天下無敵の俺が、ひどく虐められてる女子中学生に転生したんだが

占梁ポン太

第1話

俺は死んだ。


超絶運動神経抜群の俺は、トラックにひかれそうになった子猫をさっそうと助けようとしたんだが、しくじってしまった。


通行中の女性の視線をちょっと意識して、路面の状態を見逃してしまったのが運の尽きだった。


道路に撒かれていた砂のせいで足が滑ってしまい、それはそれは、マンガのように見事にトラックにはねられた。


トラックのブレーキ音と全身を強く打ち砕かれる大きな音。


不思議と痛みはなかった。痛みを感じないのはやばい兆候だ。


「こりゃ、死んだなー」


スローモーションのように宙を舞いながらも、子猫を優しくしっかりと抱きしめて、そして、意識が飛んだ。


 ◇


「いたたたたた、、、」


あれ?


それほどの痛みじゃない。


意識ははっきりと戻っている。


「ごほっ。ぺっ」


俺は、口の中の砂混じりの土を吐き出した。


土だ。土が口の中に入っている。


俺が横たわっているのは、アスファルトじゃなく、土の上だ。


それになんだか人に囲まれている。


俺は、堅い靴に肩を蹴られ、仰向けに転がった。


「なんだよ! 生きてるじゃねえかよ。びっくりさせんなよ。このタコが!」


いて~~!


なんだ? この状況は。


たしか、俺はトラックにひかれたんだよな?


なんで、蹴られてるんだ?


「じゃあ、来週まで未納分の5万円きっちり払えよな!」


そんな野太い男の声に続いて、可愛らしい女の声が信じられないことを俺に告げた。


「払えないなら、学校の校庭でストリップショーだからね」


「わははは」「そりゃ見ものだ! ガハハ」


は? 俺がストリップだと!?


若い10人くらいの男女だろうか。バカ笑いをしながら立ち去っていった。


どうやら俺は一人残されたらしい。


事故で怪我をしてる人間に、普通、蹴りを入れるか?


「いたたた、、」


しかし、痛みは頭や肩、腕や足、腹部くらいで、ちゃんと立ち上がれるようだ。


いや、痛みはあるが、歩くのは問題ない。


ところで、俺はいったいどこにいる?


薄暗さに目が慣れてくると、どうやら俺は、公園の隅にいることがわかった。


顔や体についた泥や落ち葉を払っていると、俺は、妙な違和感を感じた。


ス、スカート?


いや、そもそも俺が着ているのはセーラー服だよ。


は? なんじゃこれ!?


なんかスースーするんで、スカートをめくって股間をさわってみたら、これまた超絶な違和感だった。


な、ない!


まさか、女になってる?


まさかと思いながらも、胸を揉んでみる。


おいおいおい、胸もそこそこあるじゃんか!


まじでビビってると、見たことのない女の子が近づいてきた。


なんか、やぼったい中学生くらいの女だ。


「お前、誰?」


ん?


喉の調子がおかしい。変な高い声がでた。


まじで女になってるの、俺?


「ゆりちゃん、大丈夫? ごめんね、助けられなくて」


やぼったい女が泣きながら俺に抱きついてきた。


ゆり? 俺はゆりちゃんなのか?


「いや、おい、やめろよ」


振り払おうとしても抱きついてくる。


「ごめんね、ごめんね」


「おい、やめろ!」


甲高い声だが、流石にびっくりしたようだ。


泣き顔キョトンかよ!


というかそもそも、いったいどんな状況なんだよ。


なんか知らないけど、俺は死んで、別人になってしまったようだ。


しかも、俺は女になっていて、名前はゆりちゃん。


制服を着てるから、中学生か、高校生。


さっきの状況からして、男女10人くらいのグループからいじめを受けている。


金を巻き上げられているようだし、それができなきゃストリップ、って相当悪どい連中だな。


ともかく、俺は何者なのか、ここはどこなのか。


まずは、目の前にいる、このやぼったい女からできるだけ情報を引きすしかない。


今、流行りの「転生」だか、古い映画で観たような「入れ替わり」だか知らねえが、何とかするしかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天下無敵の俺が、ひどく虐められてる女子中学生に転生したんだが 占梁ポン太 @souichimi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る