第12話
その後もドローン越しに麻薬畑を監視し続けたのだが、小屋の近くに馬車置いてからは動きがない。
もしかしたら、また次の日の夜に積んで王都に入る予定なのかもしれない
「これはこれで、なんとかしないといけない問題だね」
麻薬密売はどの国でも犯罪で行為に当たるし、総合ギルドも厳しく取り締まっている。
「明日グエルさんと話すから、その時に話せば良いや」
今日の調査はここまでにして、続きは明日にしよう。
一応、マップに目印を付けてからドローンを戻し、スクリーンを閉じると背伸びをした後に寝巻きに着替えて横になり、眠りについた。
アラーム音が耳に入って来たので止める為に身体を動かそうとしたのだが、違和感を感じた。
「んん・・・・・・ん?」
あれ? 身体が動かない。それになんか暖かいぞ。
寝ぼけた状態でそんな事を思いながら、動かせる右腕で色んなところを触って確認をすると・・・・・・。
「アンッ」
アンッ? 声が近い様なぁ〜・・・・・・ん? んんん?
目を開いて見ると、なんとそこにはアリーファさんが俺の身体に抱きついていたのだ!
「あらぁ? こんな早くに起きるなんて、早起きなのですね」
「なんでアナタがここで寝ているんですか?」
しかも下着が見えてますよぉ〜!? って、シースルーを着ているから仕方ないだけどさぁ!
そんな事を思っていたら、なぜか俺の事を抱き締めて来た。
「日課のトレーニングをしようと考えているのでしたら、行かせませんよ」
えっ!? バレてるぅ!!
「私なら大丈夫ですよ」
「今までは大丈夫だっただけですよ。今度は手練れが卑怯な手を使ってアナタを殺しにくる可能性がありますよ」
そうかもしれないけど・・・・・・。
「まぁ、邸宅内でのトレーニングでしたら許可します。くれぐれも門の外へ出ないでくださいね」
「あ、はい」
逆らったりしたら、とんでもない事になりそうな気がするので素直に従い、邸宅の庭でトレーニングに勤しむ。
「むむ?」
気配を感じたので周囲を見渡していると向かいの建物の陰に立っていた人と目が合い、向こうも気がついた様子を見せた瞬間に隠れてしまった。
自分がいかにも怪しい人だ。って言っている様なもんじゃないか。
「全く、詰めが甘い」
・・・・・・いや、もしかしたら下っ端の方が俺のところに来たのかもしれない。
そう考えながらもトレーニングに励んでいると、アイーニャ様が俺のところにやって来た。
「朝からせいが出るわねぇ〜」
「トレーニングは続けているからそこ結果が出せるんですよ」
「まぁ、話は分かるんだけどさぁ。今はやらない方が良いんじゃないのさ」
「そう思いますよね? 実はこうしている普通に生活をしている事が重要なんですよ」
「どういう事なのさ?」
そう聞いてくるアイーニャ様に身体を向けて話を始める。
「こうして普通の生活をしていれば、、監視に来た人や命を狙いに来た人をあぶり出せますよ」
「本当にそうかい?」
「疑い深いですねぇ。現にさっき見張りっぽい人がそこにいましたよ」
いた場所に指をさしながら言うと、アイーニャ様は驚いた表情をさせながら顔を向けた。
「それが本当なら大変な事なんだけどさ。てか、なんでアンタは冷静でいられるのさ?」
「フッフッフッ、実はもう手を打っているから冷静でいられるんです!」
アイーニャ様の目の前でドローンを取り出し、飛ばして見せるとビックリした表情を見せた。
「それは?」
「これはドローンと言って空から偵察をする事が出来るんですよ。しかも追尾もしてくれる優れもので、さっき飛ばして追って貰っています!」
「これが追っても意味がないんじゃ・・・・・・」
怪訝そうに言うアイーニャ様に、映像映し出して観せる。
「この中央にいるのがさっき物陰から見ていた人です」
「あ、ああ・・・・・・そうなの。周りの雰囲気からして、北地区の貧困層が住んでいるところにいる感じね」
「貧困層が住んでいるって、アイーニャ様はこの男がいる場所を知っているんですか?」
「王都に住んでいるのだから、大体の場所は把握しているさ。しかし、意外だねぇ〜」
「なにが意外なんですか?」
「いや、王都には三ヶ所貧困層の住む場所があって、一つ目が南の隅。ここは闇市がよく開かれる場所で、度々国に検挙されているのさ。
二つ目は東地区の中央から外れた場所。こちらは教会の周辺に出来ていて、教会が生活の手助けをしているから貧困層でも安心して暮らせる。
で、最後に北地区の隅にある場所は、訳ありの冒険者の端くれや犯罪者とかの荒くれ者達が住む場所だから、普通の人は住まないのさ」
「なるほど」
じゃあ、この男が北地区にいるって事は・・・・・・。
「もしかしてこの男は、昨日の様に仲間を集めて私を襲いにくるかもしれないって事ですか?」
「そういう事なのさ」
「恐らくその男は昨日の結果を聞いていると思うから、どうくるのか予測が出来ないぞ」
ふむふむ、なんらかの対策をしてくる可能性があるって事・・・・・・ってぇ!?
「ラミュールさん、いつの間にいたんですかぁ!?」
「ついさっき来たばかりだ」
いやいや、絶対ウソでしょ。
「それよりも、お前に話をしたい事があるんだが家に上がっても良いか?」
「ここはバルデック様の邸宅なので、私じゃなくアイーニャ様に許可を取ってください」
そう言ったら、無表情のままアイーニャ様に顔を向ける。
「上がってもいいか?」
「OKなのさ。お茶の準備もするのさ。あ、ネルソンも呼んだ方が良いかい?」
「呼んで貰った方が良いな」
「そう、それじゃあアタシについてくるのさ」
アイーニャ様の後に続く様にして邸宅内へ入り、応接室へと入る。
「お茶とお菓子。それとネルソンを呼んで来てなのさ」
「かしこまりました」
ラミュールさんはメイドさんが出て行ったのを確認すると、懐から書類を出して見せてくる。
「それは?」
「これはお前の殺害について書かれた依頼書だ」
これが依頼書・・・・・・って。
「これ、どうやって手に入れたんですか?」
「詳しい内容は話せないが、闇ギルドはこの依頼書を大量に作ってばら撒いているらしい」
「ばら撒いている? どういう事ですか?」
しかも依頼の内容は 殺した者には闇ギルドが金貨五百枚を報酬として渡す。 としか書かれていないので、内容に引っかかりを感じる。
「貧困地区に貼り紙されていたり、この紙を手渡しする者がいるらしくてな。調査員もすんなり受け取れていたから驚いていた」
「そうですかぁ。この依頼書を読んでいると、なんか内容が薄っぺらくて本当に支払われるのか疑問に思いますね」
「そうだ。そこだ」
「え?」
そこって、どこ?
「もしかしたら闇ギルドの連中は、お前を殺した報酬を払うつもりが微塵もないかもしれない」
「報酬を払わないぃ?」
そう言ったら、コンコンッとドアを叩く音がした後にアイーニャ様がバルデック公爵様とメイドを引き連れてやって来た。
「失礼するよ」
「会長、お疲れ様です」
「盛り上がっているところすまないが、私にもその書類を見せてくれないか?」
「あ、はい」
そう返事をすると、依頼書をバルデック公爵様に渡した。
「・・・・・・なるほど。これはまたあのパターンかな?」
「恐らくそうでしょう」
「あのパターン?」
もしかして前例があるのか?
「ああ、エルライナは知らなかったね。こうやって依頼書をばら撒いた後に、依頼を達成した者を呼び出して殺すパターンを」
「依頼を達成したのに殺すぅ?」
信じられない顔をしていると、アイーニャ様が口を開いた。
「二年ぐらい前に同じ手口で闇ギルドは貴族の暗殺依頼を出したんのさ。もう話を聞いて分かる通り、依頼を達成した本人は殺されて証拠隠滅を図ったのさ」
「そしてその後に同じ依頼を受けていた者達に反感を買ってしまい、信用をガタ落ちさせてしまった話ですね」
「そうさアリーファ。でも、痛い目を見てこのやり方はダメだと実感しているはずの闇ギルドが、どうしてこんなやり方をするのかアタシは疑問に思ってるのさ」
その場にいた全員は、 確かにそうだよなぁ。 と思うのであった。
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