当選

高瀬拓実

第1話

「おめでとうございます。あなたは見事、当選されました。当選確率は65億分の10。これ以上の幸運はないでしょう」

暗い闇の中で、その声は前方から聞こえたような気がした。

自分がその言葉の意味を考えている間に、声の主は先を続ける。

「当選したあなたには、あなた自身のステータスを決めてもらいます」

「ステータス?」と自分は聞き返した。その言葉は声に出したものなのか、テレパシーみたいな感じに伝わったのか、自分には分からなかった。

「ええ。当選したとはそういうことなのです。本来であれば、自身の容姿、嗜好、知能などあらゆるステータスはランダムに決められます。それに嘆く者もいれば、それを武器にする者もいる。あなたは後者になれるのです」

「へえ……」

歯切れの悪い自分の反応に、少し間が空く。

「……まあ、そのような反応になるのも無理はないですね。あまり興味がないのであれば、放棄することも可能ですが?」

「……放棄は、しない」

「そうですか」

自分はぼうっとする頭で考えた。

顔の作りは、やはり整っているに越したことはない。それを言うなれば、それに見合う背丈、体躯が必要だ。アンバランスなのは、格好が悪い。

「あ、言い忘れていましたが、性別はすでに決定しております。あなたは男性です」

なんとなく、そんな気はしていた。

性別も選べるのであれば男を選んでいたと思うので、ちょうどいい。

「要望を伝えていいか?」

「ええ、なんなりと」

その声は天使のようにも、悪魔のようにも聞こえた。

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