第13話

「ムゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・」


リマちゃんはお風呂を上がってからずっと俺の上から下まで隅々まで見ていて、この調子でいる。


「えっとぉ〜・・・・・・リマちゃん、どうしたのかな?」


「・・・・・・えいっ!」


そう掛け声をかけると、いきなり俺に抱きついてグイグイ持ち上げようとしていた。


「えっとぉ・・・・・・一応聞くけど、リマちゃんは一体なにをしているのかな?」


もしかしらこの子は、自分が俺の事を持ち上げられるのか試したいのかな?


「おねえちゃんがいろんなひとが もてる。っていってたから、リマももってみようとしたの」


違った!? しかもモテるって意味を持ち上げると間違えているよ、この子は!!


「あ、あのねリマちゃん。モテるって意味はね。みんなから愛される。って意味・・・・・・なん、だよ?」


よく使ってる言葉だけれども、ちゃんと意味事態を理解していないから断言出来ない。あとで調べておこう。


「みんなからあいされる! リマもおねえちゃんが だいすきだからモテモテェ〜!!」


そう言いながら抱きついて頭を擦りつけてくる姿を、目で堪能しながらバスタオルで上半身を拭いていく。


「っと、拭きづらいから離れてちょうだい」


「はぁ〜い!!」


リマちゃんが元気に返事をしてから離れてくれるのを見た俺は、 なんて良い子なんだろぉ〜〜〜!! と胸をキュンキュンさせていた。


「おねえちゃん?」


「ハッ!?」


いけない! 早く身体を拭いて、服を着させてあげないと風邪を引いてしまう!


正気を取り戻した俺はリマちゃんの身体を手早く拭いて、服を着させる。そして、イスに座らせて髪を乾かしてあげる。


「・・・・・・これでよし。リマちゃん。出来たよ」


「うん! ありがとう、おねえちゃん!」


リマちゃんは笑顔でそう言うので、俺の心が和む。俺のにとってリマちゃんは癒し系アイドルだ。


「私も着替えたりするから先に行ってていいよ」


「うん!」


元気に返事をすると脱衣所を駆け足で出て行ってしまう。


「走ったらって、行っちゃったから言っても仕方ないか」


少し呆れながらそう言うと、今度は自分の身体についている水滴を自分が持っているバスタオルで拭いてから服を着る。

そして、髪を梳かしながらドライヤーで乾かせば完了。


さてと、夕ご飯までは時間があるからなぁ〜。どうしようか・・・・・・あ、そうだ。神様に聞いておかなきゃいけない事があったな。


棚に置いた荷物を全部ストレージに仕舞い脱衣所から出でて自分の部屋へと行くと、メニュー画面を開き神様にCALLする。


連絡が取れれば良いんだけどぉ〜・・・・・・まぁ忙しい人。じゃなくて。神様だからすぐに出てくれる筈。


『もしもぉ〜し、エルライナちゃん。久しぶりだねぇ〜』


「・・・・・・そうですね。この間 僕が渡した高級お肉全部食べられちゃったの? それは災難だったねぇ〜! って爆笑されたんでしたね」


あの時は腹が立ったわぁ〜、ホント。メルティナさんにある事ない事チクろうかなぁ? って考えたぐらいにね。


『まぁ要件は分かってるよ。オウカちゃんの事で電話して来たんだよね?』


「そうですね」


やっぱり、俺が聞きにくるって把握してしていたか。だとするとぉ・・・・・・。


「神様がオウカさんをこっちに寄こしたんですね」


『う〜ん、それはちょっと違うねぇ〜』


あれ? 違うのか? でも、ちょっとって言うからには合ってる部分があるみたいだ。


『オウカちゃんはお仕事の都合で王都に来たんだ。オウカちゃんの主人って言うよりも、彼女を転生させた女神シキオリちゃんがエルライナに会うように言ったんだ。

もちろん、ちゃんと僕に会う許可とキミが転生者だってオウカちゃんに教える許可を出したよ』


会わせるんだったら、俺に一声あったって良いんじゃない? 報連相の伝達が怠るのは社会人としてダメな気がする。

あ、でも神様だから関係ないのか?


そう思いながらも俺はイラッとしていたので、神様を眉間にシワを作り睨むと神様は慌てた様子で喋りだした。


『き、キミを驚かせたかった。って事があったから黙っていたんだよ! 謝るから許してよ! ゴメン!』


「その中に、 面白そう。も含まれてるんじゃないんですか?」


『あー・・・・・・うん。思ってた』


「ハァ〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・」


まぁ今に始まった事じゃないから、気にしても仕方ないんだよなぁ。


「その事については許してあげますよ。オウカさんを私に彼女の護衛任務をさせたかったから、会わせたんですか?」


『そうそう! ホラ、さっきもネルソンちゃん達も言ってたじゃん。最近は魔人の動きが活発になって来た。って』


たしかに言ってたな。


『それに、こっちとしてもオウカちゃんが亡くなっちゃうと、悲しいし色々と困るんだよ』


「・・・・・・まぁ、彼女のいて欲しい理由とかは聞きませんよ。バルデック 公爵様に護衛任務を受けるって承諾しましたから」


『そうなの! よかった!』


「ただオウカさんが転生者で女神様の使者ってところが、説明されてもないし情報が少ないので理解出来なくて・・・・・・」


『あー・・・・・・そうだね。良い機会だから説明してあげるよ』


神様はそう言うと、絵が書かれた一枚の紙を見せてくる。


『順を追って説明すると、異世界転移は違う世界から人を呼ぶのに対して、転生者は魂が前世の記憶を引き継いだまま生まれたり、ある日突然前世の記憶を思い出したりするのは理解しているよね?』


「まぁ・・・・・・そこら辺はラノベを読んでいたので分かります」


『その転生者の中でも、僕たちが事前に仕組んでいる場合がある』


「イタズラで?」


『それはないよっ!! そんな事をしたら周りから怒られるし、その世界のパワーバランスが崩れちゃって滅亡する可能性があるから! っていうか、前例があるから出来ない様になってる!』


この神様ならやりかねないと思ったんだけどな。違ったか。

ん? もしかしてその前例を引き起こしたのって、神様じゃないよね?


『なんか失礼な事を思っていたっぽいけど、時間もないから説明を続けよう』


神様はそう言うと、仕切り直したいのか コホンッ! とワザとらしい咳払いをした後に話し始める。


『僕達の使者として転生する事だよ』


「神様達の使者として転生する? それって、どう言う事ですか?」


『別の世界で生きて人生を終えた人をスカウトする事が出来るんだ。もちろんその時はスカウトした神様、もしくは女神様の使者になるのは絶対条件でね。

キミにも身に覚えがあるだろう?』


身に覚えって、一体どこで?


『僕がキミと初めて会った時の事』


「ッ!? じゃあ私は・・・・・・」


いや待てよ。俺が転生する時に、使者にはなると了承していなかった気がする。


『形式上ではキミは僕の使者なんだ』


「えっ!? どうしてそんな事になっているんですか? 神様の使者になるって言ってないですよ!」


『・・・・・・黙っててゴメン。そうしないとキミを転生させられなかったんだよ』


「・・・・・・理由をうかがっても良いですか?」


そう、この人に怒っても仕方がない。だってそうする必要があったんだから仕方なくやったんだ。問い詰める理由がない。


『転生する為には使者にならなきゃいけないのと、僕達に任せられた仕事をこなさなきゃいけないのがあるんだ。

まぁあの子の場合は・・・・・・』


なんか最後ら辺は不吉な事を言ってるけど、気にしない様にしておこう。


「任せられた仕事とは?」


『うん。転生させてあげるけど交換条件として、こんな事をしてください。ってね。

僕は把握してないけど、記憶があるって事はシキオリちゃんに頼まれた事をちゃんとこなしている感じだね』


「記憶がある?」


記憶がある。って部分に引っ掛かりを感じるなぁ。


『えっとね。使者になった転生者の中には稀に自意識過剰になって暴走してしまう可能性があるから、それを止める為に僕達が記憶と与えられた能力を取り消せる様にしてるんだ。

だからもしもだよ。もしもキミがね。敵味方問わず人を殺す様になってしまったりしたら、僕はキミの記憶と能力を消さなきゃいけないんだ。

察しの良いキミなら分かるよね?』


転生者を使者にさせるのは悪用させないの楔であり、 いつでもお前の記憶と能力を取り上げられるぞ。 って脅しなのか。


『後言ってなかったけど、この世界の生きている人を使者に出来るよ。ただし、自分の宗教に入っているのと実績のある人じゃないとダメ。

それとさっきのスカウトの話し、スカウトに失敗したらそのままお流れになるから、断った人はそのまま輪廻転生の理に従って生まれ変わるよ』


あれ? さっきと違って説明が駆け足になってない?


『そろそろ人が来そうだからね。オウカちゃんがなんで使者になったのか? は本人聞いてね! じゃあね!』


そう言った瞬間、通信が切れてしまった。


「うわぁ・・・・・・また一方的に切られちゃったよ」


「おねえちゃぁ〜ん!!」


神様との通信が切れた事を気にしていたら、なんといきなりリマちゃんが俺の部屋へ入って来たのだ!


ああなるほど。神様はリマちゃんがくるのが分かってたのか。


「おねえちゃんあそぼう!」


「あれれ? リマちゃんお婆さんのお手伝いしなくても良いの?」


「うん! おばあちゃんがね。おねえちゃんのところへいきなさい。 っていったからきたの!」


ああなるほど。リマちゃんの面倒を押しつけられたんだな、俺は。


「とりあえず、オセロをやる? それともこのジェンガで遊ぶ?」


リマちゃんの目の前でオモチャを取り出して見せると、嬉しそうな顔をして片方を掴み取った。


「ジェンガァ〜〜〜!!」


「じゃあ準備をするから待っててね」


「うん!」


夕食の時間になるまで、リマちゃんと一緒に遊んでいたのであった。

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