第23話

ところ変わってバルデック公爵家の邸宅の中。俺は大輝くん達と共に総合ギルド職員の話を聞く。


「・・・・・・と、エルライナさんの思惑通り、闇取り引きをしていた貴族達が闇ギルドから離れて行きます」


「うんうん、それは良かった。これで資金源をまた一つ潰せたね」


「はい。彼らにとって麻薬畑に続く大きな痛手になることは、間違いなさそうです。我々も他の仕事があるのでこの辺で」


「またなにかあったら言ってください!」


部屋を出て行く総合ギルド職員を見送ると、美羽さ達に向き直る。


「さて、しばらく様子見をした後に、どう行動するか考えましょうか」


「エルライナって、ホントスゴい事をやってのけるよねぇ〜」


「そ、そうですかねぇ〜」


「うん。私がエルライナの立場だったら、 どうしよう? と言って戸惑っていたかもしれないわ」


まぁ、それが普通の反応だよな。


そう思っていたら、部屋の中にバルデック家専属の執事が入って来た。


「失礼致します、エルライナ様。アナタ様にお客様が来ています」


「私に? 誰でしょうか?」


「魔国からオウカ様とそのお連れの方々です」


「えっ!?」


オウカさんがここにやって来ているだって!


「分かりました。ここに通してください」


執事は俺に頭を下げると、部屋を出て行った。


「エルライナさん、オウカ様がここに来ているって・・・・・・」


「ん・・・・・・もしかしたら別人かも」


その可能性は否定出来ないけど、俺のレーダーではなにも感知しないので、恐らく本物のオウカさん達が訪ねて来たんだと思う。

しかし、なんで魔国からこの国にやって来たんだ?


なんて思っていたら、ドアが開きオウカさん達が入って来た。


「お久しぶりぃ〜! あら、大輝くん達もここに来ていたのねぇ〜」


「お久しぶりです。オウカさん、ユウゼンさん、それにトウガさん」


ユウゼンさん達と共にやってくるとは・・・・・・なにかあったのか?


「別大陸の勇者達の事は聞いておる。大変じゃったのぉ」


「はい。まさか魔人が関与していたとは思いもしませんでした」


「しかもキミは魔人二人も相手にしたんでしょう?」


「二人って言うよりも・・・・・・一人ずつ?」


あの液体女の後にボスっぽいのと戦ったって感じだからな。しかも部下を殺すなんて非道な人間だからな・・・・・・って、そうだ!


「オウカさんを含めて、みんな報告しておかないといけない事があったんだ!」


「報告しておかないといけない事?」


「はい。実は魔人を束ねている者の事なんですが。この事は他言無用でお願い出来ますか? そうじゃ無いと話す事が出来ません」


俺がそう聞くと、全員がお互いの顔を見つめた後に俺の方を見つめる。


「分かったわ。誰にも話さない事を約束するわ」


「エルライナさんがそう言うのだから、本当に重要な事なんですよね」


「うん。この事を話したら、民間人どころか宗教までも混乱しちゃうからね」


「ん・・・・・・宗教まで巻き込むの?」


伊織ちゃんの問いに頷いて答えた。


「しつこい様だけど、今から話す事は本当に他言無用ね」


俺がそう言うと、みんな頷いて答えてくれた。


「もう聞いていると思うけど、その国で戦った男は、魔人達を束ねるボスだった。そして、私はその人の顔を見た」


「どんな顔をしていたの?」


「私の転生をしてくれたの神様と顔そっくりだった」


「「「「「「ッ!?」」」」」」


俺の話に驚いた様子を見せる大輝くん達。


「ちょっと待ってエルライナ! じゃあ私達は神様と戦っているってわけなの?」


「そうでもないですよ」


「そうでもないって、どう言う事なの?」


「私も気になったから、直接本人に聞いてみたんです。そしたらアッサリと答えてくれましたよ」


そう。自分がこの世界の創世主である事や、俺を使者として生きからせた意味も教えてくれた。


「創世主様はなんと仰ったのですか?」


「うん、この世界が出来て間もない頃に、色んな場所に行って土地の整備をしなくちゃいけなかった。でも、一人じゃ大変だったから自分の分身を作って

向かわせ、仕事をさせていたみたいです」


「女神様達もいるのに?」


「ああ、女神様は火や水と専門分野に特化した人が多いから、世界を作る専門の女神様は中々いないみたい」


メルティナさんも、光の専門分野だしね。


「それはさておき、ようやく世界が完成して人が入ってからの時、事件が起きたみたいです」


「事件? それは一体どんな事件?」


「分身達に戻ってくる様に伝えたんだけれども、なぜか一人だけいなかった。

それでどこか迷子になっているのか、手分けして探してみたのだけれども、結局見つからないまま時間だけが過ぎて行ってしまったので、どこかで死んでしまったんだろう。って思って探すのを止めてしまったらしいんです。

でも、それが大きな間違いだったと後から気がついた」


俺がそう言うと、みんなの顔が引きつった。


「種族が増えて文明が発達して行くにつれて、おかしな集団がチョコチョコと出てくる様になったらしい」


「変な集団? それってまさかぁ!?」


「そう、それこそ私達の敵である魔人達の事」


俺がそう言うと、みんな信じられない様な顔をしていた。


「ん・・・・・・つまりこの世にいる魔人達は、その分身が作ったって事?」


「答えを先に言えばそうなりますね。どうやらその分身は創世主が見えないところで、自分の手駒を作っていたみたいです。

それで話の続きなんですが、最初の頃は人と同じぐらいの力だったから対処出来たんだけど、年を重ねる内に強くなって行き、最終的には現状まで強くなったらしいんだ」


「どうして魔人達は強くなったんですか?」


「良い質問だね大輝くん。その分身は年を重ねるごとに強くなったと言っても、とてもゆっくりしたペースで強くなったみたい」


とても執念深いと言うか、なんと言うか・・・・・・。


「そう聞くと、その分身は一体なんの為にこんな事をしているのか気になりますね」


「自分が創世主に成り代わろうとしているんじゃないのかぁ?」


「その線が妥当でしょう」


「いや、どうやら違うみたい」


そう言った後に紅茶を飲むと、一言ハッキリと伝える。


「答えは、人に対しての復讐をする為に、こんな事をしているらしいんだ」


「「「「「「人に対して復讐?」」」」」」


みんな言っている意味が分からない。って顔をしている中、俺はさらに説明を続ける。


「うん、人がこの世界に住む様になってから分身は人に興味を持つようになった。

それから人間と共に生きる様になった。だけど・・・・・・」


「だけど?」


「彼は分身と言えど神様。力の一部を人に与えていたみたいで人に力を与えていた。そしてその力にあやかろうとする者が日に日に多くなり、あやかろうとしていた人達同士が争い合いを始めてしまった。

更にはその分身の暗殺計画まで出て来てしまい、彼自身殺されかけたらしい」


その話を聞いたみんなは、戸惑った顔をしていた。


「その経験から分身は、 人って本当は醜い生き物なんだ。 と言って見放してしまった。

そして分身は自分の忠実な者。魔人を自らの手で作り上げたみたいです」


「・・・・・・なによそれ」


一番最初に口を開いた美羽が、テーブルを叩いて立ち上がった。


「自分勝手にも程があるじゃない!」


「どうしたんだよ美羽? 自分勝手って?」


「だってそうでしょ! 自分から人に近づいた挙げ句。勝手に失望して人を殺し回ろうって考えるなんて! これを自分勝手って言わないで、なんて言った良いのよ!」


「ん・・・・・・美羽の意見に同意」


戸惑う大輝くんを余所に、二人は俺に近づいて来た。


「私は全力で戦うわ! エルライナ!」


「ん・・・・・・私も」


「あのぉ〜・・・・・・俺も?」


うん、そこはハッキリと宣言しようね。大輝くん。


「そうだね。彼の理由はどうあれ、止めなきゃいけないよね。さてと、闇ギルドの本部がどんな様子なのか、観てみようか」


「「「「「「えっ!?」」」」」」


「あのぉ〜、エルライナさん。闇ギルドの様子を観るって?」


「ん? ああ! 実は夜中に本部にこっそり侵入して、隠しカメラとか盗聴器をつけたんですよ」


「「「「「「ええええええええええええっっっ!!?」」」」」」


俺の話にみんな驚いていたのであった。

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