第12話

~~~ ??? side ~~~


「チクショウ・・・・・・」


フード被った男が一人、薄暗い草原の上で地面に落ちてある石を蹴り飛ばして苛立ちを紛らわそうとするが、一向に気が晴れるようすはない。


「クソッ、クソクソクソッ、クソ勇者がぁぁぁあああァァァアアアァァァアアアッッッ!!?」


背筋を伸ばし叫んだ後に地面に向かいこぶしを振り下ろすが、自分の手を痛めるだけでなにも意味がない上にイライラが増すばかりだった。


「はぁ、はぁ・・・・・まぁ良い。アイツらに負けた事は仕方ない。俺様の計画不足だっただけだ。

今度アイツらと相手する時に、もっと上手く戦えば良いだけの話しだ」


しかし、その男は勇者殺害の失敗をどう挽回するかを考えた。


このまま帰ってもヤツらから笑い者にされる上に、彼の方にどんな顔をすれば良いのかどうか・・・・・・考えろ! この汚名をどう返上するか・・・・・・ッ!?


そして考えた末恐ろしい計画にたどり着いてしまった。


男は頬をつり上げながら杖を天に掲げる。


「我が配下にある物達よ。その姿を表し我に従え『召喚サモン』」


その言葉後に杖を地面に突き刺すと大量の魔方陣が出現する。そしてその魔法陣の中から、人、ウルフ、ゴブリン、様々なゾンビ達が次々に姿を現す。


「クックックックッ!? 勇者達は帝国に帰っている。ならばアイツらが駆け付けて来る前にここを潰せば良いんじゃないかぁ!! この三大王国が同盟の証に創設したリードガルム王国をよぉッッッ!!」


彼は頭の中にはゾンビ達に苦戦を強いられる兵士。ゾンビから逃げ惑い食われる市民。そしてすべてが終わり陥落してしまったリードガルム王国を見て絶望する勇者。そう、絶望と言う完璧な計画が浮かぶ。


この男の能力は殺した相手をゾンビにして従魔にして思うがままに操る。そして、この男は従魔を使い、さらに恐ろしい計画を立てていた。


「完璧だ・・・・あぁ、完璧だ! これが成功すればあの方に顔だてが出来る。俺はこの国を滅ぼす為に全ての力を使ってやる! そして、リードガルム王国にいるすべての生き物をゾンビにして帝国を襲ってやるっ!!」


彼はゾンビがどんどん出てくる魔方陣を眺めながら、改めて自分の力の偉大さを感じる。


「この分なら夜に戦略を整えられるな。フッフッフッ! 私の名誉の為、そして、あの方の為にっ!!」






~~~ エルライナ side ~~~


俺はグエルさん達と一緒に食事を楽しんだ後、宿に戻り部屋でラノベを読んでくつろいでいた。


「もう四時か。それにしても食事楽しかった。また誘って貰えるかな?」


あのクラスで過ごしていた時より充実した日々を過ごしているが、クラスメイトはどうしているのだろか?


「異世界に来てまでクズみたいな事をやってなければいいんだけどなぁ・・・・・・ん?」


神様から通信が来たので俺は出る。


『もしもしエルライナちゃん! 今大丈夫だよねっ!?』


「あ、はい」


あの神様が慌てているなんて、一体どうしたんだろう?


『急で悪いんだけどさ、僕からキミに依頼をお願いしたいんだ! お願いっ!! 今すぐ解決して欲しいんだっ!!』


「ちょっ、落ち着いてくださいよ! どんなお願いなのか内容が分からないと、YESなんて言えませんよ!」


『あっ!? ゴ、ゴメン! 気が動転してたよ・・・・・・』


「で、一体どんなお願いなんですか? 変な事だったら切りますよ」


『キミが今いる王都から西の方に800メートル先の方にゾンビが大量にいるんだ! そのゾンビ達が王都に向かって進むつもりみたいだよ!』


「えっ!? ウソでしょ?」


そんな馬鹿な事があるか。オンラインゲームのイベントじゃないんだからさ!


『本当だよ! 早くなんとかしないと王都をメチャクチャにされちゃうよっ!!』


この慌てっぷりは本当っぽい。総合ギルドに相談するべきか? ・・・・・・いや、Eランクの俺の話しを聞いてくれない可能の方が高い気がする。

グエルさん達に相談を、いや王宮を守る兵士達がグエルに話しを通す可能性が低い。そもそもグエルさんはそこに居るかどうか怪しい。


「あー、もうっ!!」


ここで考えていても仕方ないっ!!


「行ってこの目で確かめるしかないっ!!」


『じゃあ僕のお願いを受けてくれるって事で理解して良いんだよね?』


「そう受け取って良いです。ただし! ウソだったらメルティナさんに言いつけますからねっ!!」


『うん、それで良いよ・・・・・・ありがとう。エルライナちゃん』


俺は通信を切った後にフレンタックスの上下の服を着てプレートキャリアをその上に装備してニーパットとCQCホルスターを着けると、愛銃の ACE32(7.62×39mm) と JERICHO941PSL(9mmパラベラム)を装備する。そして最後にマガジンと MK3A2手榴弾の安全確認をしてからポーチの中に入れる。最後にヘッドセットを頭につけて装備完了。


「ヘッドセットよし! マガジン入れた。準備よし!」


この部屋のカギを持つと部屋を出てカギを閉めてからカウンターに向かう。


「あの、すみません。おばあさん」


「ん? どうしたんだい?」


暇なのだろうか、お婆さんは眠たそうな顔をしながらこっちを向いてくる。


「これから私、草原の方に出掛けなきゃいけないので今日のお夕飯の方はキャンセルしますね」


その言葉を聞いたおばあさんは先ほどの眠気が吹き飛んだのか、目を見開きながら俺を見つめてくる。


「あんた馬鹿言うんじゃないよっ!! 夜の草原に出掛ける意味が分かってんかいっ!!?」


このおばあさんは夜の方が危険なモンスターが出て来る可能性が高くなるのを知っているだ。


「分かっていますよ。それに戦った事もあるんで大丈夫です」


「・・・・・・本当かい?」


「本当です。それに急いでいるんで早く行きたいんです」


俺はポケットからカギ出すと、カウンターの上に置く。


「カギをここに置いときますね」


「ふん! あんたがどうなってもアタシには関係のない事だからね。好きにしな。ただし! これだけは言わして貰うよ」


死ぬんじゃないよ! ってセリフかな?


「営業時間は九時までだよ。それを過ぎたら野宿でもするんだねっ!!」


違った!! しかもなんで宿に時計がないのに時間が分かるんだ? 気になるけどぉ、今は急いでいるので後にしよう!


「分かりました。行ってきます!」


俺はそう言った後、宿を出て西門を目指して走って行く。そして西門を通過して草原に出たのは良いが街とは違い薄暗い。多分、後一時間ぐらいで日が落ちてもっと暗くなると思う。


その薄暗い中、街から少し離れてた場所で立ち止まり周囲を見る。


「・・・・・・ここら辺なら乗り物を出して大丈夫そう」


俺はメニューを出すと格納庫からMRZR4を選び出し乗り込んだ。その瞬間に神様から通信が入ってきた。


「もしもし、どうしましたか神様?」


『エルライナちゃん、今から敵の居場所をマークしてあげるから、そこに向かって! でも本当に沢山いるから無茶な事はしないでね!』


「分かりました。ありがとうございます」


『別にそれぐらい良いよ。それじゃあ、また後でね!』


神様との通信を切りマップを出して見てみると、道なりに進めば着く事が分かった。


「さて、行きますか」


俺はそう言うとMRZR4のエンジンを掛けてマーク地点を目指して発進させる。


「やっぱ運転って楽しい〜〜〜!!」


ドライブ気分のまま進む。





「・・・・・・ヤバいっ!? 想像以上の敵がいるよっ!」


日がちょうど落ちた所で目的地に着いた。いや、正確に言えば目的地の500m先で止まってからマークした場所へUAVを飛ばした。そしてUAVに取り付いているカメラを白黒のサーモグラフィーモードで敵のようすを映像で上から見ているのだ。


「うーーーん、分が悪い。だって真っ白だよ。真っ白な海だなんだよ」


道の途中で嫌な予感がしていたんだ。コンピュータが『多数反応があります』て言ってし、てかもうこれ軍隊じゃん・・・・・・ん? 神様から通信だ。しかも今度はスクリーン付きの方だ。


『あ、エルライナちゃん。どうかな? これで信じてくれた?』


「はい、疑っていてゴメンなさい」


『信じてくれたなら良いよ。でさ、エルライナちゃんはこの敵をどうするの? 800匹いるモンスター、しかもまだ増え続けているから逃げる?』


逃げるか。それが一番良い方法なんだけども。


「逃げるのは無理ですよ」


『どうして?』


「だってグエルさん達を見殺しにしたくない。それに戻って危機を報告したいんだけれども、時間が惜しい」


俺が王都に戻り総合ギルドに報告する。そしてギルドと国の軍隊は戦力を整えて退治しに行くが、その戦力を整えている間にコイツらがどこかの街に移動して街を襲う可能性が高い。


クソッ!? もっと早く気づいていれたならっっっ!!?


『ふーん、なるほど。こう言う時にこそアレだよ!?』


「アレ? 一体なんですか?」


『現代兵器の力さ! さぁ、ヘリでも戦車でも何でも使って殲滅せんめつするんだっ!!』


神様は俺に向かってドヤ顔をしてくる。けれどもぉ・・・・・・。


「あー、神様。それは無理ですね」


神様はショックを受けた顔をしながら、俺に向かって大声を出し始める。


『えええええええええええっっっ!!? なんでっ!? 僕がせっかく力をあげたのに使わないのっ!? もしかして、縛りプレイなのっ!?』


「違いますよ」


『ならなんで?』


「ヘリはともかく、戦車は一人じゃ扱えないから」


『だったらヘリを呼んで一掃すればいいでしょ?』


「多分、800体倒す前にミサイル含めて残弾がなくなると思いますよ。それに一番怖いのは着陸です。こんな暗い夜中に草原の上にサポートなしで着陸するのは難しいですよ。出来なくはないと思いですけど、事故起こす確率の方が高いです」


『う・・・・・・で、でもさ・・・・・・キミの出すヘリや戦車に残弾制限はないよ』


「さらに言うなら、遮蔽物しゃへいぶつがない空中にいたら、ただのまとになる可能性が高くなるんですよ。もし、あの中に空を飛べるタイプがいたら囲まれてフルボッコになって墜落される可能性がありますね」


『じゃあさ、戦車で遠くから撃ち続ければ良いんじゃない? そうすれば操縦士は要らないし』


「神様、砲手は私として装填手は誰がいるんですか?」


『あっ!?』


そう、あの狭い戦車の中で撃った後、座席を離れて装填してからまた戻ってなんて事をしていたら時間が掛かる。


『迫撃砲があるじゃん!』


「あれは最低もう一人いないと扱えないです」


撃った時に迫撃砲が転倒しないように、二脚バイポッド

支える人がいないと使えない。そう現状では格納庫に所有している戦車やヘリで無双が出来る状態ではないのだ。


『もう、ダメじゃん!? 総合ギルドに戻って報告しよう!?』


「いや、方法ならあります」


『え? 本当?』


「昔ながらの戦い方をやりましょうか」


俺はそう言った後に急いで準備に取り掛かり始める。

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