色んな先輩
@moga1212
せっかち×マイペース
ここはダイナ島。
様々なフィールドが存在し、様々なモンスターが生息する。
その島の沿岸にある都市。
ここに、モンスターを狩るために必要な技術を教える学校がある。
通称アカデミーと呼ばれ、この学校では、あらゆる武器を生徒に教えるが、この時期、卒業生らが新たに狩りに加わることとなる。
今回は、そんな初々しい生徒諸君と先輩にフォーカスを当てていく。
俺はブレッド。
年は18になる。
得意武器はナイフで、地上初のソロのナイフ使いになるのが夢だ。
「マジで、頼むぜっ」
今日は、先輩とここで落ち合う約束になっている。
学校の決まりで、卒業しても最初の1年は先輩について回らなきゃいけない。
一歩学校から出たら、文字通り弱肉強食の世界だ。
ぱっと見、弱そうなモンスターでも、やっかいな奴は多い。
新人はそういうのの見分けがつかないから、ばっちり教えてもらわなきゃならねーって訳だ。
先輩狩人は学校がランダムに指定してくるから、いい先輩に当たるかは運だ。
「って、もう時間、過ぎてんじゃねーか」
腕時計を見やる。
集合時間を2分、オーバーしちまってる。
集合場所、間違えたか?
でも、確かにこのダイナドンの止まり木の下、っつってた。
ちなみに、ダイナドンってのはでかい鳥で、マイダイナドンでこの広い島を移動する。
「……」
いつまでたっても、来ない。
もう、30分は過ぎちまってる。
これ以上遅れるようなら、一旦学校に連絡してみないとダメかもだ。
しょっぱなから、幸先わりーな。
あと5分だけ、待ってみるか。
そう思った矢先、向こうから、のっそのっそと誰かが近づいて来た。
「ごめーん」
やや小太りの男。
何の悪びれた様子も見せず現れたコイツが、まさか俺の……
「俺はライス。 お前の先輩だ」
マジかよっ!
俺は、声を出さずに、そう叫んだ。
外れも外れ、大外れじゃねーか!
せっかく溜めたダイヤで10連ガチャを回して、全部「Dランク」のキャラをつかまされた気分だ。
どう考えても、こいつは雑魚だ。
「ブレッドは飯食ったか?」
「……食いましたよ。 とっくに」
「マジかー。 じゃあ、ちょっと飯食ってくるから、待っといてくれ」
は?
え、今から飯行くのかよ!?
ライスさんは、そのまま来た道を引き返し、飯屋へと向かった。
帰って来たのは、1時間後。
あり得ない。
今日限りだ。
学校の規定で、先輩と馬が合わなかった場合、変更の申請をすることができる。
この人にゃ悪いが、そうさせてもらう。
俺は、ダイナドンの足首に捕まりながら、そんな思惑を巡らせていた。
降り立ったのは、荒野。
ここで、コドモドラゴンを狩る予定だが、既に時刻は1時。
陽が落ちる前に帰ることを考えると、あまり時間がない。
ラッキーなことに、向こうからコドモドラゴンが一匹、現れた。
二足歩行のドラゴンみたいな奴だが、全長は2メートル未満で、比較的小型だ。
「先輩、俺が足を斬りつけて動きを止めるんで、その刀でとどめ、頼みます」
俺は、コドモドラゴンに突撃した。
「せっかちなやつだなー」
俺はナイフを構え、素早い動きで相手の側面に移動、足を止めないようにして、太ももらへんを斬りつける。
「ギャアアアアッ」
甲高い悲鳴を上げ、尻尾を振り回してくる。
「っぐ!」
ムチみたくしなった尻尾が、俺の腕をかすめる。
頭をガードしているものの、直撃すればただでは済まない。
「せんぱ…… って、何しとんじゃーっ!」
俺は、思わず叫んだ。
ライスの野郎、道端に生えてる草に心を奪われている。
「これ、ヨモギだー。 帰って食堂のおばちゃんにもってってあげようかな」
こいつ、俺が作った隙を、無駄にしやがった。
俺は、ふざけんじゃねえっ、とナイフをその場に投げ捨てた。
「先輩、俺、帰ります。 やってらんねっすわ」
マジで、やってらんね。
完全に頭に血が上って、目の前のコドモドラゴンなんて、どうでも良くなった。
口に指を当てて、笛を吹こうとした時だった。
俺の頭部を狙って、尻尾が振り払われた。
周りが、スローになる。
やべっ。
下手したら、これで死ぬかも知れない。
(やっちまった)
まさか、初日でやらかすとは……
ついて、ね……
その時だった。
一閃。
コドモドラゴンの尻尾が体から切り離され、刀を抜いた先輩が目の前にいる。
更に、次の瞬間には相手の体から血が噴き出した。
あまりの早業に、いつ斬りつけたのかすら分からない。
「油断したらアカンよー」
間抜けなしゃべりとは裏腹に、尋常じゃない剣技。
俺は、可笑しくなった。
「ははっ、マジっすか!? 先輩、ハンパないっすね!」
俺は、考えを改めた。
しばらく、この先輩についてくことになりそうだ。
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