第27話 全知全能の道具神

 縄文時代の日本で、神が作られた。

 人造の神である。

 神は製造されるものだ。

 その神は鉱物からなり、道具神といわれた。

 神は、ヒトによって作られた全知全能の存在だ。

 神は、ロボットアームのような姿をしている。

 それは使役される神だった。

 人が使うことによって機能する神だった。

 縄文時代の日本人は、全知全能の神を所有した。


 道具神は、縄文時代の人々がみんなで作った。

 道具神のメンテと燃料補給は縄文人が行った。

 そして、道具神により、あまりにも幸せな世界を作った。

 縄文人は幸せすぎて、笑いつづけた。

 恐ろしいほど美味しい食事。恐ろしいほどきれいな衣服。恐ろしいほど住みやすい住宅。

 縄文の土地は、目を離せないほど壮観になった。

 みすぼらしいのは、ヒトだけだった。

 世界で縄文人だけが醜い。

「ヒトを作り変えるべきか否か。」

 縄文人は相談したが、決まらなかった。


 そのまま大暴れした縄文人たちは、勢いで戦争を起こした。

「がまんできなかった」

 張本人はそういいわけをいった。

「がまんできなかったならしょうがねえ。おれたちは最強の縄文人だからな」

 そして、戦争は加速した。

 人造の神によって縄文大戦が起こった。


 縄文大戦。

 全知全能の道具を使った戦い。

 神を使って、敵味方すべての全滅が起こり、そのまま縄文の王国は滅んだ。


 そのまま、神は壊れてしまった。

 いつの間にか動かなくなった神。

 神が動かなくなると、戦争は終わり、縄文人たちは幸せな時間が終わったことを知った。


 ――結局、全知全能の神を道具にしても、我々は滅んでしまうのか。


 神を修理する道具は封印された。

 神のメンテと燃料補給は禁じられた。

 ヒトによって作られ、ヒトを幸せにするための神だったのに、結局、ヒトは神を戦争のために使った。

 全知全能の道具を使っても、ヒトを幸せにできなかったのは、それを使った人々が愚かだったからだ。

 全知全能の力をもつ道具は、人類にはすぎた道具だったのだろうか。


 動かなくなった神は、二十一世紀まで封印された。

『決して動かすべからず』

 使えば、すべての人類を幸せにできるのに、古代の戦争を恐れて、結局使われることはなかった。

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