつつ時刻は夕方

もう陽が沈む

そろそろ海が見える頃

わざと海が見える座席にいた

鈍色なグリーンの海は静かで

空は紅掛空色

ぱっと江の島が見えた

その上に太陽がある

さらに横細い厚手の雲がある

間の太陽は曙色を強くした輝く橙色

雲と島に挟まれた太陽は、海に光をともさず

そのまんまるをすっぽり納め

狭まった光は横に伸びていた

天色に輝く太陽は小さいのに

夕暮れの太陽は大きく大きく

束の間、私はそれを凝視してしまった

海沿いが終わった頃、目の中には残像があった

頭の中にはあの景色で一杯なのに

目の前に残ったのは目映さのみ

それが咎められてもいい

目を失っても、あの景色は一度きりの景色だった

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