第29話
その後、ネネちゃんと共に夕食を終えたので今は寝る準備をしているのだけれども、ネネちゃんの視線が気になる。
「ネネちゃん、どうして私の身体を見るの?」
下着姿をガン見しているのでとっても着替え難い。
「いえいえ、私の事を気にせず着替えてください!」
「そ、そう?」
ネネちゃんの言葉を信じてブラのホックを取ると、ゴクリッと喉を鳴らしていた。
「・・・・・・ネネちゃん?」
「ふえっ!? なな、なんでしょうか?」
「ネネちゃんも寝巻きに着替えた方がいいんじゃない?」
そう言ったら、慌てふためきながら服を脱ぎ出した。胸はサラシを巻いているのかぁ。
「でもお姉様、よく私の寝巻きを持ってましたね」
「即席で作った物だから気にしないでちょうだい」
そう、夕食前にネネちゃん用の寝巻きを作っていて、ネネちゃんはそれを嬉しそうな顔で着た。
「どこかキツイとか動き難いとかない?」
「全然平気です! むしろ着心地が良いです!」
う〜ん、個人的には袖部分が手のひらを覆っているから、ちょっと切った方が良いんじゃないかなぁ? って思うんだけど、とっても気に入っている姿を見ると言えないなぁ。
そう思いつつ自分の寝巻きを着る。
「さてと、今日はもう用はないから寝ようかな?」
「はい、そうですね!」
こうしてダブルベッドに入り横になるのだが、ネネちゃんが俺に抱きついて来たのだ。
「えっとぉ、ネネちゃん?」
「お姉様のお胸フカフカですねぇ〜・・・・・・」
これはなに言っても無駄そうだなぁ。
そう思いながらネネちゃんの頭をなでてあげるのだった。
「・・・・・・羨ましい」
おい、監視。声が聞こえてんぞ!
そう思いつつ眠りに着くのであった。
『ヤッホー! 無事着いたみたいだねぇ!』
「えっ!? 神様ぁ!?」
どうして神様が俺の目の前にいるんだ?
周りを見渡すと真っ白な空間にいたので、自分が異世界に転生する前に来た場所だと気づいた。
「え、ウソぉ!? まさか俺、また死んだの?」
『死んでないよぉ。キミの精神をこっちに持って来たんだぁ!』
つまり幽体離脱状態って事ね。
『いやぁ、キミと二人だけで話すチャンスが中々なくてね。今回はこういう方法を取らせて貰ったよ』
「まぁ側にネネちゃんがいましたからね」
本当に連絡を取ろうにも取れない状態だったな。
「で、今回はなんの用で呼んだんですか?」
『キミが食べてたボムコーンを作って欲しい!』
「・・・・・・はぁ?」
そんな事の為にここに呼んだのかコイツは? と言いたそうな顔で見つめていると、慌てた様子で手を振り出した。
『ウソウソ、ジョークだよ。ジョーク! キミに勇者達の事を話しておこうと思ったから、ここに呼んだんだよ!』
「そう言う事ならそう言ってくださいよ」
『アハッ、アハハハ・・・・・・』
そう笑っている神様の隣にメルティナさんがやって来た。
『私からご説明しますね』
「あ、はい」
『今アナタがいる国の勇者達は過半数が、余り良くない状態なのはアナタ自身ご理解していますよね?』
「はい」
俺に斬りかかって来たり、いちゃもんをつけて来たり、挙げ句の果てには商会を潰しているのだから目も当てられない。
『我々もこのままではいけないと感じたので、彼らをどうするか考えているのです』
『候補は三つ。一つ目は彼らに与えた力を無理矢理剥奪させる。二つ目は元の世界に帰せないから、なにもない別の世界へと飛ばす。そして最後は、僕達の使者を使って亡き者にするか。検討しているんだよねぇ』
「そうなんですか」
無理矢理剥奪させるのは、無難な選択だと思う。別世界へ飛ばす選択については流石に可哀想に感じるなぁ。最後の選択は、個人的に良い選択だと思えない。
しかし、どの結果でも自分達が引き起こした結果なのだから、俺に口出しする事は出来ない。
「で、その三つの選択で どれが一番良い? って聞きたいのですか?」
『ん〜ん。違うよ』
「違う?」
俺がそう言うと神様はニッコリとした顔で語り出した。
『うん、キミが明日ぁ。って言うか時間的に今日の午後かな? 彼らと会ったら、これ以上周りに迷惑をかけるのなら、さっき説明した三つの内の一つの方法を取らせて貰うよ。って伝えといて』
「そうなると私の正体がバレる可能性があるんじゃないんですか?」
『大丈夫大丈夫! 聞かれた時にメルティナスちゃんの使いって言えば、大体把握するんじゃないかな?』
う〜ん、それはちょっと無理がある気がする。
「仕方がない。その場で対処する事にしますよ」
もう行く事は確定してしまっているのだから、今更キャンセルしたところで向こうに失礼なだけだし、なによりもリードガルム王国に迷惑がかかる可能性が大きい。
『そう、もしダメだったら僕達の使者がなんとかしてあげるから、好きな様にやっていいよ』
『神様、私達だってサポート出来る限度があるのですから、彼女に出来る範囲を説明してあげた方が・・・・・・』
『大丈夫大丈夫! エルライナちゃんなら勇者達を殺人までしないと信じているから』
いや、流石にそこまではしねぇよ。
『おっと、そろそろ時間が迫って来たね。それじゃあ、頼んだよぉ〜』
「え!? ちょっ、まっt!?」
俺が言い切る前に目の前が急に真っ暗になり、アラーム音が耳に入って来る。
「ん、ん〜〜〜・・・・・・」
とりあえずモニターに映るOFFボタンを押すと、上体を起こしてから欠伸をする。
全く神様は、自己中と言うか人任せと言うか。
「まぁ一々介入している方が私達人間の為にならないかぁ。とりあえずネネちゃんをぉ・・・・・・あれ?」
俺に抱きついていたネネちゃんがどこにもいない!? もしかして先に起きて自主練でもしているのか?
「起きてマルコさんに確認を取るか」
ベッドから出て洗顔とブラッシングを済ませてスポーツウェアに着替えると、ドアの鍵をかけてからマルコさんがいる筈の一階のカウンターへと行く。
「マルコさん。いませんか?」
「エルライナ殿、どうしやした?」
「ネネちゃんを見かけませんでしたか?」
「ネネ殿でやしたら、お弁当屋へ行きやした。恐らく午前中には帰りやすので、ご安心してくりゃさい」
お弁当屋で情報交換でもしているのか? まぁいいや。
「私は軽くトレーニングをしてくるのでネネちゃんが先に帰ってくる様でしたら、鍵を渡して置いてください」
「わかりやしたぁ。でも気をつけてくださいよ。勇者達があんさんの事を狙っている可能性がありやすから」
「うん、わかった。注意しながらトレーニングに励みます」
そうやり取りしつつ鍵をマルコさんに渡し、お店の外へと出るとその場でストレッチを始めるのだが、店の屋根から ゴクリッ と言う様な喉を鳴らす音が聞こえて来たので、屋根の上を睨むと影の者達がそそくさと隠れた。
「キミ達二人、後で注意するからね! 覚えておくように!」
そう言ってからランニングを始めて、宿屋の前に戻って来たらストレッチをした後に格闘訓練をした。
「ん〜・・・・・・今日も絶好調!」
後はお風呂に入って、国王と会う準備をしようか。
「・・・・・・お姉様」
「あ、ネネちゃん! お帰り!」
彼女は俺に近づくと、頭のてっぺんから足元まで見て来た。
「お姉様、その様な格好をして、一体なにをしていたのですか?」
「トレーニングをしていたんだよ」
「トレーニングですかぁ!? こんな時に?」
「いやいやいや。こんな時だからこそ、こうやってトレーニングを欠かさずにするんだよ」
俺の場合はこうやって軽くでも良いからトレーニングをすればポジティグシギングに繋がるので、忙しい時や前世のテスト期間でも欠かさずに毎朝やっていた。
「病欠以外どんな時でも訓練は欠かさずにやるから、私は強くいられるんだよ」
強くなるには日々の鍛錬を忘れない事だからな。
「はぁ、そうなのですか?」
「まぁ私の場合はって話だから、そんなに気にしなくても良いよ。宿の中に戻ったら、汗ばんだ身体を拭くの手伝って貰えるかな?」
婆さんの宿とは違って、お風呂がないから不便に感じる。
「もちろん喜んでぇ!」
ネネちゃんがとてつもなく喜んでいるのは、俺の気のせいかなぁ?
そんな事を思いつつ宿の中へと入って行くのであった。
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