第12話
~~~ 勇者 side ~~~
「なぁ、みんな。明日の朝にリードガルムに着くのになんで謁見が明後日なんだよ?」
宿の部屋の中で少年は二人の女の子に向かってそう言うと二人は呆れた顔になる。
「仕方ないでしょ。リードガルムは大変な事があってからまだ日が経ってないし、それに私達は勇者だからリードガルム王国はちゃんとした歓迎をしなきゃいけないから、準備だってしなきゃいけないでしょ?」
「でもさ、
もし王様が誰がゾンビの軍勢を倒したのか知らなかったら会った意味なんてないぜ」
その言葉を聞いた美海は眉間にシワを作り少年に言い始める。
「
「えっ!? ・・・・・・そ、そんな事で国際問題になるもんなのか?」
怖い顔をしながら目の前に近づいてくる美海に対して後ろにたじろぎながら言い返す大輝の姿を見た、もう一人の女の子が見つめながら話し始める。
「
今さら私達が 会わない と言ったら向こうに迷惑がかかるよ」
「あ! それもそうだなぁ・・・・・・」
「明日時間があるからリードガルム王国の近くにあるダンジョンに行って鍛えるんでしょ。忘れたの?」
「そうだったな。いやぁ〜明日のダンジョン探索が楽しみだなぁ~」
などと浮かれている所に伊織が言葉を投げ掛ける。
「大輝、今度は自重して」
「
声を少し張りながら言う大輝に対して、伊織は何も気にせず普通に話す。
「この前ダンジョンに行った時、大輝のせいでミミックに襲われた」
「うっ!? あれはぁ・・・・・・」
「大輝がミミックか確認しないのが悪い。団長達から教わったのに・・・・・・ね?」
「その件は今も反省しています・・・・・・はぃ・・・・・・」
「ん、その反省を明日生かしてね」
「・・・・・・はぃ」
さっきとは違い勢いなく返事をになってしまう。やはり大輝は二人には勝てないところがある。
「それよりも二人共」
「ん?」
「どうした美海?」
美海は二人に対して真剣な顔つきで口を開き始める。
「今回のゾンビの軍勢については魔人が絡んでいたのは知ってるわよね?」
そう、民間に対して公表したのは、 ゾンビが群れをなしてリードガルム王国に向かっている。 というような情報だけで、そのゾンビの群生を魔人が操っていたかもしれない。 と言う事に関してはリードガルムを含む四国の機密事項になっているのだ。
なぜ機密事項になっているのかと言うとレーベラント大陸の人達を混乱させないようにする為であり、その話を聞いた小国が
「確かにそうだけどぉ・・・・・・それがなにか問題なのか?」
「私が言いたいのはそこじゃなくて! 私達が苦戦して撃退させるのがやっとの魔人を一体どんな人が倒したのか? なのよっ!」
「さぁ、考えても分からね。強いヤツじゃないのか? 仲間になったら心強いなぁ!」
大輝の答えを聞いた美海はガックリ肩を落としてしまう。
「大輝、集団かもしれないよ? それに私達が仲間になって欲しいって言っても仲間になってくれないかもよ?」
「い〜〜~お〜〜~りぃぃぃいいいいいいっっっ!!!」
彼女は嬉しそうな顔をしながら伊織に抱きつき頬擦りをし始める。
「伊織だけはぁ・・・・・・伊織だけはマトモだと信じていたわぁ~~~っ!!」
「美海・・・・・・暑苦しいから離れて」
少し嫌そうにしている伊織と止めようとしない美海を見ながら、大輝が驚きながら二人に話しかける。
「ちょっ、待て!? 俺はマトモじゃないって言いたいのか?」
「アホで馬鹿」
「単調で馬鹿」
「グフッ!!? ・・・・・・馬鹿は共通かよぉ〜・・・・・・」
その言葉を聞いた大輝は床に膝を着いてしまうが、美海は気にしたようすをみせずにそのまま喋り出す。
「まぁ伊織が言った通りよ。ゾンビの群生を倒したのが集団なのか、それともたった数人のパーティーなのか、はたまた一人で倒したのか分からないじゃない? そしてその人達を見つけて勧誘しても仲間になってくれるとは限らないわ。しつこく勧誘しても嫌われるだけだから、ダメだったら諦めましょう」
「うん、分かった」
「ああ、でもさ・・・・・・本当に一体どんなヤツらが倒したんだろうな?」
美海はアゴに手を当て少し考えると大輝に向かって答える。
「どっかの有名な冒険科集団とかの可能性は?」
「だったら自分達が倒した事を言ってるじゃねえ?」
「それもそうねぇ」
美海は大輝が正論を言われたのが気に触れたのか、少しイラついた顔をしながら言う。
「リードガルムの騎士団?」
今度は伊織が答えるが確信を突くような答えではないので二人は唸り始める。
「う~ん・・・・・・あそこには勇者の末裔がいるみたいだけれど、倒すとなるとビミョーなところなのよねぇ~。これも、 リードガルム騎士団の人達がゾンビ達と魔人をたおしました! って報告が帝国にくると思うのよね」
「そう?」
「う~ん・・・・・・あっ! ひょっとしてあれかな?」
「なに大輝?」
「別大陸で勇者召喚失敗した。って皇帝様が言ってた勇者がこの大陸に居て、その人が倒したとかは?」
二人はそれぞれの表情を見せながら大輝に答える。
「あり・・・・・・得ないと思うわ。各国が必死に探しているのに未だに見つかってないもの」
「大輝。魔道師さん達も召喚されなかったか、もしくはどこかで亡くなってる。その二つの可能性の方が高い。って言ってたよ」
「もしかしたら生きていて偽名使って過ごしている可能性もあるだろ?」
「あるかもしれないけどぉ・・・・・・まぁ明日分かる事だからこの話は終わりにしましょう! 伊織、一緒に買い物行きましょ」
「ん、分かった」
彼女は頷きながら答える。
「俺は鍛冶屋と道具屋に行って必要品を買ってくる。それぞれ用が済んだら宿に帰ってくる。それで良いよな?」
「ええ、そうね。それじゃあ部屋を出ましょうか!」
「ん!」
「あいよ!」
その後彼らは宿の外に出ると、二組に別れて歩きそれぞれの時間を楽しんでから明日のダンジョンに備えるのであった。
~~~ エルライナ side ~~~
設定していた時計のアラームが耳に届き、オフのボタンを押した後に目を開けて起きる。
「ん、ん~~~っ!! 昨日はヒドい目にあったよおおおぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・」
昨日、アイーニャ様に散々身体をもてあそばれてしまった。その上、裸のまま気を失っている俺を起こさずに帰ってしまったのだ!
「ッ~~~!!? もう、お婿に行けない!! 今は女の子だけどぉぉぉおおおおおおっっっ!!!?」
そう言いながらベッドの上でゴロゴロ転がるが、いつまでも転がっているわけにはいかない。だって今日はピーチさんと一緒にダンジョンに日なのだから。
「・・・・・・はぁ~。身支度と準備しよう」
気持ちを切り替えると、ストレージからブラシを取り出して髪を溶かしていく。それが終わったら昨日メルティナさんに怒られてしまった洗顔をちゃんとと済ませると装備品を考え始める。
装備品は昨日と同じ装備で大丈夫そうかな? ダンジョンに潜るのは始めてだから、なにが必要なのか不要なのかが分からないんだよね。
「そこのところは潜ってから調整すれば良いかな? とりあえずダンジョンは狭そうだからCQBになりそうだ。だから昨日と同じACE31を持ってた方が良いよね」
本来そう言った場所はショットガンが有効なんだけども、他の人もダンジョンに入っているので拡散する弾が他の人やピーチさんに当たる事、つまり誤射が怖いから使わないようにしている。
プレートキャリアについているマグポーチにマガジンを差し込み、ベルトにカランビットナイフとCQCホルスターを付けてからJERICHO941PSLを差し込む。
「後はフラッシュバンとグレネードが有効かな? 浅いところを回るだけみたいだからぁ・・・・・・いや、一応持って行こう」
プレートキャリアの後ろの方にM84フラッシュバンとMK3グレネードを取りつける。
「・・・・・・こんな感じで良いかな? 後はピーチさんに聞いてから考えようか。
そんで実際ダンジョンに入った時の体験を参考にしながら、昇格試験で使う装備を決めちゃおうか。さて、そろそろ食事にしようか」
またメニューを手を操作して今度は日本のレーションを買うと封を開けていく。
どうしてこんな事をしているのかと言うと、昨日のアイーニャ様との絡み合う声が部屋の外に漏れていたらしく、気絶から目覚めた俺に対して
「まぁ美味しいとは言えないご飯だったから、別にご飯を出さなくても構わないけどね」
そう言った後にレーションを食べ始める。
しかし気掛かりな事は一つある。それは今日王都に来ているはず勇者達が今現在一体なにをしているのか? しかし俺はダンジョンに行くから会う事はないはずだ。
「・・・・・・ご馳走さま。さてと、時間に余裕があるけど行きますか。待たせるのは悪いからね」
俺はカラになった容器をストレージに入れてから、 捨てる。 と書いているボタンを押してゴミを捨てる。って言うより 消去する。って言った方が合ってるかも。
本当に便利な機能だね。ゴミの分別をしなくて良いんだから! あ、でも資源ゴミまで消してるからちょっと勿体ないなぁ〜。って気もする。
ゴミを消した後に部屋の戸締まりを確認してから部屋の外に出るとドアに鍵をかける。そしてカウンターへと鍵を渡しに行くと、そこにはリマちゃんが座っていた。
「あ!? おねえちゃん! もう、おでかけするのぉ?」
今日も元気だねリマちゃんは・・・・・・ホント、あのお婆さんの孫だと思えないよ。
「うん、そうだよリマちゃん。お婆さんはどこにいるの?」
「おばあちゃんはおでかけしたよ! すぐにもどってくるっていってた!」
「そうなんだ。はい、私は出掛けるから鍵を渡すね」
「はーいっ!」
リマちゃんは元気な返事をしながら差し出した鍵を受け取る。
「おねえちゃんは、どこにいくの?」
「もしかして気になるの?」
「うんっ!」
まぁ、リマちゃんなら話して良いかな?
「お姉ちゃんはこれからダンジョンに行くんだよ。人と待ち合わせをしているから行かないとね。それと、ご飯は抜きにされてるから聞かなくて良いよ」
「おばあちゃんにイジワルされてるんだ~。おねえちゃんかわいそぉ~! ん? どうしたのおねえちゃん?」
な、なんて良い子なのっ!? 本当にあのお婆さんの孫とは思えないぐらい良い子じゃないかっ!!
涙が出そう! そして思いっきり抱きしめたいっ!! そんな気持ちを抑えながら平然を装いながらリマちゃんに話しかける。
「な、なんでもないよ。い、行ってきます。リマちゃん!」
「いってらっしゃい、おねえちゃん!」
元気な笑顔を見せながら手を振るリマちゃんに対して、俺も作り笑顔で手を振りながら宿を後にするのだった。
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