第7話

「ではエルライナのDランク試験のレクリエーションを始める!」


「シィー! ・・・・・・ミハルちゃんが起きちゃいますよ」


口に指を当てて言う俺を見たエイド教官は、 ハッ!? と気づいた後に慌てたようすでミハルちゃんに顔を向けて寝ているかどうか確認をする。


「・・・・・・ふぅ、寝ている。悪かったな。いつも通りの調子で話したら・・・・・・ついな。さて、話しの続きをするぞ」


「はい」


「今回は総合ギルドの規定に則った試験をする。まず先にお前に言うべきことは今から試験が始まったからダンジョン攻略が有利になる助言をお前に一切しないのと、危険だと判断した時以外はお前を助けない。理由は分かるな」


「はい」


「そして、これ以上試験続けたら危険だと俺が判断したら試験を強制的に中止にして入り口まで戻る。もちろん、そんな事になれば試験失格だ。ここまでの説明は分かったか?」


「はい、問題ありません」


「試験のルールは前にお前に少し話していた通り、三階まで攻略したところで試験終了だ。制限時間は四時間。それを超えたらタイムアップで終了とする。何か質問はあるか?」


「大丈夫です」


「そうか、話しは以上だ。亜人の迷宮まで一時間掛かるから体をしっかり休めとけよ」


「はい。分かりました」


「それではこれから亜人の迷宮に向かう。エルライナ、馬車に乗ってくれ」


「はい」


馬車に乗った時に気づいた。シドニールさんが馬車に乗っていて手綱を持ちながら下を向きながらまたブツブツ言ってる事を。


「グスッ!? エルの嬢ちゃんは素直だなぁ・・・・・・それに比べたらミハルは、グスッ! ・・・・・・ワガママで騒ぐし、問題起こすし・・・・・・・・馬車を出すぞ」


そう言った後に馬車を走らせ始めた。


シドニールさん・・・・・・本当に苦労してるんですね。ミハルちゃんはシドニールさんにどれだけ苦労をかけてるの?


「・・・・・・エイド教官」


「どうしたエルライナ」


「今日の試験、シドニールさんも迷宮に同行するんですか?」


「いいや、彼は送り迎えだけをするだけらしい・・・・・・呆けてるがどうした?」


「いえ、てっきり私とエイド教官とミハルちゃんで馬車の操縦を交代しながら向かうと思っていたので・・・・・・はい」


でも俺は馬車を操縦出来ないし、ミハルちゃんもこんな状態だからエイド教官とシドニールさんに任せるしかないんだけどね。


「ミハルに任せるなんてゾッとする事を言わないでくれ!

ミハルなんかに操縦を任せたら操縦ミスって馬車を転倒させて破壊するか、馬車を暴走させてどっか壁とかに馬車をぶつけて破壊するか、アイツ自身がイラついて馬車を破壊するかの三つが起こるかもしれないからな」


シドニールさんは体を震わせながら言うので、これは経験談だと俺は悟った。


この子の操縦はそんなに恐ろしいんかい・・・・・・良い機会だからシドニールさんとエイド教官に習ってみようかな?


「そう言えば、今日は人が多いですね。何かお祭りがあるんですか?」


特に商人と武装した人達が目立つ。まぁその武装した人達の大半は総合ギルドの冒険科の人達だと思うけど。


「さぁ? 王国誕生際は三ヶ月前に終わったばかりだからな。俺には見当が付かない」


「もしかしたら来月に行われるの四ヶ国間協議会の準備かもしれないな」


四ヶ国間協議会?


「もうその時期だったのか。だからこんなに多いのかぁ・・・・・・」


「今年は魔国で協議会を開くらしいからな。恐らくここにいる連中は珍しい物を探し出して魔国に売り捌こうとしているんだろう」


「なるほどな、魔国の連中は珍しいだけじゃ中々買わないだけどな」


「共和国と帝国を回って良いもんを求めて探しているらしい。もちろん魔国に高く売りつける為にな」


「そんな事をするよりも、ここで採れる食料を魔国に送った方が儲かるんじゃないか?」


「ハッハッハッハッ! ちげえねぇっ!」


「だろう? ハッハッハッハッ!」


二人は笑い合っているが、俺は二人の話に追いついて行けないでいる。


「あのぉ〜・・・・・・」


「ん、どうしたエルライナ?」


「四ヶ国間会議って言うのが私は知らないんで、教えて頂ければありがたいんですがぁ」


「何だお前、四ヶ国間会議を知らないのか?」


「・・・・・・はい、すみません」


ホント、図書館に行って通い詰めて知識を取り入れたいよ。


「まぁ簡単に話すと年一回だけラクスラード帝王国、サクラギ魔王国、ベルドラード共和国、そしてこのリードガルム王国の四ヶ国の代表が一箇所に集まって今年の成果と今後の将来をどうするかを話し合う会議をするんだ」


「ほぇ〜」


地球で言うところのNATO協議みたいな事をするのかな?


「その四ヶ国間協議が開催される場所が今年は魔国なんだよ」


「ヘェー、去年はどこだったんですか?」


「去年は帝国だった。その時は俺はグエル団長と共に国王様の護衛で行ったんだが、かなり豪華な催しが多かったな」


「豪華な催し。って一体どんな催しがあったんですか?」


「先ず歓迎のパレードあったな。城の中に入ったら劇に豪華な食事会とかもな」


何だろう・・・・・・行って見てないから分からないし、想像もつかない。


「う〜ん・・・・・・でも国の代表を迎え入れるんですから、豪華な方が良いと思うんですが違うんですか?」


「あれは度が過ぎていてグエル団長や他の国の代表も唖然としてたぞ。しかも、 これは流石にやり過ぎだ。 と言う話が会議に出てきたしな。

それにリードガルム国王は国に帰る時に、 今回の催しでいくら金を掛けているのか聞きたくなった。 とか、 あれを我が国でやったら確実に経済破綻する。 とか言うぐらいだからなぁ」


「どんな事をやってたか見てみたかったです」


「三年後に見る機会があるさ」


エイドさんは笑いながらそう言ってくるが、 豪華な催しが三年後となるとまだ先だなぁ〜。 と思いながら残念な気持ちになってしまう。


「多分次また帝国で四ヶ国間協議が開催時は規模が小さくなってると思うぞ」


なぬっ? 規模の縮小をするだと!


「シドニールさん、どうしてですか?」


「帝国内でも派手な催しは、 やり過ぎじゃないか? と問題視されてたみたいなんだ。皇帝陛下も次からは規模を小さくすると宣言したからな」


「やり過ぎた。って気がついたんですね」


「そう言う事だ。もう城壁が見えてきたからギルドカードを準備しておいてくれ」


「ハイ・・・・・・あっ!?」


「どうしたエルライナ?」


「ミハルちゃんのギルドカードも提示しないといけないんですよね?」


「あっ!?」


しまった! 王都の外に出る時は門番さんに身分証の提示をしなきゃいけないのを忘れてた! マズい・・・・・・これは本当にマズいっ!!


「起こした方が良いですよね?」


「起こしたら起こしたで問題になりそうだな」


「う〜ん・・・・・・シドニールさん」


「ん、何だ?」


「ミハルちゃんは、ギルドカードをどこに閉まっているか分かりますか?」


ミハルちゃんがアイテムボックススキル持ちで、そこに入れているんだったら起こさなきゃいけないし。


「ああ、俺がミハルのギルドカードを持ってるから安心しろ」


そう言いながらポケットからギルドカード二枚を取り出して俺達に見せてくるので、俺とエイドさんは驚いてしまう。


「どうしてミハルちゃんのギルドを持っているんですか?」


「それはな、ミハルのヤツがなくす事があるから俺が預かってるんだ」


ギルドカードを無くす事があるって・・・・・・ミハルちゃん、なにをやっちゃってるのっ!?


「ミハルちゃんがソロでクエストをやる時は、どうしてるんですか?」


「・・・・ミハルに “絶対なくすなよ! ” と言ってから渡してる」


うわぁ〜・・・・・・シドニールさんがミハルちゃんの親みたい。


そう思いながら寝ているミハルちゃんを見てしまう。


「まるで親父と娘の会話みたいだな」


エイド教官がはっきり言っちゃたよ!


「・・・・・・ミハルちゃんの独り立ちは何時になるんだろう」


「「「ハァ〜・・・・・・」」」


思わず三人で溜息を吐いてしまう。


「お待たせしました。って皆さん溜め息吐いてどうされたんですか?」


「あ! 大丈夫です。お気になさらず」


「そうですか・・・・・・カードの提示をお願いします」


門番さんにそう言われたので、総合ギルドカードを提示して見せるとエイド教官、俺、シドニールさんの順に確認していく。


「はい確認しました。アナタが手に二枚持っている総合ギルドカードの内の、一枚はあの子の物でカードで良いんですよね?」


門番が寝ているミハルちゃんを見ながら言うのでシドーニールさんは頷いてから答える。


「ああそうだ。ウチの寝ている弟子の代わりにギルドカード提示してるんだ。全く手が焼ける弟子だ」


「ハハハッ、苦労なさってるんですね」


門番さんが苦笑いしている。多分、 地雷を踏んじゃったかな? って感じに思ってるかな? まぁこの世界に地雷は存在しないけど。


「まぁな」


「さてと皆さま問題ないので、どうぞお通り下さい」


「お疲れさん」


「いつもご苦労」


「ありがとうございました」


門番さんに見送られながら王都を出たのだが、王都を出発してから三十分ぐらいで問題が起きた。


「乗ってるだけのはずなのに・・・・・・何で身体が疲れるの?」


腰が痛くなるのは覚悟していたけれど、馬車に乗っている身体が疲れるとまでは思ってもみなかった。


「貴族の馬車だったら座席にクッションをいているから腰の痛さを軽減出来るが、普通の荷馬車じゃこんなもんだぞ」


「そうなんですか。イツツッ!」


でも腰の痛さをクッションを敷くだけで改善出来るなら、アイテムボックスに入れておいたヤツを引っ張り出そうか。


ストレージを開くと、クッション探し始める。


「クッションは確か下の方だったよね? え〜っと・・・・・・あった!」


スクリーンに映るクッションを取り出すとエイドさん達に見せつける。


「クッションを買っといて良かったぁ〜!」


「持ってたのか。しかもそのクッション可愛いな」


「わ、私だって女の子なんですから、カワイイデザインのクッション欲しいですよ!」


言えない。クッションが欲しくて買おうとショップを開いて検索して見たんだけども、閲覧で出てきたクッションが可愛いデザインのクッションしかなかった。って事を。


恥ずかしい。と思いながらクッションを敷くと、今まで感じていた激しい揺れが軽減した上に腰に感じていた負担が少し軽くなった。


「クッション一つでこんなに様変わりするなんて、知らなかったですよ」


「そうか、それは良かった」


「エイドさんはクッションを使わないですか?」


「俺はお前の様に軟じゃないからな、クッションなんてなくても大丈夫なんだよ」


「そうなんですか」


「 それに俺はお前の様にアイテムボックススキルがないから、クッションを鞄に入れて歩くるしかないんだ。そうするとどうなる思う?」


「クッションが邪魔に感じると思います」


「そうだ。だからクッションを持ってない冒険家が多いんだ」


「なるほど、そうなんですか」


まぁ余り役に立たない物を持って歩くわけないよなぁ。


「エルの嬢ちゃん、慣れればどうって事ないぞ」


慣れかぁ〜・・・・・・。


「慣れたらミハルちゃんみたいに馬車で寝る事が出来るんですかね?」


「や・・・・・・そのぉ、な・・・・・・・ミハルは特別だからな。普通は寝れないぞ」


「そうなんですか」


口からヨダレを垂らしながら寝ているミハルちゃんを見てこう思った。ミハルちゃんはこんなに揺れてる馬車でも寝れるスゴい子だったんだねぇ〜。と。

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