第33話 非仏問答

「この上には何がある」

「非仏だ」

「非仏とは」

「いわなくてもわかってくれ」

「非仏になりたい」

「いや、非仏になるのではなく、従ってくれ。それをわかってくれ」

「非仏とはなんだ」

「非仏はことばにはしない。だが、それを知ったうえで、従ってくれ。このことばでわかってくれ」

「この上には何がある」

「非仏だ。仙陀はいない」


「ちょっと気きたいことがあるんだけど」

「なんだ」

「非仏について知りたい」

「非仏は非仏だろう」

「非仏って悟りと関係ないよね」

「さあ、どうだろう」

「おれは、非仏は悟りと関係ないという悟りを開いた」

「なるほど」

「いってる意味わかるか」

「わかるよ」

「大乗非仏説じゃないよ」

「ああ」

「秘密の仏でもないよ。仏に非ずの非仏だよ」

「わかる」

「道元が、非仏は仏祖にまでさかのぼると書いているんだよ。そんなことあると思うかい」

「いやあ、難しいなあ」

「女のことでもないよ」

「うむ」

「大事なのは、悟りより非仏なのかなあ」

「人それぞれだろう」

「鎌倉武士団の秘密を、八百年後の二十一世紀の日本で書いてもいいと思うかい」

「難しいなあ」

「おれにいわせればね、非仏を知らない日本史なんてありえないんだよ」

「きみの解釈だろう」

「ずばり、いっていいかい」

「待て。責任は持てないぞ」

「鎌倉武士団は、戦場を夢と呼んでいた」

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