コミュ障な俺がけものの女子と仲良くなれるワケがない

みずかん

第1話 葛藤の最中だが俺は何故かサバンナにいる

高校入学してから3ヶ月経つ。だが、俺は友達がいない。



理由は、人付き合いが苦手だから。それ故か過去には。


小生の頃は転校や仲違いして友人を失い、

中学の頃には、虐められた。


高校に入って、自分を変えようと意気込んでいたものの、結局変えられなかった。

全てを諦めもう周りのことなど考えずに生きていた。

高校は諦めて、大学で頑張ればいいや。


...でも、やっぱり。


友達ほしいな・・・。






もしも、勇気があったなら。


もうちょっと、コミュ力が高ければ。




「あ、七尾ななおくん、今日漢字テストあったっけ?」


童顔でポニテの奴、どこかで見た。

ああ、同じクラスの島内梓しまうちあずさだ。

なんで俺に話しかけて来るのか。


「ああ...、その...、あるかもしれん...」


「あ...、ありがとう」


小声で言い返し、すぐにその場を立ち去った。


(何だよ・・・、何で俺なんかに・・・)




「・・・、梓、あんな陰キャに話しかけてんの?」


「ユキ、それは言い過ぎだよ。

七尾くんは少し得意じゃないだけで普通の・・・」


ショートヘアの友人である彼女は少し目を細めた。

少し、嫌悪しているような目だった。


「・・・」


それを見た瞬間、口を閉じる。

心中で強く反論できない自分を、戒めた。




「ハァー・・・」


学校からの帰り道、大きく溜息をつく。

普通に話せたら。たどたどしくではなく、スパッと話せたら。


"よぉ!"っと、気楽に声を掛けられるようになれたら。


島内とも仲良くなれたかもしれない。


会話のキャッチボールを続ける自信がない。



(こんな、自分を変えられればいいのに・・・。だけど・・・)




最寄りの駅に辿り着き、列車を待つ。

俺の学校のある町は郊外のベッドタウン。

利用客は多いが、車両前方はまだ並んでいる人はいない。


『まもなく、列車が通過します。危ないですので、黄色い線までお下がりください』


スマホでSNSを見ていた。

ここは自由だ。自分から話しかけられるし。

誰かがいいねしてくれたりすると嬉しい。まさに楽園だ。


夢中になり親指でスクロールさせていた。



・・・刹那。



俺は唐突に背中を誰かに押された。


「えっ」


左側からは電車が来ている。

つまり・・・。








(ここは何処だろう。俺は一体・・・)


ハッキリとしない意識、その最中。


七尾悠ななおゆう君ダネ」


自分の名を呼ぶ、水色の・・・。


「何だよお前・・・、タヌキかよ・・・」


「君ハ、友達ガ欲シインダヨネ」


「え...?」


「今カラデモ、ヤリ直セル」


「どういう意味だよ」


少しヤケクソ気味に答える。


「7人ノフレンズト、親友ニナッテ未来ヲ変エヨウ」


「未来を変える・・・」


言っている意味がわからない。


「君ノ、願イヲ叶エテアゲル・・・。デモ、結果ハ、努力次第ダヨ」


「うわっ...!?」












眩い光に包まれた後、ゆっくりと目を覚ました。


「・・・、ここ何処だよ」


辺りを見回すと、黄土色の大地、澄んだ青空、幹の太い木・・・。

明らかに日本じゃない。

手に持っていた携帯をつけるが、案の定圏外だ。


「ヤア」


「...ああっ!?タヌキ!?」


視界にひょっこり出てきたあのわけのわからん奴に驚かされた。


「僕ハ、ラッキービースト...。君ニハ、簡単ニ、説明ヲスルヨ」


「何だよ説明って...、ふざけんな。家に帰せ」


「コノ世界デ、夜ニナッテ眠ッタラ帰レルヨ。

君ノ世界ノ時間ヲ、少シ戻シテモラウケドネ」


「さっぱりわかんねえ...」


頭を掻きむしった。


「実際ニ経験スレバ、ワカルヨ」


「で・・・、俺何すればいいの?」


「友達ヲ作ッテモラウヨ」


「友達?こんな所に人がいるわけないでしょ」


「イルヨ。アソコ」


ラッキービーストが身体を向ける。

俺も視線をそこに合わせた。


「あれ?」


白と黒の服を着たヒトっぽい何か・・・。


「アレハ、アードウルフダヨ。

ココニハ、フレンズ、ッテ言ウ人化シタ動物ガ居ルンダ。

相手ガ動物ナラ、君モ、友達ニナレルハズダヨ」


「なんでこんなわけのわからんところで友達作んなきゃいけないんだよ。

余計なお世話だよ・・・」


「自分ヲ変エタインジャナイノカイ」


「機械みたいな喋り方するお前に何が分かるんだよ...」


「・・・ソノ気持チヲ彼女ニ伝エテミタラ?」


「え?」


「機械ミタイナ僕ニ、気持チガワカラナイナラ、生物同士ナラ、

気持チガワカルンジャナイカナ」


はぁー、と深い溜息を付く。


「んなこと言ったって、自分からなんて話しかければいいかわかんないし...」


「ソレハ、僕ニマカセテ」


ピピピッ、という電子音が鳴る。


「一体何すんだよ...」


と、呟いた瞬間、ラッキービーストは耳部分を発光させて、

俺に突進してきた。


「・・・いてッ!?」



身体に強い静電気を受けたときの衝撃が伝わった。

にしても、1日に2度も気を失うなんて・・・。人生初だ。

泣きっ面に蜂とは、まさにこのことだ。







「あー...、え、えっと、だ、大丈夫ですか?」


薄目を開けると、心配そうな顔をした、

白い髪に黒い三角の耳がある女の子...。

ラッキーが言っていたアードウルフか...。


ん?アード"ウルフ"?ウルフって、...オオカミって意味だよな?


「く、食うんじゃねえよっ!!」


「そっ...、あっ、た、食べませんよっ!?」


さて、ここで問題だ。


・・・俺はこの子と友達になれるでしょうか?

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