第11話

グエルさんの後をついて行くと、バルデック公爵家に着いたのだが・・・・・・。


「お待ちしておりました、エルライナ様! なぁ兄弟!」


「ええ、お話は騎士団の方からお伺いしておりますよ! なぁ兄弟!」


うわ出たっ!? バルデック家の名物門番! ってそんな事よりも。


「お伺いしております。って、グエルさんいつの間に連絡を取ったんですか?」


「俺がお前と話をする前に、部下に指示を出して連絡を取っていたんだ」


流石隊長と言うべきか、的確な指示を部下に出すね。


「いやいや、相変わらずスゴい人ですね。なぁ兄弟!」


「一人で五人もの敵を倒すとは、我々でも難しい事ですよ。なぁ兄弟!」


「一応言っておきますが、その五人は弱かったですよ」


ぶっちゃけ鍵を開けるのにすら時間が掛かっていたし、なによりも考えなしに突っ込んで来たから実力が知れているし、それにわざとだけど敵を一人逃しているしね。


そんな事を思っていたら二人はお互いの顔を見つめた後に俺の方を向いて話かけてくる。


「「そんな事はありませんよ。エルライナ様。とにかくお屋敷の方へお入りください」」


相変わらず息がピッタリ合いますね。


「そうですね。お言葉に甘えてお屋敷に上がらせて頂きます。グエルさん、今日はありがとうございました!」


「ああ、なにか分かったら連絡をするから、お前は大人しくしていろよ」


「向こうから来た場合は?」


「全力で対処してくれ。後は極力殺さない様にな」


どうやら手に入る情報が多いほど良い感じかな。


「分かりましたグエルさん!」


「それじゃあな」


「お休みなさいグエルさん!」


グエルさんを見送った後、門番二人について行く様にして屋敷の中へと入って行く。


「おお、ようやく来たかエルライナ」


「ご無沙汰しております。バルデック公爵様」


「その様子だと話はもう把握してみたいだね。部屋は用意してあるから、今日はそこで寝なさい」


「はい、分かりました」


とりあえずバルデック公爵に従い、用意してくれた部屋へと向かう。


「お前が中を見たら、きっと驚くだろうな」


「どうしてですか?」


「ドアを開けて見れば分かるさ」


疑問に思いつつもドアノブに手をかけて扉を開いて見たら、ベッドの上でモゾモゾと動くなにかが目に飛び込んで来た。


「あら、もう来たのですか?」


「アナタは一体なにをしているんですか?」


公爵家お抱えのメイドさんが頭を上げてこっちを見つめて来たので、 これが見せたかったのもなの? とバルデック公爵様を見つめたら、否定する様に首を横にブンブン振った。


「あんまりにも遅いから、眠りそうになりましたよ。ふぁ〜あ」


「イヤイヤイヤイヤ! 何を呑気に欠伸をしているんですか! そこ私が寝るベッドですよ、分かっています?」


「分かっていますよ。分かった上で添い寝をしてあげようと思って待っていたのですよ。

さぁエルライナ様、ここ横になってください。子守唄を歌ってあげますよ」


メイドさんは優しげな瞳でそう言いながら、ポンポンとベッドを叩いた。


「私はそんなに子供じゃありませんよ!」


「あらそう、残念ね。じゃあ添い寝だけはしてあげますよ」


「いや、添い寝も要りませんよ」


つーかこの人の寝巻きが透けて見えて際どいんですけどぉ!?


「アリーファ、エルライナが困っているじゃないか。ベッドから退いてあげなさい」


視線を逸らしつつ言うバルデック公爵様に対して、アリーファさんは頬を膨らませながらバルデック公爵様を見つめる。


「旦那様はエルライナ様の事を見てもなんとも思わないのですか?」


「どうって、可愛いとか?」


「そうですよ。こんな可愛い子が旦那様の養子になって嬉しいとか、もっと可愛い服を着させてあげたいとか思わないのですか?」


「イヤイヤ、私がそう思ったら終わりだろう」


うん、下手したら超えてはいけない一線を超えちゃった問題に成りかねないもんね。


「もう、エルライナ様の寝巻きは私の方でご用意しますので、部屋でお待ちしていてください」


彼女はそう言うとそのまま部屋を出て行ったけど、そのシースルーのままで出て行って良いの? 怒られない?


「あ〜・・・・・・とにかく、ここがキミの寝室だからゆっくり休むと良いよ。

私は用があるからこれでね」


「有り難く使わせて頂きます」


バルデック公爵様が部屋から出て行ったのを確認すると、ベッドの上に座り先ほど飛ばしたドローンの様子を見る為にスクリーンを出した。


ドローンがいる場所は、ここから南の方にある・・・・・・酒屋? 倉庫ならまだしも何で酒屋なんて映しているんだ?


「もしかして、この中にアイツは逃げ込んだのか?」


そんな事を思っていたら、中から四人の人達が出て来て話し合いを始めたのであった。


どうしよう。なにをしているのか気になるけど、近づいたらバレそうだなぁ。関係ないと思うけど一応顔は押さえておこう。


その後も四人の様子を観ていたら、突然酒屋の中から男が飛び出して来て道端に倒れ込んで来たのだ。その様子に外にいた四人も驚いた表情を浮かべる。


「コイツ、さっきの!」


そう先ほどわざと逃した男が出て来たのだが、俺が逃した時よりも傷が増えている上に、止めて欲しいと言わんばかりに酒屋に向かって手を伸ばしていた。


「黒で間違いないが、あの人になにがあったんだ?」


そう言った直後、嫌味ったらしい顔をした男が出て来て男の目の前に立った。


「見るからに悪人だね」


許しを乞う男性の髪を掴み、中に引きずり込んで行く。その様子を見ていた四人の方は怯えた表情をさせていた。


多分、仕事の失敗を責められているって感じだな。もしかしたら彼はもう・・・・・・考えない方が身の為だな。


「とにかくアジトの方は分かったけど、どうしようか?」


俺が アジトの場所を知ってます。なんて言っても信じてくれなそうだし、なによりも今動いたらバルデック公爵様達に怒られそうだな。


「先ずは説得からって、んん?」


裏手の方で馬車になにかを積み込んでいる人達が観えたので、そちらの方にカメラを向けて観てみる。


酒屋のはずなのに麻袋? 樽や瓶ケースなんかを下ろすのならまだしも、なんで麻袋なんか・・・・・・まさか!?


「ここ、ヤバイ薬の積み下ろしもやっているのか?」


そう考えると辻褄が合う。だって酒屋が小麦やコーヒー豆の積み下ろしなんてしないだろうし、そもそも酒屋が馬車にたくさんの麻袋を積む事すらおかしい。


「これは報告案件だね」


しかし疑問がある。もしもあれがヤバイ薬だったら、彼らはどういうルートで王都内に仕入れているのだろうか?


そんな事を思っていたら、積荷を下ろし終えたのか馬車を動かし始めた。最初は倉庫とかに入れるのかな? と思っていたのだが、そのまま走り出したのだった。


「追って行けば密輸ルートが分かるかもしれない」


そう思ったので、ドローンに馬車を追いかけさせた。


しかしなんだ。こんな短時間で色んな事が分かってしまうなんて、運が良いのか、それとも単にこの世界の情報機密性が低いのか・・・・・・考えても意味がないな。


とりあえず馬車の様子を見ていると、南とは反対側の北の城壁門から出て行った。


「はい、兵士が賄賂を受け取っている可能性も有りだね」


賄賂を受け取っている可能性については、グエルさんに調べて貰うとするか。


そんな事を思いつつ走っている馬車を観ていると小道の方へ外れて行き、雑木林の中へと消えて行った。でも心配ご無用。ドローンにはサーモングラフィーやらなんかがついているから、突然姿が消えない限り見失う事がないのだ。


そこに入って行くって事は、その先になにかを隠しているんだな。


そんな事を思っていたら、急に開けた場所に出たのだ。


「ビンゴ!」


そう、そこには畑が広がっていたのだが、野菜とは思えない植物が植えられていたのだった。

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