第19話
リードガルム王国の城の一室で、バルデック夫妻と騎士団長のグエルが対面しして話をしている。
「・・・・・・と、言うことが先ほどありました。本当にエルライナの読み通りでした」
「そう・・・・・・ご苦労。下がっていいぞグエル。国王の方にも手紙と共に伝えてくれ」
「ははっ!」
私がそう言うと、グエルは部屋を出て行った。その様子を見た私は深くため息は吐いたのであった。
「全く、末恐ろしい我が娘だよ」
「ホントそうなのさ。まさか自分を囮りに使うなんて・・・・・・相手は思っても見なかったはずさ」
アイーニャはそう言って私に近づいて来る。
「アイーニャ。お前はどう思う?」
「なにがさ?」
「貧困層に奪ったお金をばら撒いて、敵をおびき寄せる様な作戦を思いついてもやるか?」
「アタシだったら思いついてもやらないね。あんな大金あったら、自分の好きに使うさ。他の連中も同じ事を思うはずさ」
確かにそうだろうな。
「でも結果的に、闇ギルドの実態が明らかになったのは間違いないのさ」
「そうだなぁ」
私はまとめられた資料に目を落とす。
「闇ギルドと繋がりがある貴族が浮き彫りになったし、違法魔具や薬物の売買が明るみになった」
「それに王都に構えている闇ギルドの場所まで分かったし、密輸ルートも判明したのさ。ヤツらは行動が早いから、さっさとメンバーをかき集めてガサ入れした方が良いのさ」
「ああ、グエルに渡した手紙にもそう書いているから、すぐに動いてくれるだろう」
最も相手が我々より先に行動していたら意味がないが、ヤツらはエルライナの事を心の底から憎んでいるから、すぐに尻尾を出すと私は思っている。
「そう言えば、エルライナはどうしている?」
「朝から出かけているのさ」
「で、出かけているぅ? 一体どこにだ?」
「詳しくは聞いてないけど、 敵の資金源の一つを潰しに行く。 って、言ってのさ」
敵の資金源の一つを潰しに行く。 かぁ。
「彼女の行動を止めるべきだったんじゃないのか?」
「エルライナなら大丈夫なのさ」
「どうしてそう言えるんだ?」
「あの子は勝てない戦いをしない子だからなのさ」
・・・・・・いや、答えになってないんだが。
「ま、アンタは首を長くして待っていれば良いって言いたいのさ」
「そうなのか?」
「そうなのさ」
「アイーニャの言う事を聞いて、エルライナが帰って来るのを大人しく待つとしようか」
そう言ってから紅茶に口を付けたのであった。しかし我々はこの時、とんでもない報告がくるとは思ってもみていなかった。
同時刻。草原の林の中。エルライナは地面に伏せていた。
「本当について来て大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ」
「こう見えて対人戦もやって来たので、平気ですから」
対人戦もやって来たと言う事は・・・・・・そういう事だよね。
「分かった。今回はスピード勝負ってところがあるから、ノロノロやらないようにね」
「分かりました!」
大輝くん達は戦闘モードに入ったというべきか、目の色が変わり、武器を構えた。
「先ずはデカイ一発をお見舞いして挨拶しますよ!」
そう言って背中に担いでいた ダネル M32ハンマー(40mmグレネード使用) を取り出し、
「うわぁ〜・・・・・・」
「エルライナの銃は相変わらず過激ねぇ」
「美羽・・・・・・アレはグレネードランチャーっていう武器・・・・・・見て分かる通り、爆発する弾を発射させる」
「そうなの?」
うん。ただね、榴弾とかフレシェットとかスラグ弾とか弾に種類があるからね。爆発するだけじゃないんだよ、グレネードランチャーは。
「今の音なんだぁ?」
「おい見ろ! 櫓が吹き飛ばされているぞっ!!」
「うわっ! どういう事だ。ドラゴンでも襲って来たのか?」
どうやら敵が上手い具合に混乱しているし、なによりも一箇所に集まっている。これはチャンスだ!
素早く敵にM32ハンマーの銃口を向け、トリガーを三回引いて榴弾を発射させた。
相手はその音に反応してこっちに顔を向けたのだが時既に遅く、榴弾が地面に当たって爆発した瞬間、まるでトラックにでも跳ね飛ばされたかの様に宙を舞い地面に叩きつけられた。
「次いでにここも吹き飛ばしておこうか」
近くに建てられている小屋のドアに狙いを定め、最後の一発を発射させてドアをぶち壊した。
「よし! 残存勢力の掃討をしよう!」
「「オ、オオー・・・・・・」」
「オ〜!」
なんで伊織ちゃん以外の二人は引いているんだ?
そんな事を思った後、麻薬畑を仕切っている小屋へと向かおうとするのだが、敵も奇襲を掛けられたと知ったのか、壊したドアから一斉に出て来た。
「大輝くん達は正面の敵をお願い」
「お願いって・・・・・・エルライナさんはどうするんですか?」
「向こうで隠れている敵を殲滅してくるよ」
そう伝えるとM32ハンマーを武器庫へ仕舞い、ACE32を構えて林の方へ向買おうとしたが、隠れている連中は奇襲をする気満々で待機していたのが分かったので、向かうの止めて当てずっぽうで林に向かってフルオートで撃ち続けた。
「ウギャアアアアアアッ!?」
「ヤ、ヤベェよっ! バレてる!!」
「この距離届くのかよっ!?」
「お、落ち着け! と、とにかく応戦するぞ!」
「無茶言うなよ! 弓であの距離届かねぇよ!」
おうおう、奇襲するのに声を出して良いのか? てか、初めから位置バレしているんだけどね。
そんな事を思いながら撃ち続けていたら、謎の叫び声が聴こえて来た。
「イテェッ!!? あ、当たった! 脚に当たっちまったぁ!」
「なっ!? おい大丈夫か? しっかりしろぉ!!」
どうやら誰かの脚を撃ち抜いたみたいだ。
「・・・・・・クソッ! 撤退すんぞ!」
「撤退って、そんな事をしたら上の連中にドヤされるぞ!」
「でも、あの女を倒せるのかよ?」
「それは・・・・・・ッ!?」
あ、手応えあり。
「一人殺られたぞっ!!」
「やっぱこのままじゃマズい! 逃げるぞ!」
「逃げるって、どこに?」
「分かんねぇけど、ここで死ぬよりはマシだろう! 」
そんなやり取りが聞こえて来た後、俺から離れて行く様子がレーダーに映っていた。
どうやら弾幕に怖気づいて逃げたみたいだな。さて、大輝くん達に加勢しようか。
念の為にマガジンを新しいのに変えてから、大輝くん達が交戦している小屋へと向かうと案の定敵とまだ戦っていた。
「ハァッ!?」
「ぐわっ!?」
大輝くんが敵を盾ごと剣でぶっ飛ばして倒し、美羽さんは目にも止まらぬ速さの突きを繰り出してもう一人の敵を倒した。
「おお〜!」
やっぱりダンジョンでドーゼムと戦った時よりも強くなっているなぁ。
「ヒイイイイイイイイイイイイッ!!?」
「止めてくれぇええええええっ!!?」
「魔物がぁ! 魔物の大群がくるううううううううううううっ!!?」
ん? 魔物の大群? そんなのどこにいるんだ?
疑問に思いながら声の聞こえて来た方向に顔を向けると、敵が混乱しているのか、青い顔をさせながら泣いて叫んでいて、中には剣を持って振り回してなにかと戦っていた。
「【パンデミック】・・・・・・【パンデミック】。さらに【パンデミック】」
どうやら伊織ちゃんは混乱の魔法を重複して敵にかけている様だ。
「おっ、お前は俺が殺したはずなのに・・・・・・なんで生きているんだっ!?」
誰の事?
と最初は思っていたが、多分目の前にいた人が、虚空に指をさして怯えた表情させながら、尻餅ついて後退りしている。
「くるなぁ・・・・・・くるなくるなくるなぁああああああああああああっ!!?」
恐怖が頂点に達したのか、そのまま気絶してしまった。
「ウヘヘ・・・・・・もう俺達はダメだぁ〜。ここで死ぬんだぁ〜〜〜・・・・・・ドラゴンなんかに勝てる訳がないんだぁ〜〜〜・・・・・・・・・・・」
「アババババババッ!!?」
うわぁ〜、こっちの人達は虚な目でいるよ。
「ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいっ!! もう足を洗うんで許して下さいっ!! 死にたくないですっ!!」
もう伊織ちゃんの周りは、
「もう良い加減止めてあげて! この人達が可哀想だよ!」
「まだまだ続ける・・・・・・【パンデミック】」
「「「ウギャアアアアアアアアアアアアッ!!?」」」
その後、伊織ちゃんは全員気絶するまで恐怖の魔法をかけ続けたのだった。そして俺は理解した、伊織ちゃん恐ろしい子だって。
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