第2話
俺はエイドさん達の話を一通り聞いて事情を理解したが、今度は色々と問題があり過ぎてしまい困ってしまってしまっている。
「え〜っとぉ・・・・・・つまりこう言う事ですか。そこに横たわっている着物を着た子、ミハルちゃんをサポートと言う形で見学をさせたいと言う事で間違いないですよね?」
「ああ、そうだ」
「しかも見学の理由はDランクに上がってからクエスト成功率が低くなった上に他の人とパーティー組んだ時に揉めて問題を起こしているから、 私の戦い方を見て学ばせる。 って事であってますよね、エイドさん?」
「ああ、あってる。それでだ! お前はその事を知った上で聞くが、お前に突っかかって来たあの子供を同行させて良いか?」
エイドさんにそう聞かれたので、俺は床の上で気絶している女の子とエイドさんを交互に見ると、ため息を吐く。
まぁこればかりは仕方ないよな。エイドさんやラミュールさんの為だもん。
「私自身は同行については問題ありませんが、ただ一つ確認したい事があります」
「なんだ?」
「この子は私の試験の妨害をしませんよね? 危険だと感じた時以外は後ろで待機して頂ければ良いんですけどぉ・・・・大丈夫ですかね?」
「それはもちろん、最初っからそうさせるつもりだ」
エイド教官があの子の側で一緒にいるから、なんか突っかかって来たら止めてくれるはずだろう・・・・・・多分。
「すまないな、エルのお嬢ちゃん。俺の弟子がダンジョンで迷惑をかけないように、ちゃんと言い聞かせておくから安心してくれ」
「ありがとうございます! え〜っとぉ・・・・・・」
この人はあの子を弟子と言ってたからあの子の師匠なんだよね? そう言えばまだ名前も聞いてなかったね。
「そう言えば名前を言ってなかったな。俺の名前は シドニール・ラト・ホンドウ だ。俺の名前を呼ぶ時はシドで良い」
「えっ!?」
「ん、どうしたんだ?」
ラト・ホンドウって・・・・・・まさか。
「もしかして・・・・・・グエルさんのご家族の方ですか?」
「・・・・・・ああ、そうだ。グエルは俺の兄だ。ひょっとしてお前は兄貴の知り合いか?」
ん、なんだろう? 今顔が強張ったような気がしたけど・・・・・・気のせいか?
「はい。グエルさんを兄貴って言う事はグエルさんの弟?」
「フッハッハッハッハッハッ! そうだ、俺の兄はグエルでな。兄貴は剣を使う事が出来たから軍に入ったんだが、俺は剣とか弓とか言った武器を扱うのが出来なかったんだ。だから軍に入れなかったんだ」
「剣とか弓が扱えなかった? もしかしてハンマーとかトンファーみたいな打撃武器を使うんですか?」
「いいや違う」
シドニールさんは首を横に振りながら否定してきた。
腰に差しているナイフは解体用のだし、暗器みたいな武器を持ってる様子もない・・・・・・シドニールさんの武器ってなんなんだ?
「う〜ん?」
「答えが分からないか。なら教えてやろう。俺の武器は、これだ!」
そう言って両手を前に出してファインティングポーズをとる。
ボクシングのポーズに似ているな。もしかしてっ!!
「格闘技ですか?」
「その通り。
「おぉ〜っ!!」
格闘技で敵を倒す。なんてカッコイイ戦い方なんだっ!!
「ところでお前の武器はなんだ? もしかして腰に付けているナイフが武器なのか?」
取り出して見せた方が良さそうだな。JERICHO941PSLも子供達に見せるわけにはいかなかったから仕舞ったんだった。
「それはですね。え〜っとぉ・・・・・・」
「ちょっと師匠! なんでミハルを殴るのよっ!?」
「あっ!」
アサルトライフルを取り出そうとスクリーンをいじっていたら、倒れていたミハルちゃんが自分の頭を手で抑えながら起きて来た。
「ミハル・・・・・・もう起きたのか」
「うう〜・・・・・・師匠のせいで頭が痛い〜〜〜っ!!」
「お前が馬鹿な事をしようとしていたから俺に殴られたんだろう・・・・・・違うか?」
「・・・・・・ミハルはなにも悪い事してないもん」
「ほぉ〜う? ・・・・・・ならなんでお前は明後Dランク昇格試験をやるエルライナに対して試合を申し込むんだ? んん?」
うわぁ〜、シドニールさんの顔が恐い。
「そ、それはぁ・・・・・・ミハルがね・・・・・・あの子の実力を・・・・・・
話す度に声が小さくなって行き、最終的に俺の後ろに回って隠れてしまった。
「なんで私の後ろに隠れるのっ!」
「だってぇ・・・・・・師匠が怖いんだもん」
「だからって私の後ろに隠れなくても良いでしょ! しかも悪い事したのミハルちゃんでしょうがっ!!」
後、試合を申し込んだ相手の後ろに隠れるなんて恥ずかしいと思わないのかな? ほら、シドニールさんなんて呆れた顔をしてるよ。
「ハァ〜・・・・・・お前とエルライナと試合やる。そしてその試合でエルライナに重傷を
「それは・・・・・・そのぉ〜・・・・・・ポーションを使って直せば良いとぉ・・・・・・思う」
「ポーションで治らないような傷だったら、お前はどう責任を取る?」
「うっ! ・・・・・・ぅぅぅううううううっっっ!!」
あ~、言い返せないからこの子泣きそうな顔をしてるよ。
「ミハル、迷惑をかけた俺達になにか言う事はないか?」
「・・・・・・ごめんなさい」
そう言って頭を下げるミハルちゃんを微笑ましく見てると、なぜかムスッとした顔でこっちを向いてきた。
なんで自分が怒られなきゃいけないの? アンタのせいよっ!! って言いたそうな顔をしている。
コイツ、全く反省していないっ!!
「ま、まぁとにかく、明日はよろしく・・・・・・ね?」
「フンッ! ダンジョンに入ったらミハルの実力を見せてあげるわ! 楽しみにしてなさいっ!!」
「「お前はエルライナの試験のサポートなんだから前に出たらダメなんだよっ!!」」
エイドさんとシドニールさんは俺を挟んでミハルちゃんを怒り始めた。
全くこの子はぁ・・・・・・そう言えば神様との通信がいつの間にか切れてるな、気がつかなかった。
う〜ん・・・・・・なんか用事が出来たから通信を切ったのかな? でもなにも言わないで切るってマナー違反じゃないかな?
その頃、神様達は・・・・・・。
「全くアナタ達は本当に反省してるんですかっ!!」
「「はい、反省しています。ごめんなさい!」」
腰に手を当てを怒るメルティナスに対して神とリトレアスの二人は床に正座をした状態で頭を下げて謝っている。いわゆる土下座だ。
「全くアナタ達と来たら私が仕事をしている間にサボってたなんて」
「サ、サボってはないよメルティナスちゃん! ただ休憩していただけだよぉ〜・・・・・・うん!」
「私も仕事がひと段落したので休憩をしてただけなのですぅ〜・・・・・・はい」
「なんで休憩が三十分以上も続くんですか? えぇ?」
「うっ!? それはそのぉ・・・・・・」
「え〜っと・・・・・・あのぉ〜、ですねぇ〜・・・・・・」
汗を
「ハァー・・・・・・まぁ良いでしょう。こうしているのも時間が勿体ないですからね」
「それじゃあもう許してくれるんだねっ!?」
「ええ、もう良いですよ」
その言葉を聞いた二人は疲れた顔をしながら足を崩して座り始める。
「ハァ〜、やっと終わったよぉ〜!」
「痛たたたっ!? 足が痺れて動かないのですよぉ〜!」
「ところでガイラス様」
「ん、どうしたの?」
「こちらの書類の処理をお願いします・・・・・・ねっ!!」
ドシンッッッ!!?
「へ? ・・・・・・ニギャァァァアアアアアアーーーーーーッッッ!!?」
メルティナスのその掛け声と共に書類の山を勢いよく膝に叩きつけられた神様は、脚全体に苦しいほどの痛み、そして痺れを感じて悶絶してしまう。
「ヒ・・・・・・ヒドいっ! ヒドいよメルティナスちゃんっ!!」
「私はただ膝に書類を"置いただけ"ですから、なにも悪い事はしてませんよ」
神様はニッコリ笑ってくるメルティナスに恐怖を感じてしまい、恐怖で身を震わせてしまう。
あ、あの顔はヤバい。今は逆らわない方が良いね。
「それとリトレアスさん」
「は、はいっ!」
「先ほどアナタの上司が探していましたよ。早く自分の職業に戻った方が良いと思いますよ?」
「あ、はい! 分かりましたのですっ! でも足が痺れてるので動けないのです。だから起こして頂けると有り難いんですがぁ・・・・・・お願い出来ますか?」
リトレアスはそう言って手を差し伸べる・・・・・・がっ!!
「すみませんが自力で起き上がって下さいね」
とメルティナスは笑顔でそう言いながら、その手を取る事はなかった。
「えぇ〜っ!?」
お、鬼です・・・・・・この人には優しさの欠片もないのですっ!!
「それでは私は職場に戻るので失礼しますね」
「「えぇっ!? チョット待ってぇ!!」」
「はい。なんですか?」
「僕達を助けてよ!」
「そうですよ! 私達を見捨てるなんてメルティナスさんヒドいのですよっ!!」
「足の痺れぐらい時間が経てばすぐに取れますよ。それに早く治したいのでしたら魔法を使えば良いのでは?」
「天界の規定で、 重傷以外は回復魔法の使用を禁止する。 って言うルールを知ってるでしょっ!?」
「ええ、存じております。それと私も時間に余裕がないので行きますね」
「ええ〜〜〜!? 僕達を見捨てないでよぉ〜〜〜っ!!」
「助けて欲しいのですよぉ〜〜〜っ!!」
「・・・・・・足の痺れは時間が経てば取れますよ」
メルティナスは泣きながら手を伸ばして助けを求める二人にそう言うと、ニコニコしたまま自分の職場に戻って行くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます