第2話 魔窟4兄弟

 俺のうちは、紅桜楼の敷地の中にある。

リンねーの隣だ。

むふふ。

リンねーに会うまではうちの母ちゃんが世界で一番綺麗だと思っていた。

がしか~し!

リンねーは別格だからな。

次元が違い過ぎる。

でも、そこいらの妓女には負けてねえかんね。

オッバイでかいし。

これだけは、リンねーに勝ってるな。

うちの母ちゃんは、楽士っていうやつで「ショウ」って言う楽器を吹いている。

何でも、天にも届く音色を出せる楽器らしい。

「天に届くような大きな男になれっ!」

て言う意味で、オレの名がつけられたらしい。

どんだけオレに期待してるのよ。

にやけちまうじゃない。

まっ

気に入ってるけどね。

母ちゃんありがとう!

女手ひとりでオレ育ててる訳だし。

オレも愛してるぜ!

かあちゃ~ん!


なんて思いながら家路を急ぐ。


ザザザザザ


「ショウ」

「みつけた!」

「あそぼ」

「はらへった」


目の前に大男が4人現れた。

丸々と太ってオレの倍以上のでかさだ。白いシャツと毛皮のズボンを履いてる。

同じ顔、同じ服装、同じしぐさ。

いたずらっこのような目をこちらにむけておれを真ん中に集まってくる。



「どこいくだ」

「かたぐるまするか?」

「あそばないのか~」

「はらへった、」


4人同時に話しかけてくる。

見分けつかねえ~って思うだろ。

ところがつくんだなあ。


頭のコブの数が違うのよ。


ひとつこぶが「マイチ」

ふたつが「マニ」

みっつが「マサン」

そして、よっつが「マシ」

って名前らしい。

4人合わせて

「魔窟4兄弟」

って呼ばれている。

 紅桜楼の先代が、魔窟の中に捨てられてた赤ん坊を拾って育てたらしい。

こぶには魔気が溜まっていて、普通の大人より結構強いらしい。

今は、紅桜楼の用心棒をしている。

普段はオレの遊び相手をしてくれる、楽しいやつらだ。

「母ちゃんが、呼んでるらしいから急いでんだ。」


「レインやさしい」

「かたぐるまする」

「おっぱいおおきい」

「はらへった」

ひょいっと、マニが肩車してくれる。


「はしる」

「つかまる」

「びゅーーん」

「はらへった」


「ひえーーー!」

まじで速え、振り落とされないように頭のこぶをぎゅっとつかむ。


「かけっこ」

「スイッチ」

「びゅーん」

「はらへった」 

あはは、加速したよ。

マニを追いかけてみんなついてくる。

ぽっちゃりなのにこの速さ。

やっぱ、規格外でしょ。


あっという間に紅桜楼に着いた。

門の前で母ちゃんが手をふってる。

オレも両手でふりかえしたら、

地面に落っこちた。

ドンマイ。

心配そうに母ちゃんが駆け寄ってくる。

________________

【今日の用語解説】

魔気;魔法の気。この世界のものは皆持っている。人間だけでなくこの世は魔気でみちてる。生命の源のようなもの。

体内から魔気がなくなる事イコール死を意味する。

人間が魔気を使いこなすにはそれなりの修行が必要で修得したものたちは「魔気使い」「魔技使い」と呼ばれる。


魔窟:高密度の魔気を発する魔法の洞窟。ダンジョンとも呼ばれる。

この世界のエネルギー源である魔石を産出する。

魔気を吸った狂暴な魔獣が巣くっている為、一攫千金を求めて魔気使いや採掘士が挑戦している。修行の一貫として挑戦するものも多い。


魔石:魔法の石。魔気を取り込んだ鉱石。この世界の街灯(魔石灯)などに利用されており、高額で取引されている。純度の高いものは魔窟の奥ほど多い。


今日はこの辺で(  ̄▽ ̄)

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