お兄さん、刑期過ぎましたよ。
落葉。
第1話
諸君らは知らんと思われるが、私の国では16歳を迎えると立派な成人と言われるようになる。そして、成人の証として、自分のステータスを見ることができ、冒険者になることが許されるのである。
so.今日が私の、この私が生誕してあげた日である。
…清々しい、もう1度言おう。
生誕してあげた日である!
幼き頃から「お前には他とは違う類まれなる何かがあるのかも知れない」「そこらの凡人とは訳が違う」そう言われ続けていた。
しかも、私は目標に向け努力を惜しんだことがなく、肉体的にも精神的にも自分自身を磨きに磨き、磨き上げていたのだ。
そして私はいつの日かこう思うようになっていた。
冒険者になって、いずれこの世界を救ってやるのは私なのだと。
ふんっ、 魔王よ。首でも洗って待っておけ、 貴様など膝カックンだけで倒してみせるわAHAHAHAHA。
ギルドに着いた私は2000トルゴを受付嬢のメラミさんに払い、水晶玉にニヤニヤと愛想笑いをしながらステータスの初更新を行う。
「いい結果が出るといいですね」
私はゆっくりと手を伸ばし水晶玉の上にかざした。直後、水晶玉は優しい光で輝き出し、その輝きはやがて激しいものとなった。
メラミさんも目を見開いて驚いている。
これは期待できる。私はこうなるのを待っていたのだ。
やがて水晶玉の眩い光は止み、メラミさんが魔法を使い水晶玉に映っていた暗号の様なステータス表をこの国の言語である【みたらし団語】にして紙に写した。
「凄い…これは凄いです!」
メラミさんの慌てっぷりもすごい。
かく言う私も「ひゃっふっぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」と、興奮のあまり叫びそうになったが紳士らしく耐え、メラミさんの言葉を待った。
「凄いです、命中力が一般人の450倍ほどあります!」
その一言で周りの冒険者の眼が私の方へと向き、いつの間にか私を囲むように数十人の人集りが出来ていた。
ほぉんらみた事か、私は私だったのだ。私が私である限りこの世界は私なのだ。
ん?興奮しすぎて語彙威力がお亡くなりになってるって?何を言っているんだ通常運転(異常変態)だ。
「あのー、ちょっといいですか」
麗しき受付嬢が私に声をかける。
「あぁ、いいですとも。ネイル綺麗ですね。それで新しいスキルでも見つかったんですか?髪型にあってますよ」
もうどんなことが起きてもいい方に転ぶ気しかしない。好機だ。これは好機なのだ。
メラミさんがやけに可愛く見えて仕方がない。
魔王よ、今週中に倒してやろうか。いや、明日にでも討伐してやろう。そうしよう。
「命中力以外のステータスが全て2なんですけど…アーチェリーで世界目指しますか?」
………フザケヤカッテ。
しかし、まぁ圧倒的な命中力があれば遠くから攻撃して着実にレベルアップしていけば補える。なにも問題は無い。
私は完璧であり、優れに優れている人間だ。こんな所で転ぶはずがない。
自分で自分を慰めるという恥ずべき行為をしている中、唐突にメラミさんが話しかける。
「あっ、すいません間違えました!」
メラミさんの慌てているような声がする。
やる気スイッチがONになった私に生気が舞い戻った。
来た、来たか!やはりそうだった、ステータスに不備があったのだろう、そうでは無いかとずっと思っていたところだ。
なぜなら私は選ばれた人間。こんなところで躓くはずがなかった。
「力が2だったらアーチェリーの弓、引けませんね。ほんとにすいません(笑)」
WA.RA.TTE.N.JA.NE-YO
やる気スイッチが殺る気スイッチに変わったのは言うまでもない。しかし、それ以上に私のくらったダメージはあまりにも大きいものであり。この日の夜私の枕は、人生最大級であろう悔し涙&羞恥の涙でぐっしょりと濡れていた。
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