第12話
報告も終えた俺は、トボトボと自宅に向かって歩いて行く。
「なんか、呆気なかったなぁ〜」
ラミュールさんの元に行くのだから、ダラダラと文句を言われるのを覚悟していた。でも実際は忙しいみたいで、俺なんかに構っていられるほど暇じゃなかったらしい。それになんだかピリピリした雰囲気も感じた。
「触らぬ神に祟りなし。今日は放っておいた方が身の為かもしれない」
そう言った後、そのまま歩いて家我が家へと辿り着いた。
「ただいま戻りましたぁ!」
あれ? 返事がない。エイミーさん達は帰って来てないのか? でも、リズリナさんが家に居た筈だから、返事しても良い気がするがぁ・・・・・・どうなってるんだ?
もしかして、リズリナさん寝てる?
そんな事を思いながらリビングへ向かうと、案の定リズリナさんがソファーの上で横になっていた。
やっぱ予想通りだったよ。まぁでも、リズリナさんに留守番を頼んだのは俺なんだから、文句を言う筋合いはないか。
そんな事を思いつつも、買って来た食材をテーブルの上に置いた。
「ムゥウウウウウウッ!!?」
ムゥ? リズリナさんは、、なにを言ってるんだ?
振り返って確認して見ると、なんとリズリナさんが拘束されているではないか! しかも口にタオルを巻かれて喋れない様にされている!
「リズリナさんっ!?」
慌てた様子を浮かべながらリズリナさんの元へと行くと、涙目で俺の顔を見つめてくる。
「なにがあったんですか、リズリナさんっ!?」
そう言いつつ、ンーッ!? ン〜〜〜ッ!!? と唸っているリズリナさんの口元に縛られているタオルを取る。
「お帰り、意外と遅かったな」
その声は!?
「ラミュールさん!? どうしてここに?」
しかもエプロン姿をして、一体どうしたんだ? てかさっき別れたばかりだよな?
「どうしたもなにも、私がお前の家に来ちゃマズいのか?」
「いや、マズくはないんですけどぉ・・・・・・」
「なら、どうしたと言うんだ?」
「なんでリズリナさんが縛られているんですかっ!?」
今更だけどさぁ。この状況なのに、なんでアンタは平然な顔しているんだよぉ!?
「ああ〜・・・・・・私が彼女を縛ったからだ!」
「やっぱアナタでしたかぁ!?」
なんとなくだけど、気づいていたよ!
「ゴメン、エルちゃん。エルちゃんが戻って来るちょっと前にラミュールさんが家に入りたいって言うからね。今は居ないから出直して来て欲しいって伝えたんだ」
「あ、そうなの? お家に別に上げても良かったのに」
「いや、だってぇ〜。ラミュールさんが家に上がったら、私がリビングでゴロゴロ出来ないからぁ・・・・・・」
リズリナさんのワガママで家に入れなかっただけか。
「ムカッとしたから、押さえつけて縛り上げただけだ」
当然の対応だろ? って言いたそうな顔で言うなよっ!?
「とにかく、リズリナさんの拘束を解きますからね」
「ああ、構わない。私は夕食の支度をするから、そこら辺でくつろいでくれ。そこにある食材を使っても良いか?」
「あ、はい。構いませんよ」
・・・・・・って! アンタは夕飯の支度をしていたんかいっ!?
「エルちゃぁ〜ん、早くこれ解いてよぉ〜!」
「あ、ゴメンなさい! ちょっと待ってて」
そう返事をし、紐を解こうとするが、結び目が堅くて取れない。
どんだけ頑丈に縛ったんだよ。あの人は?
このままじゃ埒が明かないので、ナイフを取り出して紐を切って解いてあげた。
「はぁ〜、助かったぁ〜〜〜・・・・・・まさか縛られるとは思っても見なかったよぉ〜!」
「本当にそうですよね」
しかもリズリナさんの手脚を縛った張本人は、平然とした顔で料理をしているしな。てか、あの人はなにを作っているんだろう?
「どうしたんだ、そんな顔をして?」
「いえ、ラミュールさんって料理出来たんですね」
「失敬な。私だって子持ちだから、料理の一つや二つする」
まぁ確かにそうだよね。
「し、失礼いたしました」
その言葉を聞くと、台所に身体を向けて料理を再開させる。
「エルちゃぁ〜ん。良いのぉ?」
「なにがですか?」
「ラミュールさんに料理を任せても」
「なんか、不安でもあるんですか?」
「ラミュールさんの料理って、エルちゃんと違って想像出来ないから不安だよぉ〜」
不安?
そう思いながら、台所に立つラミュールさんを見つめる。
「子持ちだったんだから、大丈夫だと思うよ」
「それは本人談だから分からないかもよ。もしかしたら、料理が超下手かもし・・・・・・」
ビュゥンッ!? カッ!?
俺とリズリナさんの間をなにかが通り過ぎた。なので、そちらの方に顔を向けて見たら、包丁が壁に突き刺さっていた。
「「ヒィッ!?」」
「おい貴様ら。私の作る料理がなんだって?」
いつの間にか真後ろにいたラミュールさんに驚いてしまい、身を縮こまらせてしまう。
「な、なななっ! なんでもありませんっ!!」
「そうです! ラミュールさんの料理が楽しみです!」
おいリズリナさん! 俺の背中に隠れながら言うなよっ!! てか、これって完全とばっちりを受けてるよね、俺!!
「・・・・・・そうか、楽しみにしていてくれ」
ラミュールさんはそう言うと台所の方へと戻って行ったが、一瞬だけこっちを睨みつけたので、ゾッとしてしまった。
「・・・・・・リズリナさん?」
「あ、うん・・・・・・ゴメン」
涙目で申しわけなさそうな顔で俺の顔を見つめるリズリナさんに対して、呆れた顔で見つめてしまった。
「まぁ良いです。リビングでゆっくりしましょうか」
「うん」
リズリナさんは不安なのか、テーブル席に着いても服の裾を掴んだまま離さない。
「リズリナさん……良い加減手を離してください」
「あ、うん。分かった」
そう返事をすると手を離してくれた。
「ラミュールさんって、恐いんだね」
「うん・・・・・・なるべく言う事を聞いてよう」
あの人地獄耳だから、そう言っておかないと包丁が飛んでくるって。
「そうだった。今度からは気をつけるよぉ」
「うん。そうしてね」
でないと俺がとばっちりを受けるからさ。
「ところで、エイミーさん達はまだ帰って来てないの?」
「うん。まだ帰って来てないよ」
「そうなんだぁ」
俺の方は買い物がすくなかったからなぁ。早いのは当然か。
「もしかしたら、ミュリーナの買い物に時間が掛かってるのかもね」
「そんなに時間が掛かるんですか?」
「うん。さっきも言ったけど、ミュリーナは寄り道が多いから、結構時間が掛かるんだよ」
ホント、一緒に買い物を行かなくて良かった。
「アイツはまた他人を困らせてるのか」
「あ、ラミュールさん。料理の方はどうしたんですか?」
「今は煮込んでいるから放っておいてれば完成する。ところでミュリーナのヤツの買い物が長いと言うのは、本当か?」
「あ、はい・・・・・・本当です。ミュリーナとお買い物に行くと、行く予定だったお店の他に、他のお店に入ってウィンドショッピングを楽しんだりしてます」
その話を聞いた瞬間、ラミュールさんは肩をガックリ落とした。
「前々からその癖を直せと言っていたんだが、直らなかったか」
「いや別にリズリナさん達に迷惑を掛けているわけじゃないんですから、気にする事はないと思いますよ」
ましてや俺達に買って欲しい。って強請ってくるわけじゃないしねぇ。
「まぁ、迷惑はしていないですよ。ただ、お店によっては冷やかしに来てるのか? って言いたそうな顔で見つめられる時があるから」
「ああ〜・・・・・・」
迷惑な客のお仲間って思われても、仕方ないよね。
「ハァ〜・・・・・・私の方でしっかり言いつけるから、安心してくれ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
怯えながら言うリズリナさんを見つめながら、心の中でミュリーナさんに合掌して冥福を祈るのであった。
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