第31話
俺は大輝くん達と一緒に夕ご飯を食べたのだが、なぜか気まずい雰囲気が漂っていた。その後に寝室に案内されたのはいいけど・・・・・・。
「なんで布団が密着しているんですか?」
そう、四つの布団が川の字に並んでいるのだが、なぜか隙間なく並べられていたのだ。その事を案内してくれた彼女に指摘すると、ニッコリとさせながら答えだした。
「この方が、夜伽に良いかと」
「そんな事やりません! 明日もオウカさんの警護をしなくちゃいけないんですよ!」
それに俺は大輝くんの事を好きじゃないっつうの!
「そうですか。残ねn・・・・・・コホンッ!? 失礼しました。皆さまの仲がよろしかったので勘違いしてしましました」
今残念って言おうとしてなかった。この人は?
「お気に召さない様でしたら、エルライナ様達で布団を動かして頂けないでしょうか?」
「まぁ、それぐらいでしたら構いませんよ」
布団を引きずって動かせば良いし。
「では、明日のお仕事よろしくお願いしますが、もしオウカ様になにかがあったのでしたら・・・・・・」
「あったのでした、ッ!?」
危険を感じ取ったので反射的に身体を仰け反らせてから距離を取ると、案内をしてくれた女性はクナイを突き出したまま話しかけて来た。
「私達がアナタ様の命を
彼女はクナイを袖の中へしまうと、部屋から出て行く。俺はその背中を見つめながら、ゴクリッと生唾を飲み込んだ。
避けられたのに、顔色一つ変えなかった。つまり避けられるのを想定していたって事だよな。てか私達って事は、あの人に仲間か部下がいるのか?
「エルライナさん大丈夫?」
「私は大丈夫だよ。向こうも私の喉にクナイを突きつけるだったぽいからね」
殺意はなくても行動で反応してしまう体質してくれた師匠に感謝します。
「そうですか」
ホッとした表情を見せる美羽さんの隣で、大輝くんが目を輝かせていた。
「なぁなぁ、今の人ってもしかして、くノ一なのか?」
「ん・・・・・・大輝の言う通りだと思う」
「だよな伊織、本物の忍者だ! 異世界でやっと見れた! あの人忍者服を持っているのかな?」
「大輝もしかして・・・・・・◯ロ本かエ◯ゲー知識で言ってる?」
「そっち系じゃない! マンガの知識で言ってる!」
人の心配をしろよお前ら。いや、俺から大丈夫って言ったから心配する必要がないと判断したのか。
「ウソ・・・・・・大輝の部屋の勉強机の引き出しの中に・・・・・・くノ一モノのエッチい本があっ、モガッ!?」
慌てて伊織ちゃんの口を手で塞ぐ大輝くん。だがもう遅い。俺と美羽さんは伊織ちゃんがなにを言おうとしたのか、理解してしまったのだ。
「まぁそのね。男の子なんだから、その手の本を持ってても仕方ないと思うよ」
俺もそういったのは、データの方で保存していましたから。
「ち、違ッ!?」
「性欲の管理はだけは、ちゃんとしないとダメだからね」
「本当に違いますからっ!!」
俺がそう言うと、大輝くんは涙目になりながら抱きついて来た。てか、着替えてないから肌に当たるんですけど。普通にセクハラしてますよ、この子は。
「話を聞いてください! 誤解なんです! 俺はその・・・・・・」
「その本に出てくる人、お胸大きかった・・・・・・やっぱり、大輝はお胸が大きい女性が好み?」
伊織ちゃんの言葉を聞いた大輝くんは、一瞬で石の様に固まってしまった。
「フゥ〜ン・・・・・・」
つまり俺みたいな、お胸の大きい人が好みと?
「その気持ちはぁ〜・・・・・・まぁ分からなくはないけど」
ちょっと気が引けるな。後、美羽さんが自分のお胸に手を当てて落ち込んでいるよ。
「私のお胸揉みたい?」
胸を寄せて大輝くんに近づいてみたら、興味深々な様でガン見して来た。
「・・・・・・・・・・・・いいえ、大丈夫です」
今の長い間はなに?
「ムゥ〜・・・・・・大輝、エルライナから離れる」
「そ、そうよ! セクハラしてんじゃないわよ!」
「まだしてねぇよ!」
え、まだしてねぇよ? って事はやるつもりだったのか?
「大輝ぃ〜!!」
「ちがっ、今のは間違えたんだ! エルライナさんにセクハラするつもりはこれっぽっちもないから、その手を離してくれぇ!!」
鬼の形相をした美羽さんに胸ぐらを掴まれている大輝くんを余所に、俺は並べられた布団に目をやる。
「まぁ大輝くんの好みは置いといて、このお布団どうします?」
「どうするって・・・・・・どう?」
「誰がどのお布団で寝るんですか。って話だよ伊織ちゃん」
「ん・・・・・・私セクハラ大輝の隣で」
そんなに大輝くんの隣が良いのか、この子は。
「じゃあ反対側は美羽さんで良いのかな?」
「ん・・・・・・それで良いと思う」
「じゃあ隅っこの布団を貰うね」
自分から見て左側の布団を掴み、引きずって離す。
「ああっ!」
「どうしたの大輝くん?」
もしかして隅っこの方が良かったのか? てか、その状況を早くなんとかしないとダメじゃないの?
「いや、そのぉ・・・・・・なんでもないです。はい」
目を泳がせながら言う挙動不審な彼の姿を見せる。
「もしかして、布団をくっつけたまま一緒に寝て、ハーレム気分を味わいたかったのかなぁ?」
ふざけ半分で彼に聞いてみたら、なにも答えずサッと目を逸らしたのだ。
「・・・・・・マジで考えてたの?」
「そ、そんな事考えてませんよ」
「ウソだ!」
「う、ウソじゃないです! 俺を信じてください!」
今更そう言ったって、妻に不倫がバレた夫が、 不倫なんてしてない! 夫婦だろ、俺を信じてくれよ! って言っているぐらい信じられないっつうの!
「・・・・・・大輝」
伊織ちゃんはそう言うと、左から2番目の布団を掴み引き離す。そして、俺の布団とくっつける。
「伊織、どういうつもりだ?」
「伊織の好感度は・・・・・・今ので駄々下がりした」
「グハッ!? 違うんだ! 決してハーレム願望があった訳じゃなく、てかそもそもハーレムが良いって、俺言ってない!」
おやおや、ここまで来て弁解をしますか。これは大人気ないですねぇ。ってあれ? いつも間にか美羽さんも布団を引きずっているぞ。
「美羽、お前もなにをしてるんだ?」
「大輝ゴメン、私も引いたわ」
「お前もか!」
どうやら美羽さんも、伊織ちゃんと同じ事思ったらしい。
「私は伊織なら認めるけど、他の人まで入るのはちょっと気が引ける」
「そうなんだ。まぁ私は大輝くんは好みじゃないから安心して良いよ」
「あ、そうなんですか」
ホッとした表情を見せる美羽さんに対して、大輝くんはショックを受けた様な顔をしていた。
「えっとぉ、ちなみに聞きましすが、どういった方が好みなんですか?」
「えっとぉ、そうですねぇ〜。同世代というよりも、年上で落ち着きがある方が好みです」
逆に年下だと愛でて可愛がってしまうタイプなので、恋愛の対象外になってしまう。一応断っておくが、女性の方の好みで答えているからね。
「そうなんですかぁ! なら、大輝は対象外ですね」
「ん・・・・・・大輝は子供っぽいところがあって、落ち着きがなくて歳上じゃない・・・・・・だからエルライナの対象外」
うん、男って時点で俺は無理だ。
「俺ってそうなのか?」
「そうよ。戦いになれば熱くなって突っ込むし、誰かが困っていたら助けようとするし」
誰かを助けようとする気持ちを持つのは悪くはないけれども、戦いで熱くなって突っ込むのはダメだと思う。
「ん・・・・・・それに毎晩決め台詞を考えるほどの厨二病を持っている」
伊織ちゃんがそう言った瞬間、大輝くんの身体が石の様に固まった。
「厨二病?」
「毎晩決め台詞を考えている?」
「ん・・・・・・その台詞は、 ここで俺にあったのがディスティニー! とか・・・・・・俺とお前、どっちが上か下か決めようじゃないかっ! とか、後はぁ・・・・・・俺の勝利だ! ジャスティス☆ とか」
あら、そんな事を考えてたんだ。でも気持ちは分かるよ! 決め台詞あった方がカッコイイからね!
「うわああああああああああああっ!!?」
伊織ちゃん、と言うよりも自分の決め台詞を聞かされた大輝くんは、恥ずかしさの余りその場で丸まってしまった。
「他にも・・・・・・お前の運命を決めるのは、俺だ! とか」
「ぎゃああああああああああああっ!!?」
伊織ちゃんはその後も、大輝くんが考えた決め台詞を言い続けてオーバーキルをするのであった。
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