第40話 最終回
魔人と戦いを繰り広げてからの数日は、色々と忙しい日々を送っていた。
リードガルム王国に戻ったら感謝祭が行われて、色んな人からお礼を述べられたし、魔国に行って同じ様にお祝いもした。
そして俺のやって来た事が武勇伝として各地に広まったりもした。
そうそう、俺と一緒に戦った大輝くん達はその功績が認められて帝国の皇帝から三人に騎士爵が与えられた。その時に土地も与えられる事になっていたんだけれども、大輝くん達は土地はいらないと言って断り、総合ギルドに続けている。なんでも俺の様に強くなりたいって言ってるとかなんとか・・・・・・。
ん? 俺はどうしているかって? それはもちろん、いつも通りの日常を過ごしているよ。
「はいこれ。ワイバーンの討伐完了って事で良いよね?」
「はい、エルライナさんのお陰であの村の脅威が去りました!」
ちょっと前にワイバーンが村を襲っていると緊急依頼があったので、俺がその村に向かい倒して帰って来たのだ。
「相変わらずエルライナさんはスゴいですねぇ〜」
「一体だけなら余裕で倒せるけど、ワイバーンが数体いたら逃げてたよ」
「そうですか。分かっておられると思いますが、換金には時間がかかってしまいます。なのでお金の方が後日でも大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だからそんな顔しないで」
むしろしばらく遊んで暮らせるほど、お金がたくさんあるから。
「ありがとうございます。エルライナ様」
「他に用はあります?」
「ありません」
「それなら帰らせて貰うね」
「はい、本当に本日はありがとうございました!」
今日の晩御飯なにを食べようか?
そう思いながら総合ギルドを出て我が家へと向かう。
そういえば、アイツらも酷い目に遭っているんだよなぁ〜。
エルライナの言うアイツらとは別大陸に召喚された元クラスメイト達の事である。
クラス委員長である青野と仲間達が魔人の長(神のなり損ない)をエルライナが倒したと伝えた。しかもその次いでと言わんばかりに、そのエルライナが転生した倉本 春人と言う真実も伝えた。
その際に 倉本が全てを解決したのに、お前達はここでなんにもしなかった。散々馬鹿にしていたヤツが世界を救ったんだぞ! なにもしなかったお前達は情けないと思わないのかっ⁉︎ と怒鳴った。
その話を聞いた嫌がらせクイーンである猪瀬率いるクラスメイト達は、なにも答えられなかった。しかも事実を知った彼らは周りから突き刺さる様な視線を受けながら、日々を過ごさなけれいけない状況みたいだ。
自業自得・・・・・・と言ってしまったら、そこで終わりだよなぁ。今後の生活を考えると同情するよ。
その反面青野達は俺の元にやって来て、 あの時に一緒に戦えなくてすまなかったっ‼︎ と言ってパーティーメンバー全員で土下座をした。
俺自身は なにもそこまでしなくても・・・・・・。 と伝えたら、 本当ならクラスメイト全員をここに連れて来て、今までお前にして来た事を謝罪してお礼を言うのが筋だと思っているし、なによりも勇者の肩書きがあるのに魔人を一人も倒せなかった。 と言ってくれた。
今後は色んなところを見て周り、修行をしながら人助けをして行く。かぁ・・・・・・活躍しているみたいだから良いけど、無理はして欲しくないなぁ〜。
そんな事を思っていたら、自宅に着いてしまった。
「ただいまぁ〜」
そう言いながら自宅に上がる。
「エルちゃんお帰り、今日は早かったね!」
「今日も来ていたんですか、リズリナさん」
「うん! 帰って来るエルちゃんの為に、掃除とか洗濯を終わらせてあげたよ」
いつの間にかリズリナさんが自宅に勝手に上がり込んで、我が者顔でゆったりしているんだよなぁ〜。しかも最近じゃ家財道具の使い方も理解して使っているし・・・・・・まぁ知り合いだから良いけど。
「エイミーさん達は?」
「エイミーは仕事が残っているから、まだ兵舎にいるよ。ミュリーナは母親に連れらて行っちゃった」
ああ、ラミュールさん最近娘が帰って来てくれないって言っていたもんな。
「はい、これ。エルちゃんの分」
「ありがとう、リズリナさん」
リズリナさんにお礼を言いながらイスに座り、リズリナさんが入れてくれた紅茶を啜った。
・・・・・・うん、美味しい。
「ワイバーンをエルちゃんが退治しに行ったって聞いたんだけど、どうだったの?」
「うん。一体だけだったから簡単に対処出来たよ。お金の方は後日渡すって事になったよ」
「そうなんだぁ〜。でも普通一人だけでワイバーンに倒せないよ」
「まぁそうだろうね」
ワイバーン討伐の話を総合ギルドでしたら、周りにいる人達が怯えた表情をしていたしな。
「それに、あの話はどうするの?」
「あの話?」
「ほら、雑貨屋さんを立てて品物を売る話だよ」
ああ、その事か。
「やっぱり私としてはそう言った商売は向いていないと思うから、やらないよ」
まぁ冒険科家業になにかあった時には、働き口として考えるけど。
そんな事を思っていたら、リズリナさんが顔をグイッと近づけて来た。
「今、商売の事を考えてなかった?」
「・・・・・・老後になりそうな時にやるのも悪くないかなぁ〜。って考えていただけです」
なんかリズリナさんといい、俺の周りにいる人達は感が良すぎない?
「そう。なら私は従業員になろうかな?」
「じゃあ私はレジ打ちを担当ね。エイミーは仕入れの仕分けをお願い」
「なんで私まで従業員になっているのよ。でもエルライナのお店なら従業員になっても良いかも」
エイミーさんにミュリーナさん。いつの間に来たんだ?
「二人がいてくれたら頼もしいよ!」
「それでその雑貨屋はいつから始めるの?」
「来月? それとも半年? お店の場所は?」
「ちょ、待って下さいよ二人共。私はやるなんて事は言ってないんですから」
「え? 繁盛しそうじゃん。もったいないよ」
そう言って顔を近づける二人に対して、落ち着かせる様に両手を前に出した。
「いや、勿体ないとかそう言う話じゃなくて私はまだ冒険科として活動をしたいから、今はやる気がないって言ってるだけです」
「じゃあ、今からやりましょうよ」
「そうね。面白そうだしね」
「いや、面白そうでお店を始めるのは良くないと思いますよ」
「「「良いじゃん良いじゃん!」」」
良くねぇよ!
そんな他愛もない会話が今日も続く。なんだかんだ色々あったけれども、俺はこの異世界に転生して良かったと思う。
そしてこの半年後には周りの人達からの進めでお店を作る事になり、商売の方もやる事となったのだった。
冒険をやって店の切り盛りもやらなきゃいけないけど、それはそれで楽しいスローライフとも言える生活をおくる俺がそこにいたのだった。
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