第13話
北門に着いたのでピーチさんが来て居ないか周りを見回してみるが見当たらない。
・・・・・・まだ来ていないかぁ。時間も余裕があるからゆっくりしてよう。
北門の柱に寄りかかるとショップを開いて売られている兵器を見ていく。
もうそろそろ新しい武器でも買おうかなぁ? 航空機はちょこちょこ買ってたから種類はあるから良いとして、地上で使う戦闘車両系が戦車は M1A1HC が一台に
「戦車とAPCの運転は他の人頼みだったからな。ストライカーと、T-90か10式戦車を一台買って有効活用した方が良さそう。どれを買おうかな? いや、全部買う事にしよう。でもポイントの配分を考えなきゃいけないからなぁ。ストライカーは買うとして戦車の方が悩みものだね、二台共買うのは流石に予算がキツイ。んー・・・・・・」
T-90か10式戦車、どっちを買った方が良いのか悩みものだなぁ〜。
「お嬢さ~ん。ねぇ、お嬢さん?」
「んー・・・・・・」
「ねぇねぇ、聞こえてる?」
「・・・・・・ん?」
顔を上げて見ると一人の背に高い男が俺の目の前に立っていて見下ろしていた。
誰だコイツ? チャラそうな格好した人だなぁ〜。
「ねえ、下向いているって事は暇なんでしょ~? 俺と一緒に遊ばない? 面白いところに連れてってあげるからさぁ~!」
今のしゃべり方で分かった。頭のなか空っぽの馬鹿だ。
「残念だけど違いますよ。人と待ち合わせしているだけですから他の人を探して誘って下さい」
ユラユラ動いて落ち着きがない上にだらしない格好をしている。こんなんでナンパ出来たらスゲーよ! つーか本当にどっか行け!
「ふ~ん、そうなんだ。俺と遊んだ方が楽しいんじゃないかなぁ?」
「楽しいとか関係ないです。仕事なのでどっか行ってくれますか?」
そろそろコイツの態度にムカついてくる。しつこくナンパされる女の人ってこんな気持ちになるのかなぁ?
「へぇ~仕事なんだ。仕事なんて後で良いじゃん! 俺と遊ぼうよぉ~! お小遣いもあげちゃうからさぁ~!」
「・・・・・・チッ!?」
寄り掛かっている柱から離れてチャラい男を見据える。
「・・・・・・最後の警告をする。失せろ。じゃなきゃ痛い目を見せて、そのお花畑の頭を覚まさせる」
周りで見ていた人達は俺の顔を見て顔を強ばらせたり顔を青ざめさせるが、目の前の馬鹿は俺が本気だと感じてないみたいで触ろうとして手をかざしてくる。
「そんな怖いか、ごおぉぁぁぁああああああっっっ!!!?」
かざしている右手を即座に取り、強めに
「私はこう言ったはず。失せろ。と・・・・・・これ以上関わるんだったらこのまま関節を抜かれたい?」
「いだ、いだだだだっ!? 分かった! 分かったから止めて下さいっ!! き、消えますから離して下さいっ!!」
「ホントに? ウソだったら容赦しないよ?」
そう言いながら捻っている腕を強めると、チャラい男の目から涙が出始める。
「ヒィィィッッッ!!? ホ、ホントです! ・・・・・・ほんどぶぅに失ぜまずからぁ、ゆ許じて下ぢで、お願いずぅぅぅううううううううううううっっっ!!!」
なんか、俺がこの人を懲らしめてるんじゃなくて、虐めてるように見えてきたんだけどぉ・・・・・・気のせいだよね?
「・・・・・・分かった。離してあげる」
泣きながらそう言うので離してやると、涙と鼻水で酷くなった顔で俺を見た後に、 ヒャァァァーーー!!? と叫びながらどっかに走って逃げてってしまった。
「・・・・・・やっと静かになった」
「あらぁ~、ライナちぁ~ん早いわねぇ~。アタシ待たせちゃったかしらぁ~?」
おっ! この声はピーチさんだ!
そう思いながら左に顔を向けるとピーチさんが歩いて来ている。
「おはようございます。待ち合わせ場所に時間より早く来るのは、いつもの事なので気にしないで下さい」
「それにこの人だかりが出来てるけどぉ~、なにかあったのかしらぁ~?」
「ああ~、私をナンパしてきた男がいたんですよ」
「良いわねぇ~! アタシもナンパされたいわぁ~っ!!」
いや・・・・・・絶対無理でしょ。
「周りにいるのはようすを見ていた人達ですよ」
「あらそうなのぉ~。ねえねえ、どんな男が話しかけてきたのぉ~?」
「うーん、私が見た感じはチャラくて頭悪そうでした。身体を触ろうとしたので腕を捻りあげたら泣き出しまいました」
「あらぁ~、情けない子ねぇ~。聞いてるだけでライナちゃんには相応しくない相手だって分かるわぁ~」
ホント、ピーチさんの言う通りかもしれない。それにもう関わらないと思うしね。
「それじゃ亜人の迷宮に行こうかしらぁ~!」
「はい・・・・・・ですけどぉ」
「どうしたのかしらぁ~?」
「このまま歩いて行くんですか?」
亜人の迷宮まで歩いて行ける距離とは思えない。馬をこれから借りるのかな? でも厩舎がある場所は反対方向だし、なにか当てがあるのかな?
「なに言ってるのよぉ~! 駅馬車を使って亜人の迷宮に行くのよぉ~!」
駅馬車? そんなのあるの?
「ほら、あそこにある馬車停を行くのよぉ~」
指をさす方向に顔を向けると、亜人の迷宮回りと書かれた看板の前で八人ほど並んで待っている。
なんか、バス停でバスを待っているみたいに見えるなぁ・・・・・・バス停と同じだと思うけどさ。
「流石に歩いて行くのは時間がかかるし、ダンジョンに潜る前に疲れちゃうわぁ~。もしかしてアナタ、駅馬車を使った事がないのかしらぁ~?」
「ええ、駅馬車は使った事ないです」
ぶっちゃけ今まで使う必要もなかったし。
「あらそうなのぉ~、じゃあ今日が駅馬車乗るの始めてって事ねぇ~! 込まない内に並びましょうかしらぁ~!」
「そうですね」
列の一番後ろに並んだ時に、ちょうど馬車が二台来て看板の前に停まり乗客を降ろし出す。
「あらぁ~、ちょうど来るなんてラッキーだわぁ~。基本的には三十分ぐらい待つのだけれども馬車の調子次第で一時間以上待つ時からねぇ~」
そんなに待つ時があるんだ! そうなると今後は駅馬車とハンヴィーの使い分けをした方が良いかもしれない。
「いつものは一台だけですか?」
「駅馬車は二台で行動してるわぁ~、王都の外に行く時は人数が多い方が何かあった時に対処出来て良いでしょ~」
「戦えない人の方が上回ったら危ない。って事を言えますよ?」
「ああ~、なるほど! 戦いが出来ない市民は王都から出る事はないわよぉ~。草原とかに出るとしたらそうねぇ~・・・・・・実家とかに帰省する時ぐらいかしらぁ~。まぁその人達は安全面を考えて、大抵はキャラバンに乗せて行って貰ってるわぁ~!」
「へぇ~、そうなんですか」
などと考えていたら自分が馬車に乗り込む番になった。
「身分証を提示して下さい」
この運転手、いや馬車の場合はたしか
手綱を持っている人にそう言われたので総合ギルドカードを見せると笑顔になる。
「銅貨八枚になります」
「はい」
アイテムボックスから銅貨八枚を出して御者さんに渡す。
「銅貨八枚ちょうど頂きました。馬車は狭いので奥に詰めて下さい」
「あ、はい」
返事をしてから馬車乗り込むと、三人しか乗ってなかった。
「あれ? 三人しか乗ってない。前の五人は後ろの馬車に行ったのかな?」
何で後ろの馬車に乗ったんだ? まぁそれは良いとして、パッと見て十人ぐらいは入れそうなのにどうして俺達を含めて五人しかいないんだ?
「馬車は基本的こんな感じよぉ~、私達の荷物も合わせて乗せるから一台に対して大体5~6人ぐらいしか乗らないわよぉ~。ほら、奥に荷物があるでしょぉ~」
あ、本当だ! 奥の方に荷物が沢山ある。まるでキャンプにでも行く感じに見える。
「そ・れ・よ・り・もぉ~! 早く座らないと出発が出来ないわよぉ~!!」
「あ、はい!」
ピーチさんにそう言われてしまったので、慌てながら知らない女性の隣に座ると御者さんはこっちを向いてくる。
「それでは亜人の迷宮に向けて出発をします。亜人の迷宮までの到着は予定通りに行けば途中休憩を入れて五十分で着きます。馬車は揺れるので、お身体をぶつけないよう注意して下さい」
御者さんはそう言い終えると前を向くと馬を走らせ始めるか、急発進だ。
「わあ! 急発進!? しかも意外と揺れる。もしかして、馬車にサスペンションがないの?」
「サスペンション?」
「あ・・・・・・気にしないで下さい!」
「あらそう〜?」
注意していたつもりだったけど失言してしまった。
「そ、それよりも! 馬車は行く場所によって値段が変わるんですか?」
「そうよぉ~、走行距離と危険度によって値段が変わるわよぉ~。昨日まではゾンビの軍勢騒動で値段が2倍ぐらい高かったけど、今は通常の料金に戻ったわぁ~」
「へぇ~、そうなんですか。うわっと!」
なぜか馬車が急に止まったので馬車の中を見回してしまう。
「えっ!? 何で止まったんですか!!」
「検問の為よぉ~。しかし、荒い操縦士ね」
「あ、そうなんですか」
操縦が下手な人の馬車に乗ってしまったかもしれない。って思うと自分に運がないと感じてしまう。
「でも、なんで急に通常料金に戻したんですかね?」
「それは昨日の午後三時に国王様が総合ギルド会長と共に安全を宣言して、すべてを通常料金に戻すように仰ったからだよ。お嬢さん」
声のする方向を向くと門番さんが馬車に乗り込んで立っていた。
「みなさん、すみませんが身分証の提示をお願いします」
「あ、はい!」
俺以外は返事しないで身分証を提示すると、一人一人の身分証をチェックしていき終えると、全員の顔を見渡しながら話し始める。
「全員大丈夫ですね。それでは、これで私は失礼します。よき旅を」
門番さんが一礼をした後に降りたのと同時に、御者さんがこっちを向き始める。
「検問が終わったので、出発します」
「え! ゆっく、わっ!?」
また急に発進させるので隣のお姉さんに倒れ混んでしまう。
「すみません!」
「別に構わないわよ。後、急発進や急停止はこの馬車は当たり前なのよ。だから身構えていた方が良いわよ」
当たり前なのか。てか速くない?
「なんでこんなに操縦が荒いんですか?」
「それはね。彼の操縦が荒いんじゃなくて、繋いでいる馬があまり言うことを聞かないからよ」
「えぇ~・・・・・・」
つまり、暴れ馬の馬車に乗ってる事なの? ハッ!? まさか、前の人達はそれを知ってたから後ろの馬車に乗ったのかっ!!
「でもね。この馬車だったら五十分で着く。って言ってたけど、この馬車なら三十分で着くのよ。だからみんな文句言わずに乗ってるのよ」
「へぇ~、そうなんですか。ってそれが本当なら大変な事じゃないですか! もう一台の馬車は付いてきてるんですか?」
「大丈夫よ。この馬車に合わせて走っているわ」
「それなら良かったです」
置いてきぼりにしたら大変だもんね。
「そう言えばさっきのあれ見てたわよ。アナタやるわね!」
「・・・・・・あれ?」
「ナンパ男を追い返したじゃない」
さっきのアイツの事ね。
「いい気分だったわ。アイツ気になる女性を見つけると、しつこくナンパするのよ」
「あの人に声かけられたの私だけじゃないんですねぇ・・・・・・」
「ええ、そうよ。それに断ったのに勝手に付いて来て一方的に話しかけてくるから私達の間じゃ嫌われ者よ!」
「うわぁ~・・・・・・」
・・・・・・もはやクズだなソイツ。
「だから今回の事でいいクスリになってくれれば良いんだけど・・・・・・アイツ馬鹿だから無理かもしれないわね」
「ホントその通りかもしれないですね」
「今度来たら、もっと痛い目見せても良いわよ! 私が許可するわっ!」
「フフフッ! じゃあまたあの人がナンパして来たら地面に張り倒しますね!」
「良いわね! あの馬鹿をまた泣きっ面にしてやりなさい! 期待してるわよ!」
その後も亜人の迷宮まで会話が弾み楽しい馬車の旅になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます