Act.73 活火山の死闘
荒れ狂う
その行く手をたった二人の少女の身で阻みます。
まあ有り体に言ってバカなの?って感じですね。
眼前のそれは幾度途無く剛脚を振り下ろし、しなやかな竜尾を振り回し――立ち並ぶ牙が脅威である顎で私達を襲います。
そして――
「くっ!?ペネっ……またブレスが来るよ!想定はしていたけれど、速射性は無い様だ!これぐらい間隔が開けば、私達でも――」
「でもこれじゃ、全然近づけない感じ――賢者ミーシャっ!」
すでに数度目の燃え盛るブレスが宙を焼き……すかさず私達がそれを回避すると――
『いい加減しつこいですキ!ミーシャ様はやらせないって、言ってるですキーーっ!!』
『
「同じくだぜっファッキン!好き勝手暴れてんじゃねぇぜ、暴竜野郎!」
「
ブレスを吐き出すバカ竜さん目掛けて精霊術が――シェンとサラディンの放つそれが包むと、四方へブレスを撒き散らしてのた打ち回ります。
しかし致命打となるダメージを与えられず……すでにジリ貧状態の私達。
改めて――眼前に立ち塞がる脅威が、生態系の頂点である事実を突きつけて来ます。
これが精霊を強制契約させた精霊使い様であれば、それこそ精霊が消滅するのも厭わず術式を強行し——恐らくは倒す事も可能と想像出来ます。
そう……精霊の消滅を考慮さえしなければ、造作も無い事なのでしょう。
当然そんな虫酸が走る行為は真っ平ごめんだけどね。
かと言って主力が到着しない今の私は、正しく役立たずな出来損ないの賢者見習い。
今更それを嘆く事もないのですが……流石に私をやらせまいと立ち回る精霊が消耗するのは見るに堪えません。
でも——それでも私はそこへ諦めなど皆無でした。
当たり前です……この私には、出会ってから長く旅を共にした信頼に足る護衛と仲間がいるのですから。
バカ竜さんを睨め付ける私。
隣り合って私を守る様に立つペネ。
その私達がいる場所へ——ちょっとツッコミたくなる雄叫びが聞こえてきたのには……思わずギョッ!としました。
「ぬおおりゃあああああーーーーーっっ!!」
「この声はヒュレイ……って!?女の子がその雄叫びはどうかと思うけどねっ!?」
振り向く私の視界に飛び込むは、まさかのバカ竜さんへの獲物を両腕で持ち上げ爆走して来る護衛の一欠——オレンジ色のツインテが疾風と化したヒュレイカです。
そして口走る雄叫びの……何とも美しさに欠ける事か(汗)
振り向きざまに突っ込んでしまったじゃないか。
けれどその行為の意味が分からぬ訳はないのです。
それを出来るのが彼女しかいない事など、打ち合わせずとも理解の範疇——さらにその策を捻り出したのは十中八九テンパロットで間違いありません。
例え策の不手際で部隊が分断されようと……繋がる私達の意思を断つ事など叶うはずもないのです。
それこそが私達、
雄叫びのまま小高い崖めがけて駆け上がるヒュレイカの眼前……バカ竜さんの頭部近くが迫り——
同時にその声に反応したバカ竜さんが、最悪のタイミングでブレス放射態勢に移行しますが……私達を侮るこの方へ目に物を見せて上げましょう。
「今だペネっ!足元を強襲!一撃離脱で尻尾パンチの射程外へダッシュ!シェンはヒュレイカに当たらない様、術式を調整——」
「そしてサラディン……
「了解な感じね!」
『承りですキっ!』
「この後に及んで文句は言わねぇ!やってくれ、賢者ミーシャ!」
主力の足並みが揃う今こそ好機。
すでに視界の端……ヒュレイカの後方へ見えた二つの飛行物体——いえ、それは紛う事なく連絡役の浮遊が叶う二人の仲間。
しーちゃんとフレード君です。
さらに山道下より岩から岩へ飛ぶ様に迫る影と、嵐を引き連れ推参するのは——テンパロットとジーンさん。
ヒュレイカが獲物を持ち上げ、フレード君のみが
彼女も戦闘ともなれば頼り甲斐もあり……
反旗の狼煙を上げるは今。
さあ、信頼に足る仲間達——これが精霊を蔑ろにせず……精霊と手を取り合う私達の戦い方だと宣言してやろう。
これこそがアーレス帝国
精霊を労わり……精霊を敬う我らが刻む
∫∫∫∫∫∫
今……精霊を従える賢者が、生態系の頂点とされる
それは
地を割く様な尾の一撃は、大型異獣すらも絶命させ——
獲物をその目で捕らえたならば、しなやかな剛脚で瞬く間に迫り……逃げる間すらなく餌食とする。
万一
そう――そのはずであった。
だがそこで
そんな常軌を軽々吹き飛ばす善戦をして見せる。
「さあ、まずはヒュレイカの武装へサラディンを装填する!
頼れる護衛到着に術式展開準備を開始する
それに答える様にその手で持ち上げる獲物を、
「いつでもいいぜ、ファッキンっ!仲間になって間もないにも関わらず……とんだ依頼ばかりだが——それが信頼から来るものならば悪くはねぇってもんだ!」
「こっちはいっつでも良いわよっ!この暴れ竜め、食らい……やがれーーーーっっ!!」
ツインテ騎士にとっては、生まれてからのトラウマでしかなかった怪力により……反霊銀を
竜としてもそれを視界に捉えるや反射的に獣の本能が働き、良い餌が舞い込んだと裂けんばかりに開いた顎で捕食する。
中型異獣であり……ツインテ騎士の怪力を以って始めて宙を舞うそれが、一瞬で開く顎に飲み込まれた。
直後——
「ぐるっ!?ぐるおおおっっーー!?」
勢いに任せて獲物を丸呑みした荒ぶる竜は、突然己を襲った異変に悶え苦しむ。
その腹部では——
「……こりゃ上手くいったかもしれへんで!?暴竜の胎内から感じとった霊的反応が目に見えて弱まっとる!」
「うむ!相当量を溜め込んでいたのであろう——余りの量の霊銀対消滅反応で、その光すら体外で視認出来る!……攻めるなら今ぞ、お嬢っ!」
足止めに徹していた賢者少女の、頼れる精霊側古株の仲間が到着し……目視で確認出来る
「ボクの方も、戦闘態勢……バッチリなの!指示があればいつでも暴竜をブン殴れる、なの!」
「中々物騒な物言いだなフレード!だが、悪くねぇ……ならオレは支援に回るぜっ!これ相手ではさしもの装填強化した〈
先の先頭での一撃に手応えの無さを感じた
その狂犬が放つ戦況分析で前衛となる布陣——
そして——
精霊を強制的に用いる事なく——共にある精霊と手を取り合い、精霊へ慈しみを以って接し放つ少女の最強術式。
広域精霊共振装填発動が——
「前衛布陣以外は私の後方へ!装填終了と同時に、前衛を支援するんだ!屠るよ——この
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