第20話 学問の所

 「宗教」とは、人間の力や自然の力を超えた存在。

 「哲学」とは、概念の明晰化。

 「科学」とは、事実の確認の把握。


 異端児はなかなか学校の試験で満点をとらなかった。いつも三十点をとる。

「異端児、おまえ、何点だよ」

「三十点」

 異端児が答えると、まわりは、

「おまえ、頭悪いんだな」

 といった。

 腹が立った異端児は、

「本気じゃないから。本気出せば楽勝」

 と答えた。

「次の試験で本気出せよ。勝負しようぜ」

「おう。勝負な」

 そして、次の試験で異端児は十点をとった。

「本気出して点数下がってんじゃねえよ」

 まわりが文句いったが、

「おれは本気を出す時、零点に向かう。」

 と異端児は答えた。

「うるせえ」

 まわりはいった。

「この学級の一位って誰なの」

「麒麟児だ。おまえとはちがうぞ」

「よし、次は麒麟児、勝負しようぜ」

 そして、異端児と麒麟児は勝負した。

「八十点しかとれねえ。麒麟児、おまえ何点」

「勝負だっていうんで本気出して百点とったぜ」

 麒麟児はいった。

「くそ、むかつくんで、もう次から最下位を目指す」

 異端児はいった。

 そして、次の試験。異端児は五点をとった。

「異端児が本気で最下位目指しているってよ」

「やめとけよ、異端児」

「いや、みんな聞いてくれ。わざと全問まちがえたけど、五点がつくんだ。どうやって零点をとるんだ。おれの下に確かにもっと点数の低いやつがいる」

 そこで、麒麟児がいった。

「よし、だったら、みんなで全員零点目指そうぜ」

 そして、次の試験の結果が出た。

「まいった。まちがえたはずが、十点とっちまってさ」

 異端児がいうと、麒麟児がいった。

「おれはちゃんと全問まちがえたぞ。見ろ、これが零点だ」

 うお、麒麟児のやつ、本気出せばおれより早く零点をとれるのか。異端児は衝撃を受けた。

「みんな、落ち着いて聞いてくれ。びっくりするかもしれないが。」

 麒麟児がいうと、みんなは黙った。

「なんだ、麒麟児」

「零点をとっても、最下位にならない。おれより低い順位のやつは、零点より低い点をとってる」

 みんな、ごくりとつばを飲み込んだ。

「待ってくれ。待ってくれ。麒麟児、どうやって零点をとった。おれには零点の取り方がわからない。どうやって零点をとるんだ。」

「異端児、先生は名前を書くだけで五点くれるんだ。零点をとるには、自分の名前を書いてはいけない」

「そうか。次は、名前を書かないで零点とるぜ」

「よし、がんばって最下位とろうぜ」

 そして、次の試験は、名前も答えもぜんぶまちがえて、零点をとった。

「確かにいるな。誰か、零点より低い順位をとってる。誰だ」

 そして、とうとう、みんなの前に最下位の人物が名のり出た。

「最下位はおれだ」

 風雲児だった。

「何点なんだ、風雲児」

「マイナス五点だ」

「どうやってマイナス点なんてとるんだ」

 みんなは風雲児の答案を見た。

 風雲児は、

「先生、勝負です。この問題に五点賭けます」

 といって勝負していた。それで負けてマイナス五点になってたのだ。

「マジかよ」と異端児。

「賭けに答える聞者先生もすごいな」と麒麟児。

「マイナス5点をとるために、わざと賭けに負けてるんだ。勝っちまうと五点になるからな」と風雲児。

「そこまでやるかよ、風雲児。すげえな」と異端児。


 麒麟児、異端児、風雲児の三人は、教師の聞者(もんじゃ)先生に決闘を申しこんだ。

 麒麟児は、格闘で臨み、聞者先生に一方的に勝利した。

 異端児は、料理対決を望んだ。

「おれの今までの試験勉強は、この料理対決のためにあった。」

 といって、味勝負に勝った。

 風雲児は、身長勝負をした。

「おれのが高いですよね、先生」

 そして、風雲児は勝利した。

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