第3話

  ~~ 第二騎士団 副団長 ベイガー・ドルトン ~~


ベイガーは雄叫びを上げ、持っている片手斧を振りかざしながら突進をしてくるオークを避けた後に持っている双剣でスキル[双連武]で切るが致命傷までにはならなかった。


クソッ!? どうなっているだ? オークがこんなところにいるなんて報告は受けてなかったぞっ!!


ベイガーは騎士団は部下三人を連れて対モンスター訓練をしていたのだが、この辺りにはいないはずのオークと出会してしまった。


このオークは普通のオークより強い。しかもまだ五体いるなんて・・・・・・このままじゃ俺の部下が危ないっ!!


「俺がコイツらを足止めする。だからお前らは王都戻ってグエル団長に知らせるんだっ!!」


「私達は、ベイガー副団長を置き去りにして逃げる事は出来ません!」


「コイツらを相手するのはお前らじゃ無理だっ!!」


頼むから逃げてくれ! それしか方法がないんだよっ!!


「それでも、ベイガー副団長を見捨て・・・・・・」


「いいから行けっ!!」


「グアッ!!?」


声がした方を向くと俺の部下の一人である、アゼスが左肩から血を流して膝を着いているところをオークが棍棒を振りかざし止めを刺そうとするが、突然オークの目に矢が刺さる。ミュリーナがアゼスを助ける為に弓で射ったみたいだ。


「ブヒャァァァアアアアアアッッッ!!? ブヒュゥッ!? ブヒャァ!!?」


今がチャンスッ!!


ベイガーは顔に手を当て悶絶しているオークの懐に潜り込むと双剣をクロスさせる。


「ウオォォォオオオオオオッッッ!!?」


雄叫びと共にオークに斬撃浴びせた上に最後にトドメの一撃と言わんばかりにオークの顎に向かって蹴りをかます。


「死ねっ!! このクソモンスターがっ!!?」


ベイガーに切りつけられたオークは背中から地面へと沈んで行った。


「すいやせん。副団長」



アゼスは左肩に手を当て膝を着いたままベイガーの顔を見て言うが、ベイガーはオーク達に向かって双剣を構えたまま、アゼスに話す。


「それはいいから早くリズリナのところに行って治して貰え」


「ハイッ!」


アゼスはそう言った後に、リズリナの元へ走りだす。


残りは後四体・・・・・・ん? 一体いない、何処に行った?


「キャァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!?」


叫び声がした方へ向くと今度はミュリーナがオークにのしかかられた状態で捕まっていた。


しまった!? アゼスに気を取られる隙にミュリーナが捕らわれてしまった。


俺はミュリーナを助けようと駆け出すがミュリーナにのしかかっているオークがこっちを向いてくる。


「ニンゲン、ソレイジョウチカズイタラ、コノオンナヲコロス」


「なにっ!?」


俺はオークに向かって走るのを止める。しかもよく見るとミュリーナの両手を首に掛けていて、へし折ろうとしているではないか。


「ミュリーナ先輩!? ウルスラ、お願い! 先輩を助けてっ!!」


「ワウッ!!」


「止めろリズリナッ!! そんな事したらミュリーナが殺されちまうぞっ!!」


俺はリズリナが召喚獣を使って、ミュリーナを助けようとするのを止めさせる。


オークが喋るだと? やっぱりコイツらは、ただのオークじゃない・・・・・・どうする? このままじゃマズいぞ。


「ソレデイイ、ソノママジットシテロ」


「ミュリーナを離しやがれっ!!」


「ブヒヒヒッ!!」


オークは俺に向かってムカつく顔で嘲笑って来やがった。


「ダメダ、オンナ ハ ツレテカエル。オトコ ハ イラナイ カラ コロセ!」


「副隊長! 私の、グゥゥッ!!?」


のしかかっているオークがミュリーナの首を締めて最後まで言わせない。


「ダマレ、オンナ」


クソッ!? どうすれば・・・・・・どうすれば俺の部下を助けられるんだっ!!


助けだす方法を考えている内に俺の後ろから一体のオークが俺の元に近づいて来てしまい、持っている錆びだらけの剣を俺に向かって振りかざしてくる。


「ブヒヒッ! シネッ!!」


俺は部下も助けられずにここで死ぬのか?


「キャァァァアアアアアアッッッ!!?」


ミュリーナの叫び声の中に腹に響き渡るような破裂音が耳に入ってくる。一体ミュリーナに何が起きたんだ?


「えっ? ・・・・・・えぇっっっ!!?」


「う、うわっ!?」


「あっ!」


何故か知らないがミュリーナとアゼルが驚いて、リズリナが何かに気づいたような声をあげる。そして俺を殺そうとしていたオークは動きを止めて、何か信じられない物を見たような顔をしながら固まっていた。

そのオークの視線を辿って見てみると、なんとミュリーナを人質にとっていたオークの頭に穴が空いて死んでいるではないかっ!!


「な、なんだ? 一体誰が?」


「副団長! 早くオークから離れて下さいっ!!」


リズリナがそう言うが俺は今起こっている現象を理解しようとしてしまい。オークから離れるか攻撃するかの二択のどちらかの行動をするのを忘れてしまっていた。それに気づき、後ろを振り返ると目を血走らせながら息を荒くしているではないかっ!!


「しまった!!?」


「ヨクモヤッテクレタナ! コロシテヤルッ!! シビヘェッッッ!!?」


今度は俺を殺そうとしているオークがいきなり膝を着いた後に、右脇腹を左手で押さえ唸り声を上げている途中に頭が吹き飛んだ。

またあの印象的な音が少し遅れて耳に入ってくる。しかも今度は二回も音がした。


「ブヒッ! キサマラ、イッタイナニヲシ・・・・・・」


今度は少し離れていた二体のオークの内、俺から見て左側のオークが頭の右側から血を飛び散らせながら倒れる。


「ブヒィッ!? ブ、ブ、ブヒィィィイイイイイイィィィィィィイイイイイイッッッ!!?」


自分の隣でいきなり死んだ仲間を見たオークは、次は自分が死ぬのが死ぬ番だと理解したのか。はたまた仲間の死にざまに恐怖したのか。分からないが、そのオーク取った行動はただ一つシンプルなものだった。

持っている武器を投げ捨て反対を向き走り出した。そう、仲間の仇よりも自分が生き延びる道を選んだのだ。


「あっ!?」


俺は逃げて行くオークを追いかけようとしたが何故かその時だけは体が動かなかった・・・・・・いや違う。

体が動くのを拒んだと言った方が正しいかもしれない。





~~~ エルライナ side ~~~


「あ、アイツ逃げた」


俺は400メートル先で情けなく走るオークをSVU OTs-03 (7.62×54Rmm)に取り付けたスコープを覗き見ながら言うが、逃がしてやる気持ちは全く持ち合わせていない。


オーク・・・・・・キミは不幸だったね。


俺は逃げて行くオークの右足に狙いを定めてからトリガーをプライマーが落ちる寸前まで絞り、息を軽く吸って少し吐いた後息を止める。


・・・・・・今だっ!!


そう思うのと同時にトリガーを完全に絞り切ると、発砲音とほぼ同時に弾丸をオーク右足をぶち抜く。


右足を撃ち抜かれオークは地面に向かってぶっ倒れた後に起き上がろうとするが、今後は奴の頭に照準を合わせ息を整える準備をする。


・・・・・・ラストッ!!


トリガーを引き切ると7.62×54Rmmの独特の音を立てる。その音とほぼ同時に弾丸がオークの頭を吹き飛ばし殺す。


「ふぅ・・・・・・よし! 他に敵はいないな」


俺は他にも敵がいない事を確認すると、SVU(OTs-03)のマガジンにまだ弾が入っているが新しいマガジンに取り替える。これがいわゆるタクティカルリロードだ。


「何であの人はオークに捕らわれている仲間を助けてチャンスを作ったのに、すぐ攻撃に移さなかったんだろう?」


なんか戸惑っていたって感じだったけど・・・・・・まぁいっか。


結果的に俺がオークを殲滅するハメになったけどポイントになったしね。


リズリナさん・・・・・・この事は貸しにしておくよ。


そう思いながらSVU(OTs-03)のスコープごしに騎士団を見るが、何かようすがおかしい事に気づく。


ん? ・・・・・・騎士団の様子がなんだかおかしいぞ? リズリナさん以外武器を持って警戒し始めてる。


あっ!? 今度は両手に剣を持った人と言い争いみたいな事をしている。しかもリズリナさんの召喚獣も加わってるし。


「ハァー・・・・・・仕方ないね」


俺はあの争いを止める為に騎士団の元に歩いて行く事にした。


これ砂袋を仕舞う次いでにハンヴィーを格納庫にしまっとこう」


俺はメニューを開き、銃の下に敷いていた砂を詰めた袋もアイテムボックスに収納してからハンヴィー1151を格納庫に収納した後に、騎士団に向かって立ち上がり歩き出した。


「久々の再会がこんな形になるなんて・・・・・・喜びよりもため息しか出ないよ。ハァー・・・・・・」


エルライナは歩きながら何度も深くため息を吐くのであった。

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