無色透明

めぷ

第1話

僕の目はどうやら他の人とは違うらしい


頬杖をつきぼーっとしていると、前の席で楽しそうに会話している女子達はオレンジに、窓際で風に髪をなびかせて読書に没頭しているあの子は水色に、後ろで何やらヒソヒソと誰かの悪口を言っているアイツらは黒色に…人の輪郭を残して色が広がっていく。


僕の視界は僕自身を置去りに鮮やかになっていく、白いキャンバスに何も考えずに色を重ねると、きっとこんな感じなんだろう。


「ねぇ。」

呼び掛けられた僕は意識を慌てて戻す、顔を上げると見慣れた顔があった。

「何を見ていたの?」声の主は言った

「黒板の文字」僕は素っ気なく答える

「相変わらずクールだね」と彼女は肩を竦めて笑う。


そんな彼女を横目に「…君だけだ」と僕は心の中で呟いた

「君だけ色が見えないんだ」


一体君は何色なんだ

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