第30話

「・・・・・・これはどういう状態なんですか?」


陛下との男の付き合いから帰って来た大輝くんが呆けた顔をさせながら言って来た。

なぜかって、俺がストレージから出したビキニを着た上にネコ耳カチューシャをつけていて、伊織ちゃんが可愛いパンダをモチーフにしたつなぎを着ているが、俺に合うように設計されているので、着ている伊織ちゃんはダボダボだ。

美羽さんに至っては俺が持っていたバニー服を着ていたが、胸元を隠している。この状態に至っては説明不要だよね。


「み、見ないでよ。大輝ぃ〜!」


「ゴ、ゴメン美羽!」


顔を赤くして目を逸らす大輝くんの姿を、オウカさんは面白そうな顔をさせながら、 フフッ っと笑った。


「ムゥ・・・・・・服の取り替えをご所望する」


「ダメよイオリさん。それはそれで良いから感じに萌えるから」


「大輝・・・・・・・どう?」


ダボダボのつなぎを着たまま、大輝くんの目の前に行き、両手を広げて見せつける。


「い、伊織も可愛いよ」


大輝くんは伊織ちゃんの頭をなでながら言うが、伊織ちゃんは不満そうにしている。


「脈を感じてる様子がない・・・・・・やはり美羽のような服をご所望する」


「仕方ないわねぇ〜、じゃあこっちのスク水を」


「ちょっと待ってください!」


大輝くんがオウカさんのところまで行き、静止させる。


「この状況を説明してくれませんか? なにが起こっているのか把握出来ないんですけど!」


「この状況をカンタンに説明するとね。罰ゲームつきのUNOでオウカさんに負け続けた結果なんだよ」


「罰ゲームですか?」


俺が軽率な判断をした結果が、こんな事になっちまうなんて思いもしなかった。しかもちょっと恥ずかしい気もする。


「フッフッフッ、さぁ〜て次はどんな罰ゲーム受けて貰おうかしらぁ。次私が勝ったらぁ・・・・・・」


「「「「勝ったら?」」」」


「大輝くんの頬っぺたにチューをして貰おうかしらぁ〜」


「「「「ッ!?」」」」


おいおい、俺が男にキスをしろと? 無茶言わないでくれよ。元ノーマル男子の俺にとっては、キツいって。


「もちろん、拒否権はないわよ」


彼女はそう言い終えると、UNOのカードをシャッフルして俺達に配っていく。


「ん・・・・・・やる」


「おっ、やる気ね」


「負けっぱなしは・・・・・・性に合わない」


配られたカード手に取るが、なんだろう。伊織ちゃんに勝気が全くなさそうなのは、俺の気のせいだろうか?


「そ、そうね。このまま負け続けているのは、悔しいからぁ」


美羽さんもそう言いながらカードを手に取るが、なぜか頬を赤く染めてニヤけている。


「はい、エルライナさんもカードを取った取ったぁ!」


「ええ〜っ!? 下りれないんですかぁ?」


生理的に無理な要求をしているから、下りれるんなら下りたい。


「ダメよ。拒否権はないわ」


「拒否権がないんですか」


これは何を言ってもダメそうだな。と思ったので諦めて配られたカードを手に持ち確認する。


「さぁ、始めるわよ!」


緑の5から始まった。緑を出し続けている最中に、俺が黄色に変えたが伊織ちゃんがワイルドを使い赤に変えて攻め続けた。しかし、オウカさんが強かった。

リバースや、ワイルド・ドロー4やスキップを巧みに使い、俺達を翻弄して見事に勝利を収めた。


「なんでオウカさんに勝てないのぉ〜」


「そりゃ前世でUNOの国内大会に出た事の私に、素人が勝てる訳がないでしょ」


「なっ!?」


今二つの意味で聞き捨てならない言葉を聞いたぞ!


「オウカさん、今言っちゃいけない事を!」


「あ、大丈夫大丈夫。シキオリ様から勇者様達に、話して良いって許可貰っているから」


「あ、そうなんですか。なら安心しました」


この場で記憶がなくなるのは、洒落にならないからな。


「えっ! 前世? 国内大会。一体どういう事」


「ああ、やっぱり・・・・・・・そうだったんだぁ」


狼狽している大輝くんに対して伊織ちゃんは納得している。美羽さんに対しては驚いてもない。


「えっ!? 伊織、どういう事だ?」


「大輝の鈍チン・・・・・・オウカさんはエルライナさんと同じ・・・・・・転生者なの」


「なんだって!?」


大輝くんは驚いた顔をさせながら、オウカさんを見つめる。


「まぁ私も、脱衣所でアイスの袋を難なく開けたのを見て、この人もしかして。と思っていたわ。で、UNOを違和感なくやっているところで確信したのよ」


「あらまぁそうだったの。でもこの事は内緒にしててね。ダイキくん達もね」


「分かりました。内緒にしています」


オウカさんは、ウンウン。と頷いた。


「さてさて、罰ゲームの方を決めなくちゃねいけないわよね」


「「「「ッ!?」」」」


そうだった。オウカさんは先ほどの試合勝ったんだった。となると、罰ゲームはやっぱり・・・・・・あれか?


「チュー、大輝に・・・・・・チュー」


美羽さんは頬を赤く染めて身体をくねらせながら、ボソボソと連呼する。そんなにチューしたいんなら、しろよ焦ったいなぁ!


「チュー・・・・・・」


伊織ちゃんは唇を尖らせながら言う。多分大輝くんの頬っぺたにチューする練習しているんだと思う。その姿に、ちょっと可愛いと思ってしまった。


「罰ゲームはぁ・・・・・・」


ゴクリッ と生唾を飲む音が大輝くん達から聞こえて来た。


「アナタ達4人は同室に入って貰うわ」


「「「「同室?」」」」


俺達が 一体どういう事だ? てか、大輝くんにチューをするの話しはどこへ行った?


俺がそう思っているとオウカさんは パンッパンッ と拍手をしたら、またオウカさんのアイスクリームを嬉しそうに味わっていたお姉さんがふすまを開き、部屋の中へ入って来た。


「お呼びですかオウカ様」


「この子達を同室にしてあげて」


「承知しました。それでは」


彼女はそう言い残すと、出て行ってしまった。


「イヤイヤイヤイヤイヤ! さすがに問題がありませんか?」


「え、どういう問題かしら?」


「ん・・・・・・大輝にチューは?」


それもあるが、俺が言いたいのは違う!


「どういうって、付き合ってもいない男女が一つの部屋に入るのは、問題があるんじゃないんですか?」


「え、もしかしてエルライナさん。ダイキくんがオオカミさんになって襲ってくるのか心配しているの?」


「いや、そういう心配はしていません」


チャラ男やDQNそうな感じがないし。


「大丈夫・・・・・・大輝はヘタレ・・・・・・自らオオカミさんになって襲う事が出来ない・・・・・・童貞兼草食系男子」


「グハッ!?」


伊織ちゃん、もしかしてフォローをしているつもりなの? 大輝くん今の言葉に傷ついて、畳みに膝をついたよ。


「だそうなので、そこら辺の心配しなくても良さそうよ」


「そ、そうですかぁ」


そんな事よりも大輝くんの心配をしようよ。


「童貞勇者大輝・・・・・・ここにてゲームオーバー。敗因・・・・・・自分が童貞だと、現実を突きつけられる」


「グハッ!?」


やめてあげて! 大輝くんのHPはゼロだよ! ええいこうなったら!


「大輝くん、そう落ち込む事はないんだよ。キミだってまだ若いんだからチャンスはあるよ」


「エ、エルライナさん」


下を向いていた大輝くんの顔が上がった。が、しかし!


「え、そう? 私は十七歳の時にミハルを産んだから、急がないと魔法使いや、賢者になるかもよ」


「ガハッ!?」


オウカさんのせいで、今度は畳の上に寝転がって撃沈しまった。


「オウカさん!」


なんて事をしてくれるんだ、この人は!


「トドメを刺した・・・・・・酷い」


原因を作ったのは伊織ちゃんだよっ!?


「もう大輝、そんな事を気にしてても仕方ないでしょ」


「そ、そんな事って」


あ~あ、美羽さんがDT童貞を蔑ろにするようなヒドい言葉を使うから、大揮くん泣きそうになってるよ。仕方ない、フォローしないと。


「美羽さん、もうそれ以上言わない方が良いですよ」


「童貞って言うの、そんなに悪い事なのかしら?」


「い、言う事は悪くないのですが、そのぉ・・・・・・本人はこんな感じに傷ついているので、もう言わない方が良いと思います。あ!」


美羽さんから俺は目を逸らした。


「どうしたの、エルライナさん?」


「美羽さん、その・・・・・・胸元を隠してください」


美羽さんのささやかな胸元がチラチラ見えるから、ちょっと困る。


「え? ああ」


美羽さんはそう言うと、胸元を手で押さえて隠した。


「エルライナさん男性みたいな反応をしますね」


あ、そっか! 今の俺は女性なんだから、 胸元が見えてるよ。 って伝えるだけで済む話だったんじゃないか。


「まぁ、うん。前世では男性だったから」


「そうなんですか。職業はもしかして自衛隊だったんですか?」


「自衛隊じゃないよ。軍事的な事を師匠から学んで、フランス外人部隊にでも入ろうとしていた人だよ。その前に亡くなっちゃったけどね」


決してウソは言っていない。説明に抜けがあるだけだ。


「そうなんですか。それはお気の毒に」


「でもまぁ、今の生活にも満足しているから、気にする事はないよ。それと大輝くん、今さら顔を上げても遅いからね」


大輝くんは バレた! と言わんばかりに身体をビクッとさせた。


「ん・・・・・・大輝のエッチ」


「違う! 違うんだ! 決して美羽のぉ、そのぉ・・・・・・」


言い訳を考えているのか、目が泳いでいる。見られかけた美羽さんは軽蔑の目でその姿を見ていたのは、言うまでもない。


「ハイハイ、晩ご飯の用意も出来ているみたいだから、使用人をここに呼ぶわよ」


「そうしてください」


埒が明かないので、そうして貰おう。


「美羽、違うんだ! 決してやましい気持ちがあった訳じゃないんだ!」


「イヤ、近寄らないで」


「お願いだ美羽! 俺を信じてくれぇぇぇええええええっ!!」


夕ご飯がここにくるまで、大輝くんは美羽さんに弁解をしていた。


「・・・・・・ムゥ。チューはお預けにしよう」


伊織ちゃんに至っては、不機嫌な顔をさせながら自分の胸に手を当てていた。てか、チューしたいんなら、すれば良いじゃん。

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